て、今年の3月に亡くなられたスティーヴン・ホーキング博士は
2014年2月に、BBCのインタビューに対して、次のように
述べています。
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われわれがすでに手にしている原始的な人工知能は、極めて有
用であることが明らかになっている。だが、完全な人工知能の開
発は人類の終わりをもたらす可能性がある。
ゆっくりとした生物学的な進化により制限されている人類は、
(人工知能と)競争することはできず、(人工知能に)取って代
わられるだろう。 ──スティーヴン・ホーキング博士
https://bit.ly/2OoMWlu
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ホーキング博士は、AIを「原始的AI」と「完全なAI」に
分けており、現在の「原始的AI」は、やがて「完全なAI」に
進化し、人類を脅かす存在になると述べています。したがって、
これをもって、ホーキング博士が「シンギュラリティ」の主張を
受け入れているとはいえないものの、やがてAIがパワーアップ
して、人類にとって恐るべき存在になることは認めています。
ここにきわめて興味ある動画あります。NHKEテレが、20
17年12月29日に放送したもので、EJがここまで書いてき
た内容に関係があります。時間は45分です。必視聴です。
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超AI入門「人間ってナンだ?」特別編/「今そこにある未来
/ヒト×AI=∞」 /解説/松尾豊東京大学准教授
未来学者 ・・・ レイ・カーツワイル
理論物理学者 ・・・ フリーマン・ダイソン
言語哲学者 ・・・ ノーム・チョムスキー
インタビュー ・・・ 吉成真由美
https://bit.ly/2M4wOc4
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以下、3人の発言要旨をメモしておきます。そのうえで、動画
を見ていただくと、3人の主張がよくわかると思います。
第1のメモは未来学者のレイ・カーツワイル氏の主張です。
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・計算によれば、2045年までにわれわれの知能は10億倍に
なるはずだ。まさしくシンギュラー(飛躍的)な変化である。
・情報テクノロジーの処理速度の変化は予測可能である。その変
化は「指数関数的」である。その結果、2045年には「シン
ギュラリティ」に到達する。
・多くの学者は、テクノロジーの変化は「直線的」に生ずると考
えている。1、2、3、4というように。しかし、指数関数的
に変化は加速する。1、2、4、8というように。
・一見、たいして変わらないように見えるが、30段階では、直
線的変化は30、指数関数的は10億。40段階なら1兆に達
する。ゲノム解析PTでは、7年かけて1%を達成。直線的思
考考では1%解析するのに7年かかったのなら、全部やるには
700年かかる。しかし、指数関数的には終ったも同然。毎年
2倍ずつ加速するので、7回で100%になる。実際に7年で
終了している。
・コンピュータの大きさは、大型コンピュータの時代から10万
分の1になっている。このままのスピードで行くと、25年が
経過すると、コンピュータは10億倍速度が速くなり、大きさ
はさらに10万分の1小さくなり、赤血球ぐらいになる。
・晩年に発症する病気には免疫系は役に立たない。進化は長寿を
選択してこなかった。長寿である必要はなかったからだ。AI
の重要な応用先は免疫の強化である。赤血球サイズの医療用ナ
ノロボットが開発され、人間は病気と老化から解放される。
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第2のメモは言語哲学者ノーム・チョムスキー氏の主張です。
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・カーツワイル氏の主張は、完全なるファンタジーである。信じ
られる根拠は何もない。
・確かにロボットは発展している。それはいいことだ。低スキル
の仕事をまかせられるからだ。そもそもなぜ、人間が退屈で、
危険な仕事をしなければならないのか。人間はもっとクリエイ
ティブで満足すべき仕事に就くべきだ。
・生産性の向上は、低スキルの仕事の減少と高スキルの仕事の増
加によって達成される。
・AIが人間の知識を超えるという考え方は、今のところ夢に過
ぎない。現在実現しているのは、膨大なデータを高速な計算に
頼ったもので、それらは、人間がデザインし、作成したプログ
ラムで動いているからである。
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第3のメモは言語哲学者フリーマン・ダイソン氏の主張です。
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・サイエンスとは、本質的に予測できないものである。サイエン
スにとって重要なのは発見であるが、発見はサプライズであり
発見を予測することは、サイエンスのやり方ではない。
・インターネットは理解を超えた膨大な情報の集積である。しか
し、インターネットの構造と目的をわれわれは見通すことはで
きない。最終的には、全体が一つの生き物のように振る舞うス
ーパーオーガニズム(超生命体)になることが考えられる。
・インターネットが自らの目的を見つける可能性は大きい。1つ
のシステムとして、世界を支配するということもある。しかし
それがいつ起きるかはわからない。
・既に人間ではなく、ソフトウエアがコントロールしている分野
はたくさんあることを認識すべきである。
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──[次世代テクノロジー論U/070]
≪画像および関連情報≫
●ガナシア氏が語る「シンギュラリティ批判」
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名門パリ第6大学でAI(人工知能)研究チームを率いる
哲学者、ジャン=ガブリエル・ガナシア氏が、このほど『そ
ろそろ、人工知能の真実を話そう』(早川書房)の発刊を期
に来日した。「AIが人類を超える」という、シンギュラリ
ティについての考え方を批判するガナシア氏。フランスの人
文科学の立場から、AIがどのように考察されているかにつ
いて語ってもらった。
──この本では、レイ・カーツワイルなどが主張する「AI
が人間の知能を追い越す」というシンギュラリティ(技術的
特異点)について、その背景にある世界観を批判されていま
す。レイ・カーツワイルのシンギュラリティという考え方は
それまでにあった様々な理論を取り込んだだけで、独自の根
拠があるわけではありません。またシンギュラリティの根拠
とされるムーアの法則やプロセッサーの指数関数的な成長と
いう仮説も、帰納的推論にすぎないものであり、科学的根拠
とはいえないのです。言ってみればシンギュラリティは、科
学というよりSF的な世界観です。1980年代にSF作家
のヴァーナー・ヴィンジがこの言葉を普及させました。
https://bit.ly/2noHXWt
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3人の知の巨人


