数的に進化する」と。この「指数関数的に」とはどういう意味で
しょうか。もっとも単純な関数「y=1/x」について、考えて
みましょう。添付ファイルの図をご覧ください。このグラフは何
を意味しているのでしょうか。これは、数学における特異点を表
しています。
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xの値がゼロに近づくと(右から左に進む)、1/x、すな
わちyは急激に大きくなる。
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昨日のEJでご紹介した「睡蓮の葉が湖面に増殖する話」を数
学的に説明したものです。長い時間をかけても湖面の1%ぐらい
しかなかった睡蓮の葉がある日を境に突然急速に増殖し、あっと
いう間に湖面いっぱいに覆ってしまう現象です。特異点、すなわ
ち、シンギュラリティとはそういうことをいっています。
現在は初期の移行期にある──レイ・カーツワイル氏はいいま
す。しかし、今世紀の半ばまでには、テクノロジーの成長率は急
速に上昇し、ほとんど垂直の線に達するまでになるといいます。
そしてその頃にはテクノロジーとわれわれ人間は一体化し、今世
紀末までには、人間の知能のうちの非生物的な部分は、テクノロ
ジーの支援を受けない知能よりも、数兆倍の数兆倍も強力になる
というのです。
特異点を超えた以後の世界について、レイ・カーツワイル氏は
自著で次のように述べています。まるで映画「マトリックス」と
同じ世界が実現するように読み取れます。
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シンギュラリティとは、われわれの生物としての思考と存在が
みずからの作りだしたテクノロジーと融合する臨界点であり、そ
の世界は、依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超
越している。シンギュラリティ以後の世界では、人間と機械、物
理的な現実と拡張現実(VR)との間には、区別が存在しない。
そんな世界で、間違いなく人間的だと言えるものが残っているの
かと問われれば、あるひとつの性質は変わらずにあり続ける、と
答えよう。それは、人間という種は、生まれながらにして、物理
的および精神的な力が及ぶ範囲を、その時々の限界を超えて広げ
ようとするものだ、という性質だ。
──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
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カーツワイル氏がいっていることとは次元が違いますが、最近
電動アシスト付き自転車に乗りながら、考えていることがありま
す。これ実にラクなのです。一度でも電動アシスト自転車に乗っ
たら、アシストなしではとても自転車に乗れなくなります。それ
ほど、電動アシスト自転車はラクです。
これができるのであれば、たとえば、膝が痛くて歩くのに不便
な老人の膝に、サポーターのようにあるマシンを取り付けること
によって、通常と同じように歩けるようすることはできるのでは
ないかと考えます。既に腰に巻き付けると、非力の人でも、重た
いものをラクに持ち上げる介助ロボットは完成しています。後は
どこまで、軽量化や小型化ができるかです。
カーツワイル氏がいうのは、シンギュラリティに到達すれば、
われわれの生物としての身体と脳の限界を超えることも可能にな
るといいます。現在においては、人間の脳は、AIが到底追いつ
かないほどのレベルなのですが、同時に人間の脳は、生物である
が故に、超えることのできない大きな限界を抱えている。カーツ
ワイル氏は人間の生物的限界について次のように述べています。
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人間の脳は、さまざまな点でじつにすばらしいものだが、いか
んともしがたい限界を抱えている。人は脳の超並列処理(100
兆ものニューロン間結合が同時に作動する)を用いて、微妙なパ
ターンをすばやく認識する。だが、人間の思考速度はひじょうに
遅い。基本的なニューロン処理は、現在の電子回路よりも数百万
倍遅い。このため、人間の知識ベースが指数関数的成長していく
一方で、新しい情報を処理するための生理学的な帯域幅はひじょ
うに限られたままなのだ。
──レイ・カーツワイル著の前掲書より
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カーツワイル氏の本を読んでいてわかったことがあります。い
わゆるAIの急速な進化によってシンギュラリティを超えると、
人間の知能をはるかに超える非生物的な知能体があらわれ、これ
によって人間は職を奪われ、やがて征服されるというSF的スト
ーリーがよく語られています。しかし、カーツワイル氏によると
シンギュラリティ以後、人間の知能に従来からある長所と、AI
の知能にある長所を合体させた新しい人間が登場するという考え
方です。これは人間なのか、ロボットなのでしょうか。
考えてみると、現代はほとんどの人がスマホを持っていますが
それだけでも人間とICT知能が合体しているといえます。カー
ツワイル氏は次のように述べています。
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忘れてはならないのは、未来に出現する知能は、それがすでに
人間と機械が融合したものであっても、人間の文明の表れであり
続けるということだ。言い方を変えれば、未来の機械は、もはや
生物学的な意味で人間ではなくとも、一種の人間なのだ。これは
進化の次なる段階だ。次に訪れる高度なパラダイムシフトであり
知能進化の間接的な作用なのだ。文明にある知能のほとんどは、
最終的には、非生物的なものになるだろう。今世紀の未には、そ
うした知能は、人間の知能の数兆倍の数兆倍も強力になる。
──レイ・カーツワイル著の前掲書より
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──[次世代テクノロジー論U/057]
≪画像および関連情報≫
●シンギュラリティがやってくる/AIと人間が融合する日
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シンギュラリティ(技術的特異点)とは人工知能(AI)
が人間の知能と融合し、人間の生命と社会のあり方が大きく
変わる時期を指す。これはSFの話でなく、加速度的に進歩
しているスーパーコンピュータの開発、AIの高度化、新エ
ネルギー研究、モノのインターネット化、ロボット工学、ゲ
ノム編集、ナノテクノロジー等によって、早ければあと5年
で、遅くとも40年以内には実現するという。人間がAIや
機械と融合することによって、生老病死に対する考えを全く
改めなければならない瞬間がおとずれたとき、社会や経済は
どうなっているのか?シンギュラリティに造詣の深い3人の
識者に話を聞いた。
近未来型AI会議室を舞台に始まったシンギュラリティ・
シンポジウム。AI研究者の中島秀之氏、スパコン開発者の
齊藤元章氏、経済学者の井上智洋氏の3人に自由な議論をし
てもらった。齊藤氏が、シンギュラリティに向かいつつある
今の世界は、人間が初めて機械的な知性によって生物学的な
進化を遂げる時代だと切り出すと、中島氏は、新しい社会概
念、ソサエティ5・0こそが、AIによる社会革命にあたる
のではないかと指摘する。
経済学者の井上氏は、やがて人間と同じようにどんな仕事
でもこなせる汎用人工知能が完成すれば、労働移動が追いつ
かず大失業が起こる危険性もある一方、私たち人間が働かな
くてもよい世界になるかもしれないという持論を展開する。
https://bit.ly/2NtTYF5
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数学における特異点/線形グラフ



人間が働かなくなればどうなるか?人間の数が減ります。
しばらくすると人間を探さないといけないほどAIだらけになるでしょう。
人間は何もしなくなるために生きています。そのために日夜働いて生きています。テクノロジーの進化はそれを助けます。
進化をすれば人間は消滅します。その為に私たちは働いて生きているのです。
それが未来です。