2018年07月25日

●「シンギュラリティ以後はこうなる」(EJ第4813号)

 レイ・カーツワイル氏はいっています。「AIの技術は指数関
数的に進化する」と。この「指数関数的に」とはどういう意味で
しょうか。もっとも単純な関数「y=1/x」について、考えて
みましょう。添付ファイルの図をご覧ください。このグラフは何
を意味しているのでしょうか。これは、数学における特異点を表
しています。
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 xの値がゼロに近づくと(右から左に進む)、1/x、すな
 わちyは急激に大きくなる。
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 昨日のEJでご紹介した「睡蓮の葉が湖面に増殖する話」を数
学的に説明したものです。長い時間をかけても湖面の1%ぐらい
しかなかった睡蓮の葉がある日を境に突然急速に増殖し、あっと
いう間に湖面いっぱいに覆ってしまう現象です。特異点、すなわ
ち、シンギュラリティとはそういうことをいっています。
 現在は初期の移行期にある──レイ・カーツワイル氏はいいま
す。しかし、今世紀の半ばまでには、テクノロジーの成長率は急
速に上昇し、ほとんど垂直の線に達するまでになるといいます。
そしてその頃にはテクノロジーとわれわれ人間は一体化し、今世
紀末までには、人間の知能のうちの非生物的な部分は、テクノロ
ジーの支援を受けない知能よりも、数兆倍の数兆倍も強力になる
というのです。
 特異点を超えた以後の世界について、レイ・カーツワイル氏は
自著で次のように述べています。まるで映画「マトリックス」と
同じ世界が実現するように読み取れます。
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 シンギュラリティとは、われわれの生物としての思考と存在が
みずからの作りだしたテクノロジーと融合する臨界点であり、そ
の世界は、依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超
越している。シンギュラリティ以後の世界では、人間と機械、物
理的な現実と拡張現実(VR)との間には、区別が存在しない。
そんな世界で、間違いなく人間的だと言えるものが残っているの
かと問われれば、あるひとつの性質は変わらずにあり続ける、と
答えよう。それは、人間という種は、生まれながらにして、物理
的および精神的な力が及ぶ範囲を、その時々の限界を超えて広げ
ようとするものだ、という性質だ。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
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 カーツワイル氏がいっていることとは次元が違いますが、最近
電動アシスト付き自転車に乗りながら、考えていることがありま
す。これ実にラクなのです。一度でも電動アシスト自転車に乗っ
たら、アシストなしではとても自転車に乗れなくなります。それ
ほど、電動アシスト自転車はラクです。
 これができるのであれば、たとえば、膝が痛くて歩くのに不便
な老人の膝に、サポーターのようにあるマシンを取り付けること
によって、通常と同じように歩けるようすることはできるのでは
ないかと考えます。既に腰に巻き付けると、非力の人でも、重た
いものをラクに持ち上げる介助ロボットは完成しています。後は
どこまで、軽量化や小型化ができるかです。
 カーツワイル氏がいうのは、シンギュラリティに到達すれば、
われわれの生物としての身体と脳の限界を超えることも可能にな
るといいます。現在においては、人間の脳は、AIが到底追いつ
かないほどのレベルなのですが、同時に人間の脳は、生物である
が故に、超えることのできない大きな限界を抱えている。カーツ
ワイル氏は人間の生物的限界について次のように述べています。
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 人間の脳は、さまざまな点でじつにすばらしいものだが、いか
んともしがたい限界を抱えている。人は脳の超並列処理(100
兆ものニューロン間結合が同時に作動する)を用いて、微妙なパ
ターンをすばやく認識する。だが、人間の思考速度はひじょうに
遅い。基本的なニューロン処理は、現在の電子回路よりも数百万
倍遅い。このため、人間の知識ベースが指数関数的成長していく
一方で、新しい情報を処理するための生理学的な帯域幅はひじょ
うに限られたままなのだ。
           ──レイ・カーツワイル著の前掲書より
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 カーツワイル氏の本を読んでいてわかったことがあります。い
わゆるAIの急速な進化によってシンギュラリティを超えると、
人間の知能をはるかに超える非生物的な知能体があらわれ、これ
によって人間は職を奪われ、やがて征服されるというSF的スト
ーリーがよく語られています。しかし、カーツワイル氏によると
シンギュラリティ以後、人間の知能に従来からある長所と、AI
の知能にある長所を合体させた新しい人間が登場するという考え
方です。これは人間なのか、ロボットなのでしょうか。
 考えてみると、現代はほとんどの人がスマホを持っていますが
それだけでも人間とICT知能が合体しているといえます。カー
ツワイル氏は次のように述べています。
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 忘れてはならないのは、未来に出現する知能は、それがすでに
人間と機械が融合したものであっても、人間の文明の表れであり
続けるということだ。言い方を変えれば、未来の機械は、もはや
生物学的な意味で人間ではなくとも、一種の人間なのだ。これは
進化の次なる段階だ。次に訪れる高度なパラダイムシフトであり
知能進化の間接的な作用なのだ。文明にある知能のほとんどは、
最終的には、非生物的なものになるだろう。今世紀の未には、そ
うした知能は、人間の知能の数兆倍の数兆倍も強力になる。
           ──レイ・カーツワイル著の前掲書より
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/057]

≪画像および関連情報≫
 ●シンギュラリティがやってくる/AIと人間が融合する日
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   シンギュラリティ(技術的特異点)とは人工知能(AI)
  が人間の知能と融合し、人間の生命と社会のあり方が大きく
  変わる時期を指す。これはSFの話でなく、加速度的に進歩
  しているスーパーコンピュータの開発、AIの高度化、新エ
  ネルギー研究、モノのインターネット化、ロボット工学、ゲ
  ノム編集、ナノテクノロジー等によって、早ければあと5年
  で、遅くとも40年以内には実現するという。人間がAIや
  機械と融合することによって、生老病死に対する考えを全く
  改めなければならない瞬間がおとずれたとき、社会や経済は
  どうなっているのか?シンギュラリティに造詣の深い3人の
  識者に話を聞いた。
   近未来型AI会議室を舞台に始まったシンギュラリティ・
  シンポジウム。AI研究者の中島秀之氏、スパコン開発者の
  齊藤元章氏、経済学者の井上智洋氏の3人に自由な議論をし
  てもらった。齊藤氏が、シンギュラリティに向かいつつある
  今の世界は、人間が初めて機械的な知性によって生物学的な
  進化を遂げる時代だと切り出すと、中島氏は、新しい社会概
  念、ソサエティ5・0こそが、AIによる社会革命にあたる
  のではないかと指摘する。
   経済学者の井上氏は、やがて人間と同じようにどんな仕事
  でもこなせる汎用人工知能が完成すれば、労働移動が追いつ
  かず大失業が起こる危険性もある一方、私たち人間が働かな
  くてもよい世界になるかもしれないという持論を展開する。
                  https://bit.ly/2NtTYF5
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数学における特異点/線形グラフ.jpg
数学における特異点/線形グラフ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
将来奴隷ロボットが人間の代わりに働くので人間は働く必要がなくなるだけです。お金は奴隷ロボットが稼ぎます。
人間が働かなくなればどうなるか?人間の数が減ります。
しばらくすると人間を探さないといけないほどAIだらけになるでしょう。
人間は何もしなくなるために生きています。そのために日夜働いて生きています。テクノロジーの進化はそれを助けます。
進化をすれば人間は消滅します。その為に私たちは働いて生きているのです。
それが未来です。
Posted by aiueo at 2018年07月26日 17:07
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