2018年08月14日

●「インターネットブレインとは何か」(EJ第4827号)

 未来学者のレイ・カーツワイル氏、理論物理学者のフリーマン
・ダイソン氏、言語哲学者のノーム・チョムスキー氏の3人の対
話について、何を感じられたでしょうか。
 カーツワイル氏は、2030年には、仮想現実が脳の神経系の
なかで行われるため、現実と寸分違わない世界が脳内に実現する
ことが可能になるといいます。まるで映画『マトリックス』の世
界そのものです。
 約200万年前に、脳の拡大が起こり、それによって言語が生
まれ、芸術や音楽が誕生しています。これは、人間以外の他の動
物ではあり得ないことですが、現在、再びその脳の拡大が起きよ
うとしているとカーツワイル氏はいうのです。
 これに対して、ノーム・チョムスキー氏は、「何の根拠もない
ファンタジーに過ぎない」と切り捨て、フリーマン・ダイソン氏
も「そもそも科学は本質的に予想できないもの」と疑問を呈して
います。しかし、ダイソン氏はインターネットについては、最終
的には、全体がひとつの生き物のように振る舞うスーパーオーガ
ニズム(超生命体)になるかもしれないといっています。
 インターネットに関しては、カーツワイル氏も、脳の最上層を
インターネットに接続させることによって、人工的な脳として機
能させることができるといいます。これによって思考の拡大は無
限になり、2030年には、生物としての脳と人工的な脳が融合
すると予言しています。
 人間の脳をインターネットに接続する──カーツワイル氏の本
を読むと、これは十分可能なことのように思えてきます。「Io
T」は「モノ・インターネット」ですが、人間の脳が、その「モ
ノ」のひとつになり、「IoB」、すなわち「インタネット・オ
ブ・ブレイン」が実現するという考え方です。
 実は、この技術は既に一部実現しています。脳波をライブスト
リーミング可能な信号に転換し、インターネット上のポータルサ
イトを通じてアクセス可能にするというものです。
 この技術を開発したのは、南アフリカのウィットウォーターズ
ランド大学の研究チームで、この技術を利用するには「モバイル
脳波計(EEG)」を搭載したヘッドセットが必要になります。
このヘッドセットは脳波を信号として認識し、その信号は特化さ
れたコードの助けを借りて、小型コンピュータに送られ、解読さ
れるのです。
 この解読された信号が提供する情報は、ウェブサイト上で確認
できます。これにより、人間の脳内で何が起きているかを知るこ
とができます。しかし、情報の入力は一方向のみですが、双方向
でのやり取りもやがて可能になると思われます。
 人間の脳とインターネットの接続について、カーツワイル氏は
シリコンバレーのシンギュラリティ大学での講演で、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 2030年代に人間の脳は、インターネットに接続可能になり
メールや写真を直接、脳に送信したり、思考や記憶のバックアッ
プを行ったりできるようになる。これは脳内毛細血管を泳ぎまわ
るナノボット(DNA鎖からつくられる極小ロボット)によって
可能になる。非生物的な思考へと脳を拡張することは、私たちの
祖先が道具を使用することを学習したのと同様に、人類の進化の
次なるステップである。また、この拡張によって論理的知性だけ
でなく、感情的知性も高まる。人間は、脳モジュールの階層レベ
ルを増やし、さらに深いレベルの感情表現を生み出すだろう。
                  ──レイ・カーツワイル
─────────────────────────────
 ところで、フリーマン・ダイソン氏のいう「全体がひとつの生
き物のように振る舞うスーパーオーガニズム(超生命体)」とは
何を意味しているのでしょうか。
 元電通のCMプランナーで、編集者の高橋幸治氏は、「生命と
してのインターネット/血肉化する情報世界」というレポートで
これについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 考えてみれば、私たちの身体自体が脳を中央制御室とした精緻
を極めた情報処理システムとして機能しているわけだから、情報
の相互関係や情報の相互伝達を生命的なイメージに置き換えるの
はごく当たり前のことなのかもしれない。
 そして地球を皮膜のように覆う情報の網の目=インターネット
は人間の脳神経系としてイメージされる。そのイメージが来るべ
き第二四半世紀には、単なるメタファーの域を超えて、現実に私
たちの脳神経系と接続されていくだろう。(一部略)
 WWW=World Wide Web の「Web」は周知の通り「織物」であ
り「網」であると同時に「蜘蛛の巣」である。WWWはその名称
の中にすでに生命的なイメージを内包しており、宮沢賢治も「イ
ンドラの網」を「その繊維は蜘蛛のより細く、その組織は菌糸よ
り緻密」と描写している。蜘蛛や菌糸という生命的イメージ。私
たちはもうインターネットを人間の外部に施設された単なる情報
インフラとして客観的に対象化することなどできない。
                  https://bit.ly/2OswbWn
─────────────────────────────
 今やほとんどの人がスマホを持っています。もし、スマホをな
くすと、非常に困惑します。スマホ自体は代替できますが、イン
ターネットでのつながりやアドレス帳などの個人情報、メール、
写真など、まさに自分自身をいうものを失ってしまうのに等しい
からです。そのようなものが、かつてあったでしょうか。
 既にスマホには、指紋認証、音声認証など、個人と切っても切
り離せないほど、自分の一部化しています。シンギュラリティに
なると、スマホが赤血球のサイズになって、体内に入ってくると
カーツワイル氏はいっています。そうなると、人間はインターネ
ットと文字通り一体化することになります。
          ──[次世代テクノロジー論U/071]

≪画像および関連情報≫
 ●脳と脳をインターネットで接続しテレパシーをする実験
  ───────────────────────────
   米ハーバード大学の専門からを中心にスペインやフランス
  の専門家らも参加している研究グループが、インドとフラン
  スにいる者同士が、心で思ったことを言葉や文字、あるいは
  ジェスチャーなどを使わずに直接伝える実験に成功した。
   この実験で、どんなに離れた相手とでも、最新技術を利用
  すれば脳から脳への情報伝達が可能であることが示されたこ
  とになる。これは科学がテレパシーを実現しようとしている
  ということなのだろうか。
   この実験の論文を共同執筆した一人である理論物理学者の
  ジュリオ・ルッフィーニ氏は、自分たちは電磁波で脳と情報
  をやりとりする技術を使っており、決して魔法ではなく、テ
  レパシーの技術的な実現なのだ、と語っている。
   インド南部の都市ティルヴァナンタプラムの被験者がスペ
  イン語の「こんにちは(Hola)」やイタリア語の「こんにち
  わ」と「さよなら(いずれもCiao)」を思い浮かべると、そ
  の際の脳波が測定されて符号化されたデータに変換された。
  そのデータがインターネット経由でフランス北東部のストラ
  スブールに送信されると、符号化されたデータが復元され、
  被験者の頭に取り付けられた電極から微弱な電流として刺激
  が与えられ、脳に直接送信されたという。すると、受信した
  被験者は、目に微弱な光を感じた。つまり、周辺視野で点滅
  する光を見たということらしい。挨拶の声が聞こえたという
  被験者もいたという。      https://bit.ly/2KONrD0
  ───────────────────────────

脳と脳がインターネットに接続される.jpg
脳と脳がインターネットに接続される
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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