2018年08月23日

●「事故調の最終結論『隔壁破壊説』」(EJ第4834号)

 JAL123便機内での18時24分35秒の「ドドーン」と
いう衝撃音の正体は何なのでしょうか。
 その正体こそが問題なのです。JAL123便は、何かによっ
て尾翼が破壊させられたことが原因で、墜落することになったの
です。飛行機の尾翼には垂直尾翼と水平尾翼があります。そのう
ち、垂直尾翼が破壊されたのです。垂直尾翼が破壊されると、飛
行機はどうなるのでしょうか。
 これについて、あのハドソン川の奇跡を成し遂げた元USエア
ウェイズ機長、チェスリー・サレンバーガー氏は次のようにコメ
ントしています。元共同通信社記者、堀越豊裕氏による電話での
インタビューのさいの発言です。
─────────────────────────────
H:日航機事故は知っていたか。
S:もちろん知っていた。日本の運輸省航空事故調査委員会(事
  故調)の調査報告書が指摘した(修理ミスの)事実も把握し
  ている。
H:日航機は生還できたと思うか。
S:ノー。ひとたび垂直尾翼がなくなれば、飛行機は安定性を失
  う。尾翼を失い、油圧を失った機体の操縦は本当に難しい。
H:日航機は海への不時着を目指すべきだったか。
S:尾翼も油圧もない状態で、機長ら乗員が自分たちの不時着し
  たいと思った場所に向かえたかは疑問だ。われわれの場合、
  高度は低く、両エンジンの推進力が完全に消え、状況判断と
  決断のために残された時間もほとんどないという究極の状態
  だったが、それでも操縦機能は完全に残っていた。
           H=堀越豊裕氏/S=サレンバーガー氏
      ──堀越豊裕著『日航機123便墜落最後の証言』
                    平凡社新書/885
─────────────────────────────
 サレンバーガー元機長もいうように、飛行機は垂直尾翼を失っ
たら、終わりなのです。そうであるからこそ、垂直尾翼は頑丈に
作られており、ちょっとやそっとの衝撃では壊れないようにでき
ています。それを破壊したものとは何でしょうか。
 これには、内部説と外部説があります。内部で何かが爆発し、
それによって垂直尾翼が破壊されたか、飛行機の外部で、何らか
の飛行物体と衝突したかのいずれかです。
 当時の運輸省事故調査委員会(事故調)は、内部説の「隔壁破
壊説」をとっています。「隔壁破壊」とは何でしょうか。
 高々度を飛行する現代の航空機に不可欠なのは「与圧」です。
与圧とは、例えば、航空機の内部を一定の気圧に保つことをいい
ます。航空機の機内を地上と同じ一気圧にして上空を飛行するの
です。この状態は、上空の気圧に比べると、大きな圧力差が生ず
ることになります。
 地上で、風船のなかにいるようなもので、ちょっとでも穴が開
けば、なかの高圧空気は一気に外に流出します。すなわち、急減
圧が起こり、内外圧力差が一瞬で消滅するのです。これを「急減
圧」といいます。
 事故調は、何らかの原因でJAL123便の機内で急減圧が起
こり、その勢いで「後部隔壁」を壊し、垂直尾翼を破壊したと結
論づけているのです。1985年8月16日付けの東京新聞夕刊
は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 回収物の外板が内側から圧力を受けたように外側にめくれ上が
るようにわん曲している部分があった。このため調査関係者は客
室内の空気が、客室後部トイレ天井付近に生じた亀裂から、垂直
尾翼、テールコーン(胴体最後尾)などの非与圧部に爆発的に流
れ込み、垂直尾翼などが一瞬に膨張、圧力に耐え切れず風船が破
裂するように破壊されたとの見方を強めている。(中略)このた
め事故調査委員会など調査当局は、空気が流出したとみられる胴
体後部天井付近や後部隔壁などの破壊の跡を調べることにしてい
る。       ──1985年8月16日付、東京新聞夕刊
       ──角田四郎著『疑惑/JAL123便墜落事故
      /このままでは520柱は瞑れない』/早稲田出版
─────────────────────────────
 後日、事故調は、上記内容を事故原因として認め、「隔壁破壊
説」を公式に認めています。事故調の報告は、次のように3回に
わたって行われています。
─────────────────────────────
    ◎第1次中間報告書/1985年8月27日
    ◎第2次中間報告書/1985年9月14日
    ◎事故調最終報告書/1987年6月19日
─────────────────────────────
 実は、事故調の第1次中間報告書が出た10日後にニューヨー
ク・タイムズ紙が、同機がしりもち事故発生後に、ボーイング社
による修理ミスがあったという米国のNTSB(国家運輸安全委
員会)の見解を報道しています。それは、まるで日米で計算した
かのようなタイミングで行われているのです。これによって、日
本国内の報道は、墜落の原因は、一斉に修理ミスによる隔壁破壊
説に傾いていったのです。
 そして、1987年6月19日の事故調の最終報告書では、ボ
ーイング社が修理ミスが原因で、後部圧力隔壁に疲労亀裂が生じ
て破壊され、それに伴う急減圧が生じたことで、、垂直尾翼のな
かを突風が吹いて、尾翼を吹き飛ばしたことが墜落の原因である
と結論づけています。
 その後、多くの新事実が続々と出て、事故調に対して何回も再
調査の要請が出たにもかかわらず、事故調は一切動こうとせず、
33年後の現在に至っています。そのため、この事件は何回も何
回も蒸し返され、事故原因については、昨年以降青山透子氏の本
が出るなど、現在もくすぶり続けているのです。
         ──[日航機123便墜落の真相/004]

