2018年08月13日

●「シンギュラリティを巡る異論反論」(EJ第4826号)

 レイ・カーツワイル氏の「シンギュラリティ」の考え方につい
て、今年の3月に亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士は
2014年2月に、BBCのインタビューに対して、次のように
述べています。
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 われわれがすでに手にしている原始的な人工知能は、極めて有
用であることが明らかになっている。だが、完全な人工知能の開
発は人類の終わりをもたらす可能性がある。
 ゆっくりとした生物学的な進化により制限されている人類は、
(人工知能と)競争することはできず、(人工知能に)取って代
わられるだろう。     ──スティーヴン・ホーキング博士
                  https://bit.ly/2OoMWlu
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 ホーキング博士は、AIを「原始的AI」と「完全なAI」に
分けており、現在の「原始的AI」は、やがて「完全なAI」に
進化し、人類を脅かす存在になると述べています。したがって、
これをもって、ホーキング博士が「シンギュラリティ」の主張を
受け入れているとはいえないものの、やがてAIがパワーアップ
して、人類にとって恐るべき存在になることは認めています。
 ここにきわめて興味ある動画あります。NHKEテレが、20
17年12月29日に放送したもので、EJがここまで書いてき
た内容に関係があります。時間は45分です。必視聴です。
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 超AI入門「人間ってナンだ?」特別編/「今そこにある未来
 /ヒト×AI=∞」     /解説/松尾豊東京大学准教授
        未来学者   ・・・ レイ・カーツワイル
        理論物理学者 ・・・ フリーマン・ダイソン
        言語哲学者  ・・・ ノーム・チョムスキー
        インタビュー ・・・ 吉成真由美
                  https://bit.ly/2M4wOc4
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 以下、3人の発言要旨をメモしておきます。そのうえで、動画
を見ていただくと、3人の主張がよくわかると思います。
 第1のメモは未来学者のレイ・カーツワイル氏の主張です。
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・計算によれば、2045年までにわれわれの知能は10億倍に
 なるはずだ。まさしくシンギュラー(飛躍的)な変化である。
・情報テクノロジーの処理速度の変化は予測可能である。その変
 化は「指数関数的」である。その結果、2045年には「シン
 ギュラリティ」に到達する。
・多くの学者は、テクノロジーの変化は「直線的」に生ずると考
 えている。1、2、3、4というように。しかし、指数関数的
 に変化は加速する。1、2、4、8というように。
・一見、たいして変わらないように見えるが、30段階では、直
 線的変化は30、指数関数的は10億。40段階なら1兆に達
 する。ゲノム解析PTでは、7年かけて1%を達成。直線的思
 考考では1%解析するのに7年かかったのなら、全部やるには
 700年かかる。しかし、指数関数的には終ったも同然。毎年
 2倍ずつ加速するので、7回で100%になる。実際に7年で
 終了している。
・コンピュータの大きさは、大型コンピュータの時代から10万
 分の1になっている。このままのスピードで行くと、25年が
 経過すると、コンピュータは10億倍速度が速くなり、大きさ
 はさらに10万分の1小さくなり、赤血球ぐらいになる。
・晩年に発症する病気には免疫系は役に立たない。進化は長寿を
 選択してこなかった。長寿である必要はなかったからだ。AI
 の重要な応用先は免疫の強化である。赤血球サイズの医療用ナ
 ノロボットが開発され、人間は病気と老化から解放される。
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 第2のメモは言語哲学者ノーム・チョムスキー氏の主張です。
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・カーツワイル氏の主張は、完全なるファンタジーである。信じ
 られる根拠は何もない。
・確かにロボットは発展している。それはいいことだ。低スキル
 の仕事をまかせられるからだ。そもそもなぜ、人間が退屈で、
 危険な仕事をしなければならないのか。人間はもっとクリエイ
 ティブで満足すべき仕事に就くべきだ。
・生産性の向上は、低スキルの仕事の減少と高スキルの仕事の増
 加によって達成される。
・AIが人間の知識を超えるという考え方は、今のところ夢に過
 ぎない。現在実現しているのは、膨大なデータを高速な計算に
 頼ったもので、それらは、人間がデザインし、作成したプログ
 ラムで動いているからである。
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 第3のメモは言語哲学者フリーマン・ダイソン氏の主張です。
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・サイエンスとは、本質的に予測できないものである。サイエン
 スにとって重要なのは発見であるが、発見はサプライズであり
 発見を予測することは、サイエンスのやり方ではない。
・インターネットは理解を超えた膨大な情報の集積である。しか
 し、インターネットの構造と目的をわれわれは見通すことはで
 きない。最終的には、全体が一つの生き物のように振る舞うス
 ーパーオーガニズム(超生命体)になることが考えられる。
・インターネットが自らの目的を見つける可能性は大きい。1つ
 のシステムとして、世界を支配するということもある。しかし
 それがいつ起きるかはわからない。
・既に人間ではなく、ソフトウエアがコントロールしている分野
 はたくさんあることを認識すべきである。
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          ──[次世代テクノロジー論U/070]

≪画像および関連情報≫
 ●ガナシア氏が語る「シンギュラリティ批判」
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   名門パリ第6大学でAI(人工知能)研究チームを率いる
  哲学者、ジャン=ガブリエル・ガナシア氏が、このほど『そ
  ろそろ、人工知能の真実を話そう』(早川書房)の発刊を期
  に来日した。「AIが人類を超える」という、シンギュラリ
  ティについての考え方を批判するガナシア氏。フランスの人
  文科学の立場から、AIがどのように考察されているかにつ
  いて語ってもらった。
  ──この本では、レイ・カーツワイルなどが主張する「AI
  が人間の知能を追い越す」というシンギュラリティ(技術的
  特異点)について、その背景にある世界観を批判されていま
  す。レイ・カーツワイルのシンギュラリティという考え方は
  それまでにあった様々な理論を取り込んだだけで、独自の根
  拠があるわけではありません。またシンギュラリティの根拠
  とされるムーアの法則やプロセッサーの指数関数的な成長と
  いう仮説も、帰納的推論にすぎないものであり、科学的根拠
  とはいえないのです。言ってみればシンギュラリティは、科
  学というよりSF的な世界観です。1980年代にSF作家
  のヴァーナー・ヴィンジがこの言葉を普及させました。
                  https://bit.ly/2noHXWt
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3人の知の巨人/AI.jpg
3人の知の巨人
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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