2007年06月29日

●減税の発案者は三塚蔵相!?(EJ第2112号)

 橋本が坂秘書官に電話させたのは、加藤幹事長と三塚蔵相の2
人です。そのときの橋本と加藤との電話のやり取りを再現してみ
ると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋本:実は2兆円の特別減税を実施することに決めた。必要な
    手続きをとって欲しい。
 加藤:減税は財政構造改革の路線転換です。政治責任になりま
    す。減税はできないといっていま、社民党を説得してい
    たところなんです。
 橋本:いや、もう決めたから。路線転換だの政治責任だの、政
    局に利用するならすればいい。この危機を乗り切ること
    が大切なんだ。
 加藤:といわれましても・・・
 橋本:もういい。このことは他言無用だ。
             ――清水真人著/日本経済新聞社刊
            『官邸主導/小泉純一郎の革命』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 12月17日午前10時に、橋本は三党の幹事長、政策担当責
任者ら首脳陣、三塚蔵相を首相官邸に緊急招集し、2兆円減税の
決断を打ち明けたのです。
 なぜ、橋本首相は2兆円減税を決断したのでしょうか。
 表面上はクァラルンプールでのASEAN会議でアジアの経済
状況の深刻さを痛感し、日本初の世界恐慌の引き金を引いてはな
らないと考えての決断――そういうことになっています。
 しかし、実際はそうではなかったのです。実は減税の発案者は
三塚蔵相だったのではないかといわれているのです。橋本はこれ
に乗っただけです。クァラルンプールでの話うんぬんは、後から
付けた理屈ではないかといわれています。
 どうして減税の発案者が三塚蔵相であるかというと、橋本首相
がクァラルンプールに行く前から、減税にかかわる予算措置の検
討を誰にも知らせず、密かに検討する指示が出せたのは蔵相しか
いないからです。大蔵省は最初から知っていたのです。
 2兆円減税の内訳は次の通りです。このうち所得税については
1998年2月から実施するのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     所得税 ・・・・・ 1兆4000億円
     住民税 ・・・・・   6000億円
―――――――――――――――――――――――――――――
 これについて、大蔵省が2兆円減税決定の指示を受けてやった
ことは、97年度補正予算を編成し、国税の所得税減税分の財源
として、赤字国債を約1兆円増発したことです。
 問題は、財政構造改革法との整合性です。問題の核心は、20
03年度には赤字国債の発行額をゼロにしなければならないとい
う点です。
 こういうと、どこかで聞いた話であると思う人もいると思うの
です。小泉政権時代に2010年にプライマリーバランスを均衡
させる――赤字国債の発行額をゼロにするという政策と同じなの
です。何のことはない。橋本政権のときに2003年にプライマ
リーバランスを均衡させる計画があったのです。
 2003年度に赤字国債をゼロにするためには、98年度から
は毎年度、赤字国債の発行額を前年度よりも減額することを法律
で義務づけられているのです。
 ところが、98年度の当初予算案はその時点でほとんど決まっ
ており、ここで1兆円を97年度補正予算で増額すると、98年
度の赤字国債の発行予定額を増やすことが可能になったのです。
大蔵省はそこまで計算して、2兆円の特別減税を蔵相を通じ橋本
首相に進言させたのです。
 なぜ減税が1998年2月からの実施となったのかは、97年
度中に減税を補正予算で処理する必要があったからです。これに
ついては大蔵省の外局である国税庁の判断にかかっていたのです
が、時の竹島一彦国税庁長官はゴーサインを出したのです。これ
も事前に情報が伝わっていないとできることではないのです。
 しかし、1997年12月17日の朝、大蔵省幹部は次の言葉
を口にしたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        首相の決断は寝耳に水だった
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋本という人は自分が「仕事のできる政治家」を自負し、それ
をかたちで示そうとする政治家です。これについて『官邸主導』
の著者、清水真人氏は次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋本は突然の決断でいかにも大蔵省を押し切った形の「橋本主
 導」を演出しながら、実は大蔵省にしっかり乗っていた。財政
 改革法の枠組みを首の皮一枚残して何とか守れることを十二分
 に計算したうえでの周到な「決断」だった。だからこそ、路線
 転換や政治責任を懸念する声をも強気で突破できたのである。
                ――清水真人著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 もともと97年度は、94年度から始まっていた2兆円の特別
減税をいったん取りやめ、先行した減税の財源を補うため、4月
1日から消費税率を3%から5%にアップさせています。
 これらは村山政権時代に決めていたことをそのまま実施したに
過ぎないと橋本はいいます。そして、秋からは医療保険制度改革
で医療費の患者負担を引き上げています。減税の廃止で2兆円の
負担増、消費税アップの負担増が約5兆円、それに加えて医療費
の負担増が2兆円――総額で9兆円の負担増を実施したうえに、
公共事業費も押さえ込もうとしたのです。これが橋本不況の原因
といわれています。
 そういう状況で行われた2兆円の特別減税――整合性がとれて
いないことは確かです。   ――[日本経済回復の謎/21]


≪画像および関連情報≫
 ・プライマリーバランスについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  プライマリーバランスは、1993年度予算で初めて約2兆
  5000億円の赤字になったのを皮切りに、その後、景気対
  策のための財源不足を国債の大量発行によって補ったため,
  赤字幅が拡大し、03年度には過去最高の20兆4000億
  円を記録した。財政赤字の増大を危惧した当時の宮沢財務相
  は01年3月、国会答弁で「わが国の財政は破局に近い状況
  にある」との危機感を露わにした。このあと小泉首相は01
  年5月、所信表明演説で、02年度予算で国債発行を30兆
  円以下に抑えることと、「持続可能な財政バランスを実現す
  るため、例えば、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな
  借金に頼らない」と公約し、具体的には「プライマリーバラ
  ンスを2010年代初頭に黒字化する」との目標を掲げた。
  それから4年、厳しい財政状況に変わりはない。
                  ――「日本の論点」より
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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