2018年08月15日

●「意識はどのようにして発生するか」(EJ第4828号)

 「人間には『心』はあるか」──AIとかロボットのことにつ
いて書いてある本にはよく出ているテーマです。この社会で生き
ていると、ことあるごとに「心」を口にする人に会うものです。
悪いことをすると「心を入れ替えろ」といわれるし、行動や言葉
に「心がこもっていない」といわれたりします。
 AIロボットが話題になっているせいで、「人間とは何か」と
か「人間とロボットはどう違うか」ということが議論になったり
しています。人間とは、「意識がある」、「考える」、「心があ
る」といわれたりしますが、そういう曖昧なものは定義にならな
いという人もいます。
 大阪大学大学院基礎工学特別教授の石黒浩氏は、「心」につい
て、次のように述べています。
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 人に心はなく、人は互いに心を持っていると信じているだけ
 である。         ──石黒浩大阪大学大学院教授
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 ジュリオ・トノーニという米国の神経科医で神経科学者がいま
す。トノーニ氏の研究対象は意識と睡眠です。トノーニ氏に次の
著書があります。「意識」が「心」とイコールかどうかは分かり
ませんが、参考になる本です。
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  ジュリオ・トノーニ/マルチェッロ・マッスイミーニ著
        『意識はいつ生まれるのか』/亜紀書房刊
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 脳科学にとって最大のナゾは「意識」だったといえます。万人
が誰でも持っているのに、その正体がわからない。そのナゾをト
ノーニ氏は解き明かしているのです。脳は意識を生み出すが、コ
ンピューターは意識を生み出せない。では両者の違いはどこにあ
るのかについても言及しています。この理論は「φ理論」といわ
れています。
 多くの書評がネット上に出ていますが、そのなかの一つが意識
とは何なのかについて、わかりやすく説明しています。
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 この理論によれば、「意識」は種々の情報(知覚、記憶、感情
行動等)を司る大脳皮質のそれぞれの部位の神経細胞が一定以上
の数になり、加えてそれらの間に単なる直接的・直線的な形を超
えた複雑な電気的・化学的接続数がある一定レベルを超えれば発
生するもの、とある。
 著者のトノーニ教授は意識の量をこの二つのパラメータの関数
として表す数式も導いており、その結果を深い睡眠時(=意識が
ない状態)の被験者や植物状態とみなされている被験者の脳に外
部から電磁的刺激を与え、それが脳の部位をどのように活性化さ
せるかをモニターすることによって検証を重ねてきている。
                  https://bit.ly/2B3c1k7
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 これによると、意識は神経細胞が一定以上の数に発展し、それ
らの接続が複雑に絡み合うようになったある時点で、突然に発生
するものということになります。したがって、ロボットにおいて
も人間の脳と同じような、そういう神経細胞──ディープラーニ
ングがさらに進化し、高度な神経細胞ができると、意識が発生す
る可能性があるということになります。
 これに関連するある思考実験があります。米国の哲学者である
ヒラリー・バトナム氏の著書に書かれている思考実験「水槽の中
の脳」です。図を添付ファイルにしているので、そちらも参照し
てください。1981年時点の思考実験の理論です。
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 科学者が、ある人から脳を取り出し、特殊な培養液で満たされ
た水槽に入れる。そして、その脳の神経細胞をコンピュータにつ
なぎ、電気刺激によって脳波を操作する。そうすることで、脳内
で通常の人と同じような意識が生じ、現実と変わらない仮想現実
が生みだされる。このように、私たちが存在すると思っている世
界も、コンピュータによる「シミュレーション」かもしれない。
                  https://bit.ly/2M95s4s
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 この状態で、脳内では意識が生じ、現実世界と変わらないVR
(仮想現実)の世界が生み出されるというのです。何者かが、人
間を乗っ取って、培養液に浸し、エネルギー源として利用する。
当の人間は、現実と全く変わらない仮想現実の世界で過ごしてい
る──まさに映画『マトリックス』の世界そのものです。これを
「シミュレーション仮説」といいます。
 実は、現実世界が何者かにコントロールされているのではない
かと考えていた人は昔からいたのです。その代表的な人物は、フ
ランスの哲学者ルネ・デカルトです。デカルトといえば、次の有
名な言葉があります。
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         われ思う。故にわれ在り
           ──ルネ・デカルト
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 実はこの言葉は「シミュレーション仮説」を意味しているとい
われています。デカルトはこういっているのです。
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 もし全知全能の悪魔が私を欺いているとしたら、本当は「1+
1=5」であるのに、「1+1」と私が思考するたびに、悪魔に
欺かれて「2」を導き出してしまっている可能性がある。つまり
われわれが現実だと思っているものは、全て悪魔に欺かれた結果
に過ぎず、“本当の現実”は全く別物であるかもしれない。
                    ──ルネ・デカルト
                  https://bit.ly/2M95s4s
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          ──[次世代テクノロジー論U/072]

≪画像および関連情報≫
 ●人間の意識は異次元に存在している
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   AI(人工知能)の驚異的な進歩の前に圧倒させられっぱ
  なしの人類だが、このままのペースで進化し続けるとなると
  いつかAIが“意識”を持つ日もやってくるのだろうか。し
  かし、最新の研究ではAIが、人間と同じような“意識”を
  持つことはないことを示唆している。なぜなら、“意識”や
  “心”は肉体に属するものではなく、別次元の存在であるか
  らだというのだが・・・。
   我々の五感はそれぞれの感覚器官を通じて物事を認識して
  いるが、それを最終的には渾然一体となった総合的な体験と
  して味わうことになる。例えばインドカレーを手づかみで食
  べている時には目も舌も鼻も指先もフルに使って料理を味わ
  い、場合によっては店内に流れるエスニックな楽曲に耳を傾
  けながら“食べる”という体験を得る。
   しかし、機械がこうした統合的な体験を味わおうとするの
  はなかなか大変なことであることがわかる。カメラで視覚情
  報を得て、マイクで音を拾い、各種センサーで認識した匂い
  や味や触感といったバラバラの情報を最後に何らかの処理で
  すべて組み合わせなければならないからだ。そしてそれぞれ
  の末端の回路は異なっているだけに、すべての知覚をぴった
  りと同期させるのもなかなか難しそうだ。
                  https://bit.ly/2P3gZQD
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水槽の中の脳.jpg
水槽の中の脳
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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