2018年07月27日

●「人工知能を人体に埋め込んで改造」(EJ第4815号)

 現在、既に実現している人工知能(AI)のすべては、いずれ
も「弱いAI」ということになります。いずれも特定の分野にお
いて利用されるAIです。「専用的AI」ともいいます。
 この「弱いAI」に、意識や感情や精神、すなわち、「心」を
持たせることができれば、それは「強いAI」になります。これ
は、人工知能(AI)ではなく、人工汎用知能(AGI)という
ことになります。
 レイ・カーツワイル氏の本を読んでわかったことがあります。
今後テクノロジーが、カーツワイル氏がいうように、指数関数的
に発達しても、AIに「心」を持たせることは困難であると誰も
が考えます。どちらにもどうしても乗り越えることが困難な壁が
たくさんあるからです。
 しかし、人間が人体にAIの機能を取り込んだ場合は、どうで
しようか。これなら十分可能です。いい替えると、人間サイボー
グの実現です。機械に「心」を持たせようと腐心するのではなく
はじめから「心」を持っている人間に、AI機能を埋め込むので
す。そうすると、新しい人間が誕生します。
 テクノロジーの指数関数的進化のすえに何が起きるかについて
カーツワイル氏は、3つのシナリオがあるといっています。カー
ツワイル氏の自著から引用します。
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 第1のシナリオは、2020年代の末までに、人間の脳のリバ
ースエンジニアリングが完了し、感情的知能も含めた、人間の複
雑で捉えがたい脳に匹敵し、あるいは凌駕する、非生物的なシス
テムが創造されるだろうというものだ。
 第2のシナリオは、人間の脳のさまざまなパターンを、適切な
非生物的な思考の基板にアップロードするというもの。そして第
3の、もっとも説得力のあるシナリオは、人間そのものが徐々に
しかし確実に、生体から非生物的な存在へと変わっていくという
ものだ。
 障害や病気を改善するための神経移植のような、比較的簡単な
デバイスの導入はすでに始まっている。こうした人体の改造は、
血流にナノポットを入れるようになれば、いっそう進歩するだろ
う。ナノポットはまず医療と老化防止を目的として開発が進めら
れる。そしていずれはより洗練されたナノポットが人間のニュー
ロンと接続され、われわれの感覚を増強する。そうなると、神経
系続からヴァーチャルリアリティ(VR)や、拡張現実(AR)
がもたらされ、記憶力は増強され、日常的な認識作業も助けられ
る。やがて人間はサイボーグとなり、知能における非生物的な部
分は、そうした脳内の装置を足がかりとして、機能を指数関数的
に拡大させていく。これまでに述べたように、ITは、コストパ
フォーマンス、能力、導入率などすべての面で指数関数的な成長
を持続していく。  ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
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 カーツワイル氏がここでいう第3のシナリオ「人間そのものが
徐々に、しかし確実に、生体から非生物的な存在へと変わってい
く」──この考え方には、きわめて説得力があります。つまり、
機械が人類を追い落とすという未来像ではなく、人間と機械の協
調によって人類が進歩するというのがカーツワイル氏が信じるビ
ジョンです。
 AIによる人間改造──これに近いことをいっている人がいま
す。電気自動車のテスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏で
す。2017年2月12日〜14日にドバイで開かれた「世界政
府サミット」に登壇し、次の発言をしています。
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 長年、私は生命の知性とデジタルな知性が融合する日がくると
考えてきました。問題は処理能力にあります。コンピュータは、
1秒間に1兆ビットの情報を処理しますが、人間はたったの10
ビットです。このままでは、いずれAIが人間を余分なものとし
て排除する可能性もあります。しかし、高速処理を実現するイン
ターフェースを脳に装着することで、驚異的なスピードアップが
期待できるのです。         ──イーロン・マスク氏
                  https://bit.ly/2Nw1L5d
─────────────────────────────
 イーロン・マスク氏とカーツワイル氏の主張には、同じ新しい
テクノロジーによる人体改造でも大きな違いがあります。それは
マスク氏は、近未来に、人知をはるかに超える知能体が出現する
と考えているのに対し、カーツワイル氏は、そのような知識体は
現れないと考えているからです。
 脳以外の身体の他の部分を何らかのマシンに置き換えている人
は既にたくさんいます。しかし、脳の部分に何かを埋め込んだり
した場合、自分という意識というか、アイデンティティはどうな
るのか。きわめて興味深い問題です。
 レイ・カーツワイル氏は、これについても自著で次のように書
いています。きわめて哲学的な話です。
─────────────────────────────
 わたしの脳のごく小さな部分を、同じ神経パターンをもつ物質
と置き換えることを考えてみよう。そう、わたしは依然としてこ
こにいる。手術は成功したのだ。すでに、このような人は存在す
る。たとえば、内耳の蛸牛管の移植を受けた人や、パーキンソン
病の症状を抑えるために神経移植を受けた人などだ。
 さて、次にわたしの脳の別の部分を置き換えよう。それでも、
わたしはもとのわたしのまま・・。そして、さらに、また移植を
・・。一連の移植のあとも、わたしは依然としてわたしだ。「古
いレイ」も、「新しいレイ」も存在しない。わたしはもとのわた
しのままだ。わたしがいなくなったと悲しむ者は、わたしも含め
誰もいない。     ──レイ・カーツワイル著の前掲書より
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/059]

≪画像および関連情報≫
 ●ヒトの能力はどこまで強化・拡張できるのか
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   宇宙を飛び回る超人や悪の組織と戦う人造人間など、機械
  を使ってヒトの能力を強化・拡張するという舞台装置は、S
  Fの定番である。ただし、こうした機械による能力の強化・
  拡張は、既に身近なところで数多く見られる。
   例えば、かつては専門家だけが使う道具だったコンピュー
  タは、ノートパソコン、スマートフォン、さらにはウエアラ
  ブル機器などが登場し、どんどんヒトに近い位置で使われる
  ようになった。これによって、コンピュータの力をヒトの能
  力の一部として同化させ、文字通り手足のように利用してい
  る。そして、過去には知り得なかったより多くの情報を手に
  入れ、昔ならば出会うこともなかったような人と、密度の高
  いコミュニケーションを交わせるようになったのだ。
   今、こうした強化・拡張した能力の活用を前提にして生き
  る「デジタルネイティブ」が、次の暮らしや社会の担い手に
  なりつつある。社会の進化もまた、機械によるヒトの能力の
  強化・拡張と共にあると言えるだろう。
   機械によるヒトの能力の強化・拡張は、様々な切り口で進
  んでいる。例えば知覚の強化・拡張では、「見る」「聞く」
  「触れる」「嗅ぐ」「味わう」といった五感を強化するだけ
  でなく、本来ヒトが持たない検知能力まで付加するセンサー
  技術やICT技術が急速に発達している。
                  https://bit.ly/2Lz99j7
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イーロン・マスクCEO/テスラ社.jpg
イーロン・マスクCEO/テスラ社
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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