て、『沈まぬ太陽』(新潮社刊)という小説を書いています。こ
の作家は、入念な取材をすることで知られていますが、この作品
は、小説というよりも、ノンフィクション的な作品となっていま
す。書かれていることに作り話は少なく、驚くべきほど事実──
それも多くの人が知らない事実が書かれています。
フォトリーディグ・インストラクターをつとめる大嶋友秀氏は
ブログで次のように書いています。
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この物語はJAL123便の御巣鷹山の事故を下敷きにしてい
る。御巣鷹山での事故の状況が、これでもかこれでもかと続いて
いく。映画でも大きな衝撃を受けたが、実際の遺体などを見せる
わけではなかったが、小説では仔細に描きこまれ、その生き地獄
のような様をリアルに想像した。たびたび出てくる「部分遺体」
という言葉に、言葉を失くしてしまう。残された家族が、縁者の
亡骸を探すために、何人もの部分遺体と遭遇していくのは想像す
るだけで脚が震えてきてしまった。
山崎は、その取材のことをこう語っている。「今回は取材、執
筆共に非常に忍耐と勇気のいる仕事でしたが、その許されない不
条理に立ち向かい、書き遺すことは、現代に生きる作家の使命だ
と思いました。日々、精神的不毛が深まる中で、”明日を約束す
る”心の中の沈まぬ太陽を読者の方々と共に持ち続けていきたい
というのが、作者の心からなる念いです」。
https://bit.ly/2xyOjb8
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『沈まぬ太陽三/御巣鷹山篇』では、事故調査官である藤波調
査官が週刊日本の記者から、問いかけられるシーンがあります。
きわめて重要なやり取りであり、少し長いですが、一部をカット
してご紹介します。
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「藤波調査官ですね」(中略)
「そうですが・・・」
「週刊日本の記者です。ちょっとお話を伺いたいのですが」
行く手を阻むように云い、名刺をさし出した。(中略)
「どのような話ですか」
「実は、事故機の墜落原因について、聞き捨てならない重大な
話を仕込みましてね、墜落の真相は、自衛隊がミサイル発射訓
練時に使う標的機が、たまたま、飛行中の国民航空123便の
尾翼に衝突したらしいのです。ご意見を聞かせて下さいません
か」。記者は強引にコメントを求めた。
「いきなりそんな突飛なことを云われても、答えようがない」
「おや、おとぼけですか、それとも政府、防衛庁は、事故調査
官を棚上げして、真相を隠蔽するつもりなんですかね」
嫌味な言い方をした。
「確たる証拠でもあるのですか」
「事故機が、最初に緊急事態を発信したあの時刻に、海上自衛
隊護衛艦『たかつき』が、相模湾でちょうど練習中だったんで
すよ、現に事故の翌日、相模湾内に、尾翼の重要部分である垂
直安定板が浮いていて、回収されたのではありませんか」
「それだけで、標的機衝突と墜落が結びつくのですかね」
「御巣鷹山の事故現場から、オレンジ色の物体が、早々に搬出
されましたね。あれは『たかつき』の演習で使用された標的機
の塗装の色と一致しますよ」
「オレンジ色の物体?私は事故現場の隊長格として、これはと
いう残骸は自分の眼ですべて確かめているが、そんなものは見
ていない。ましてや搬出はあり得ない。現場の残骸はすべて群
馬県警が証拠品として押さえてあるから、ボイス・レコーダー
やフライトレコーダー以外は、破片の一片たりとも、まだ山か
ら下ろしていない」
「おかしいですね、そのオレンジ色の物体が、テレビ中継で、
ちゃんと映っていたということですよ。見た人がいるものです
から」
「じゃあ、その映像を私のところへ持ってきてください。話は
それからだ」 ──山崎豊子著『沈まぬ太陽/御巣鷹山篇』
新潮社刊
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「小説だから」という人は多くいます。しかし、山崎豊子さん
は、取材のうえ、事実を書いています。いや、むしろ小説である
がゆえに書けることもあります。小説であるからこそ、真実をず
ばり書くこともできます。とくに重要で、注目すべきな部分は、
次のやり取りです。
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記者:御巣鷹山の事故現場から、オレンジ色の物体が、早々に搬
出されましたね。あれは『たかつき』の演習で使用された標的
機の塗装の色と一致しますよ。
藤波:オレンジ色の物体?私は事故現場の隊長格として、これは
という残骸は、自分の眼ですべて確かめているが、そんなもの
は見ていない。ましてや搬出はあり得ない。
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「墜落事故現場からの搬出」というのは、事故現場から何かを
搬出する必要があり、当局はそのため、墜落現場が特定されない
よう墜落現場のフェイクニュースを流したのです。誰が、現場か
ら、何を搬出したのでしょうか。
これに関しては、ネット上にはさまざまな情報があります。当
局はネット上で何が流れても気にしないのです。「ネットはフェ
イクニュース」で溢れており、それもフェイクニュースのひとつ
であるとして逃げることができるからです。墜落現場から、当局
は何をどのように持ち出したのかについては、明日のEJ以降で
明らかにしていきたいと考えています。
──[日航機123便墜落の真相/027]
≪画像および関連情報≫
●「沈まぬ太陽」/山崎豊子/新潮文庫/読後感想
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読後の感想としては、まず映画との比較になりますが、こ
の5冊分の内容もってして初めて、ラストに恩地がアフリカ
で見る「沈まぬ太陽」という言葉が深く読者の胸をえぐるの
だと思いました。
文庫本5冊分を3時間半の映画にまとめるとなると、どう
しても色々とカットしないといけないでしょうし、それはそ
れで仕方が無いと思いますが、映画を見た方も、そうでない
方も、ぜひ小説を読んで欲しいと思います。映画では描きき
れない部分の蓄積が、ラストの感動に繋がっているように思
いました。
次に小説そのものについてですが、山崎氏の著作について
は、様々な文献の寄せ集めだとかパクリだとか色々言われて
いますが、個人的にはその真偽にこだわりはなく、純粋に1
つの作品として見て、読み応えのある素晴らしい内容だと思
います。また、この「沈まぬ太陽」については、事実を元に
した部分と創作が混ざっており、読者に誤認識を与えるとの
批判がありますが、私はそれもまた良し、だと思います。
例えば、恩地のモデルとなった人物は、実際には御巣鷹山
事故関係の業務に就いていないとか、恩地のような清廉潔白
な人柄ではない、とか色々ありますが、御巣鷹山事故は紛れ
も無い事実ですし、その事故を起こした会社が存在する事も
事実です。 http://exci.to/2N1xwSU
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作家/山崎豊子氏