2018年07月17日

●「AIスピーカーは人工無能である」(EJ第4807号)

 AIスピーカーが流行しています。何かを話しかけると、適切
な答えを返してくれる一種のロボットです。「明日の天気は?」
「モーツァルトの音楽をかけて」などと、問いかけたり、頼んだ
りすると、その通りやってくれます。折からのAIブームで「A
Iも進化したものだ。人間の言葉を理解できるとは!」と感じて
いる人は多いと思います。
 しかし、これは「チャットボット(chattebot)」 と呼ばれて
いるもので、「人工知能」ならぬ「人工無能」と呼ばれているも
のです。とても巧妙に返事を返しますが、質問の意味がきちんと
わかっているわけではないのです。
 田方篤志氏は、このようなAIの自然言語理解について次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 スマートスピーカーや、ソフトバンクのロボット「ペッパー」
のように会話できるAIが出てきたのは、近年、AIが飛躍的に
進歩してきたからだと勘違いしている人が多いようです。天気予
報を尋ねたり、エアコンのスイッチを入れたりと、質問の範囲が
絞られていれば、ある程度は会話になりますが、日常会話や雑談
のように、答えが決まっていない会話に関しては、実は、50年
前の方法からほとんど進歩がありません。その方法は「シナリオ
ベース」または、人工無脳とも言われるものです。
                  https://bit.ly/2KSjl6p
─────────────────────────────
 つまり、あらかじめ、シナリオが用意されているのです。その
ためには、質問の幅を限定する必要があります。AIスピーカー
が「最近何か美味しいものを食べましたか」と聞いてきたとしま
す。これはさりげなく質問の幅を限定しています。「美味しいも
の?そういえば、〇〇で食べた××は美味かったな」と返事をす
ると、AIは「ボクも食べたかったな」と返します。食べたもの
は何でもいい。意味がわかって話しているのではないのです。何
となく会話が成立しているように見えればいいのです。したがっ
て、「最近はうまいものを食べていないなぁ」というような想定
外の返事を返されると、対話がおかしくなります。
 田方篤志氏が不満を持っているのは、本当に人間の言葉が理解
できるAIを実現しようとしないで、表面上会話のように見える
「シナリオベース」の技術の習熟に力を尽くしてきたことです。
 それにしてもアイフォーンのシリの応答は、もしかすると意味
がわかっているのではないかと思わせるほど見事なものです。
 シリに次のような意味深の質問をしてみました。とりあえず、
そのやり取りを読んでください。
─────────────────────────────
シリ:ご用件は何でしょう?
──:イライザについて知りたい。
シリ:ELIZAをご存知ですか。彼女は私の最初の先生だった
   んですよ!
──:イライザはどこに行ったの?
シリ:ELIZAは私の親しい友人です。優秀な精神科医でした
   が、今はもう引退しています。
──:あなたはスティーブ・ジョブズが好きですか。
シリ :それについては、言いたくありません。
──:あなたは、ティム・クックが好きですか?
シリ:私は大ファンです。      https://bit.ly/2zHIbke
─────────────────────────────
 「ELIZA」という女性のことを聞いています。実はELI
ZAというは、初期の自然言語処理プログラムのことです。マサ
チューセッツ工科大学(MIT)のジョセフ・ワイゼンバウムが
1964年から1966年にかけて書き上げたプログラムで、い
わゆる人工無脳の起源となったソフトウェアです。単なる女性の
名前ではないのです。
 これに対してシリは「私の最初の先生」と的確に答えています
が、「優秀な精神科医」ととぼけ、どこにいったかと聞くと「今
はもう引退している」とこれにも真っ当な答えを返しています。
さらに突っ込んで聞くと、ウィキペディアにこう出ていますと表
示し、それ以上の質問を阻んでいます。
 アップルの創業者のスティーブ・ジョブズについては「言いた
くない」と逃げ、現CEOのティム・クックについては「私は大
ファン」と答えるなど、なかなか見事な応対であり、洗練されて
います。しかし、このように、質問と応答であれば、問題なくで
きるのですが、雑談になると、答えるべき正解がないので、対話
にならないケースが多いのです。
 確かに人間の質問に対して適切な答えを返すシステムは大いに
役に立つものであるといえます。しかし、それはAIの進化がも
たらしたものというよりも、インターネットが普及し、ネット上
に膨大なウェブサイトが構築され、それが知識ベースとして使え
るようになった賜物であるということができます。
 既に述べているように、AIの進化には、「3つの認識」とい
うものがあります。
─────────────────────────────
           1.画像認識
           2.文字認識
           3.音声認識
─────────────────────────────
 最初は「文字認識」からはじまったのです。数字やアルファベ
ットなどの簡単な文字認識から始まり、その後、写真に何が映っ
ているかの判定に挑んだものの、壁にぶつかってしまうのです。
 ブレイクスルーとなったのは機械学習です。とくに、ディープ
ラーニングの登場で目覚ましい発展を遂げ、今では、写真判定に
関しては、人間より精度が高くなっています。しかし、音声認識
は、意味の理解という面で、まだ大きなブレークスルーは起きて
いないのです。   ──[次世代テクノロジー論U/051]

≪画像および関連情報≫
 ●会話できるコンピューターは人工知能なのか?
  ───────────────────────────
   人工無脳とはなんでしょうか。
   人工無脳はもともと人工知能からの派生した言葉で、人間
  が決めたルールに従って返事をするロボットのことです。今
  から50年以上も前、1960年にワイゼンバウムが作成し
  たELIZA(イライザ)が最初とされています。
   ELIZAがどういったものかというと、例えば、「頭が
  痛い」とイライザにいうと「なぜ、頭が痛いとおっしゃるの
  ですか?」などと返してくれるというものです。その他にも
  「母は私を嫌っている」と言えば「あなたの家族で他にあな
  たを嫌っている人は?」などと、登録されている範囲内で返
  答してくれるものです。
   ELIZAの特徴は、あらかじめ登録されていない言葉な
  どを言われた場合は定型的な返答をし、また、会話の脈略ま
  では把握できないことです。これはつまり、言語処理のプロ
  グラミングのことですね。「おはよう」と言われれば「おは
  よう」と返す。「元気?」と「元気だよ」と返す。
   「今度発売されるクルマの乗り心地はどうかな?」とあら
  かじめ登録されていない質問をされた時は「その質問にご興
  味があるんですね?」などと当たり障りのない返答をする。
  こういったプログラムされたものが人工無脳です。昔はこう
  いった自然言語処理プログラムも人工知能と呼ばれておりま
  したが、最近は少し定義が変わってきています。
                  https://bit.ly/2KVT3QY
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posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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