2018年07月24日

●「シンギュラリティ/カーツワイル」(EJ第4812号)

 いわゆるAI(人工知能)の進化は、ここ数年、目を見張るも
のがあります。最近の新聞では、AIの記事が載らない日は、1
日もなくなっています。書店にはAIの特設コーナーができ、多
くの本が並んでいます。新井紀子氏のベストセラー本もそのうち
のひとつです。
 こういう状況になると、多くの人はともすると錯覚を起こしま
す。その典型的なものが「このまま行くと、人間はAIに職を奪
われ、世界はAIに征服される」というようなSF的な妄想が、
大真面目に流布されることです。
 米国の未来学者であり、グーグルの研究者であるレイ・カーツ
ワイル氏は、次の有名な言葉を世界に発信しています。
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   2045年、コンピュータが全人類の知性を超える
               ──レイ・カーツワイル
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 レイ・カーツワイル氏は、コンピュータの進化の行き着く先に
は、上記のようなことが起きる時点が待ち構えており、その先に
は何が起きるかわからないとし、これを「シンギュラリティ(特
異点)」と呼んだのです。それが2045年には起きるだろうと
いうのです。あと27年後のことです。
 誤解すべきではないのは、現在のAIのレベルは、「人間のよ
うに振る舞うマシン」になりつつありますが、その正体は「弱い
AI」そのものです。新聞などによく「〇〇に人工知能導入」と
か、「AIで〇〇を代替」などのニュースが流れますが、ここで
いうAIはすべて「弱いAI」です。
 「弱いAI」は、いずれも特定の範囲内で実現出来る技術であ
り、やがて「強いAI」を実現するための基礎技術になることが
期待されますが、きっとそうなるはずです。ここで大事なことは
「弱いAI」は、あくまで特定の範囲内で使えるAI技術である
ことです。それは、人間にとって、脅威であるどころか、便利な
存在であるに過ぎないのです。例えていうならば、大量の土砂を
片づけるのに、ブルドーザは人間の能力をはるかに超えたという
のと同じです。人間はその分時間が節約できます。
 また、世界の囲碁のチャンピオンを破ったグーグルのAI「ア
ルファ碁」は、あくまで囲碁という限定された範囲で、人間を超
えたというに過ぎないのです。もちろん、これはこれでエポック
メーキングなことですが、「アルファ碁」は囲碁しかできない専
用AIでしかないのです。
 この「アルファ碁」の非効率性について、ネットコマ―ス株式
会社代表取締役、斎藤昌義氏は、自著において、次のように指摘
しています。
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 アルファ碁がプロ棋士に勝つために使ったコンピュータは、消
費電力も膨大です。たとえていえば、箸の上げ下ろしにクレーン
車を使うようなものです。人間の脳は、わずかなエネルギーで、
アルファ碁と対等に勝負したわけですから、いかに効率がいいか
がわかります。「自分が何者か?」という自己理解は、人工知能
にはできません。また、意識や意欲などということになると、そ
れがそもそも何か、どのような仕組みで実現しているのかさえ、
まだ十分にはわかっていません。エネルギー効率も、人間の脳に
はかないません。これらも含めて「脳機能」であるとすれば、脳
の活動をすべて機械で実現するのは、容易ではないことが理解で
きます。            ──斎藤昌義著/技術評論社
                  『未来を味方にする技術
        これからのビジネスを創るITの基礎の基礎』
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 「アルファ碁」は囲碁しかできませんが、人間の脳は、囲碁だ
けでなく、本も読めるし、会議をして意見交換もできるし、営業
もできるというように、「汎用頭脳」なのです。これがAIに出
来るようになると、「強いAI」、すなわち「人工汎用知能」と
いうことになり、それは「AGI」と呼ぶのです。
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            人工汎用知能=強いAI
       Artificial General intelligence
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 それでは「シンギュラリティ」とは何でしようか。
 カーツワイル氏によると、シンギュラリティという概念の根本
には、人間が生み出したテクノロジーの変化の速度は加速してい
て、一挙に拡大するといい、その威力は「指数関数的な速度」で
拡大するといっています。最初は目に見えない小さな変化ですが
やがて予期しないほど激しく、爆発的に拡大するのです。これに
ついてカーツワイル氏は、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 こういう話がある。湖の所有者が、睡蓮の葉で湖面が覆われ、
湖の魚が死んでしまうことのないよう、家を寸刻も空けずに湖を
観察することにした。睡蓮の葉は、数日ごとに2倍に増えるとい
う。何か月もの間、所有者はひたすら様子をうかがったが、睡蓮
の葉は、ほんのわずかしか見られず、とりたてて広がっていくよ
うには思われなかった。睡蓮の葉が占める面積は湖全体の1パー
セントにも満たないようなので、ここらで休みを取って、家族で
出かけてもだいじょうぶだろうと判断した。数週間後に帰宅した
所有者は、びっくりした。湖全体が睡蓮の葉で覆われ、魚がみん
な死んでしまっていたのだ。数日ごとに2倍になるので、最後に
7回倍加した分で、睡蓮の葉が湖全体に広がっていたのだ(7回
倍加すると、睡蓮の葉の占める面積は128倍になる)。指数関
数的な成長には、こうした特質がある。
          ──レイ・カーツワイル著/NHK出版編
   『シンギュラリティは近い/人類が生命を超越するとき』
─────────────────────────────
          ──[次世代テクノロジー論U/056]

≪画像および関連情報≫
 ●こんなに凄い「シンギュラリティ」の衝撃
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   未来を変えるテクノロジーとして、いまもっとも、多くの
  人々が注目しているのは、おそらくAI(人工知能)だろう
  と思います。それと同時に、あるキーワードがメディアでク
  ローズアップされるようになりました。それは、「シンギュ
  ラリティ」という言葉です。
   この言葉が日本国内で広まるきっかけをつくった一人は、
  ソフトバンクCEOの孫正義氏ではないでしょうか。孫氏は
  2016年6月、AIの進化について熱弁をふるい、「シン
  ギュラリティがやってくる中で、もう少しやり残したことが
  あるという欲が出てきた」と、シンギュラリティが社長続投
  の理由であったと発言したのです。それ以来、数年前までは
  ごく一部の人たちしか知らなかった「シンギュラリティ」と
  いう言葉が一般に注目されるようになりました。
   しかし私の見るかぎり、「シンギュラリティ」という言葉
  は必ずしも正しく理解されていません。多くの日本人が誤解
  しているようなので、まずはその正確な意味をお伝えすると
  ころから始めましょう。
   シンギュラリティは、もともと「特異点」を意味する言葉
  です。数学や物理学の世界でよく使われる概念です。たとえ
  ば宇宙物理学の分野では、ブラックホールの中に、理論的な
  計算では重力の大きさが無限大になる「特異点」があると考
  えられ、それが重大な問題になります。
                  https://bit.ly/2uI0sJF
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レイ・カーツワイル氏.jpg
レイ・カーツワイル氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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