≪画像および関連情報≫
 ●事故調「圧力隔壁説」と食い違い(赤旗)/2000年
  ───────────────────────────
   15年前の1985年8月12日、群馬県・御巣鷹の尾根
  に墜落し、単独機としては史上最大の犠牲者520人を出し
  た日本航空123便(乗客・乗員524人)のボイスレコー
  ダー(操縦室音声記録=CVR)の記録を四日までに、本紙
  が入手しました。航空関係者らの協力で分析した結果、会話
  の内容は、運輸省航空事故調査委員会が作成した事故調査報
  告書と、事故原因の究明にかかわる重要部分で食い違いが判
  明。聞き違いと思われる個所とともに、まったく違う時間帯
  の会話を入れ替え、作為的としか考えられない部分があるな
  どの問題点が明らかになりました。
   123便のボイスレコーダーは、12日、午後6時24分
  12秒から始まり、同35秒ころ、「ド、ドーン、ドーン」
  という爆発音か破壊音があり、直後に機長が「なんか爆発し
  たぞ」「ギア(車輪)見て、ギア」と続いています。このあ
  と報告書では、不可解な解読として「エンジン?」や「オー
  ルエンジン」という機長や航空機関士の言葉が記録されてい
  ます。しかし、この不可解な言葉を本紙が入手したテープで
  複数のパイロットらが聞くと、いずれも「ボディギア(胴体
  側の車輪)」と聞こえました。事故機のボーイング747型
  機には4本の主車輪があり、左右の主翼にウイングギア、胴
  体部分に2本のボディギアがついていて油圧だけで収納され
  ます。             https://bit.ly/2MFQbHP
  ───────────────────────────

サレンバーガー元機長.jpg
サレンバーガー元機長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | 日航機123便墜落の真相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
EJさんいつも長文コメントを掲載して頂きありがとうございます。

投稿文字数無制限ブログ開設しました。

「豊岳正彦の無有万機公論」

http://hougakumasahiko.cocolog-nifty.com/

今後とも長文投稿をどうかよろしくお願い申し上げます。

豊岳正彦@修道学園27期生 拝
Posted by 豊岳正彦 at 2018年08月23日 11:43
平野浩様

A、

冒頭部分の「JAL123便は、何かによって尾翼が破壊させられたことが原因で、墜落することになったのです。」は誤解を生む表現です。
また、サレンバーガー氏のコメントの後の、「飛行機は垂直尾翼を失ったら、終わりなのです」も誤解を生む表現です。

日航123便の場合、垂直尾翼の破壊だけではなく、それに伴って油圧管が破断して油が流失し、油圧を失ったことが致命的でした。
(垂直尾翼の中央部(アフトトルクボックス)の中に、方向舵を動かすための油圧アクチュエーターがあり、そこへ油圧管が通じていました。)
(「垂直尾翼を失ったら、終わり」を文字通りに解釈して、123便は異常発生後30分も飛んでいるから垂直尾翼は破壊されていない、と考える人がいます。)

垂直尾翼のみの破壊なら、ダッチロール、フゴイドを生じますが、それでも油圧が働いていれば抑制できます。
B747型機は油圧で操縦しますから、油圧を失えば操縦不能です。
例えば、B747型機が旋回する場合、エルロン(補助翼)を油圧で動かすことで旋回しますが、油圧を失えば旋回できません。
油圧を失うと昇降舵もフラップも動かせないから、上昇下降が円滑にできません。

油圧システムの油が抜けていったことは、角田著P21,河津町の目撃情報に「海側の北東上空で雷のようなボーンという音がした、見上げるとジャンボ機は機体後部から灰色の煙を出して・・・・」からも確認できます。
また、CVRには、27分47秒に「ハイドロプレッシャオールロス」と録音されるなど、26分から27分にかけて(伊豆半島上空にかかる頃)、油圧を失っていった状況を確認できます。
CVRには、「操縦不能」または「アンコントロール」が合わせて7箇所に録音されています。
DFDRのCWPやRLLの変化からも油圧を失っていった状況が確認できます。

日航123便の場合、エンジン出力を増減して辛うじて機体を操縦しましたが、それには限界があります。
途中で、右旋回あるいは左旋回をしているのは、意図的に旋回したのではなく、日航123便のエンジンの特性として左右エンジンの出力にわずかに差があり、左右の出力(推力)差のために、結果的に旋回しています。

B,

中頃の、8月16日付、東京新聞夕刊の記事、「・・・・客室内の空気が、客室後部トイレ天井付近に生じた亀裂から、・・・・・・・調査当局は、空気が流出したとみられる胴体後部天井付近や後部隔壁などの破壊の跡を調べることにしている。」とあります。事故調報告書の結論とした、圧力隔壁の修理ミス箇所は天井から大きく外れています。墜落現場の残骸で、天井裏の断熱材が後ろの水平安定板付近で発見されていますから、亀裂は天井付近であるはずで、事故調の、修理ミス箇所から隔壁が破壊したという主張は的外れです。


         2023,9,29  鷹富士成夢
Posted by 鷹富士成夢 at 2023年09月29日 14:06
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]