2018年06月22日

●「GPUはどのように誕生したのか」(EJ第4791号)

 コンピュータとは何でしようか。「コンピュータ」という言葉
を聞いて、何を連想するでしょうか。
 多くの人は、PC(パソコン)やスマホやタブレットを連想し
ます。なぜなら、自分のごく身近にあるコンピュータであるから
です。もっともスマホをコンピュータであるとを認識していない
人もいます。しかし、多くの場合、スマホは、PCよりも高性能
なコンピュータなのです。スマホは5年前のスパコンに匹敵する
ともいわれています。それに現在のスマホには、AI機能まで搭
載されています。
 しかし、これからは、コンピュータの定義を次のようにすべき
ではないかと思います。
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      コンピュータとはCPUそのものである
─────────────────────────────
 スーパーコンピュータというと、多くの人は、いわゆるPCな
どは違う、何か特殊な構造を持つ大型のコンピュータをイメージ
しますが、基本構造は、普通のPCと変わらないコンピュータな
のです。
 日本には「京(けい)」というスーパーコンピュータがありま
す。年に2回、その処理速度を計測して上位500位を発表する
「TOP500」ランキングで、「京」は、2011年において
2期連続で1位を獲得した高速コンピュータです。
 少し専門的にいうと、「京」は、CPUを8万8128個搭載
し、整数の計算よりも処理に時間のかかる浮動小数点演算と呼ば
れる計算を毎秒1京510兆回実施できるコンピュータです。こ
れは、2011年の演算レベルですから、現在ではもっと高速に
なっている可能性は十分あります。
 このように、スーパーコンピュータは、CPUを8万個以上搭
載しているものの、基本的にはPCと変わらないのです。極端な
ことをいえば、企業の終業後のPCを複数並列に接続して計算し
ても基本的にスパコンに似た処理ができるのです。「京」は、汎
用のCPUを並列に搭載する「スカラー型」というタイプのスー
パーコンピュータです。
 このように、コンピュータの能力はCPUで決まるので、CP
Uはコンピュータそのものです。それでは、CPUとGPUはど
のように違うのでしょうか。
 どうしてGPUが登場したのかというと、PCのOSの変遷に
関係があります。CPUは、コンピュータの「頭脳」といわれま
す。コンピュータ上のあらゆる処理はCPUが行います。しかも
ムーアの法則に従い、CPUの高速化は1年半ごとに倍速のペー
スで進化したのです。
 しかし、CPUが扱うデータ量も急速に増加し、CPUの負担
は、年々増加する一方です。ひとつのきっかけは、1995年に
訪れたのです。
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        MS−DOS ・・・ CUI
       WINDOWS ・・・ GUI
─────────────────────────────
 1995年以前、1981年に発売のIBMの16ビットPC
「5150」──このPCに搭載されたOSが「PC−DOS」
(マイクロソフト社提供のMS−DOS)です。このOSは基本
的には文字ベースの「キャラクタ・ユーザー・インターフェース
/CUI」だったのです。
 しかし、DOS時代の後半にはCADなどの作業には、専用の
ハードウェアを用意してグラフィック処理を行っていますが、そ
れらの需要は限られたものだったのです。この時代がしばらく続
きます。この時代に個人がPCで扱うグラフィックス・データの
量はたいしたことはなく、若干の補助装置を付ければ、当時のC
PUでも十分に対応できたのです。
 ところが、1990年頃から、32ビットCPU搭載のPCが
出現します。1991年には「ウインドウズ3・0」搭載のPC
が登場し、「グラフィック・ユーザー・インターフェイス/GU
I」の時代が始まります。32ビットCPU時代の幕開けです。
このときから、PCの扱うグラフィック・データ量は激増するよ
うになり、CPUによるグラフィックスデータの処理負担はきわ
めて重くなります。
 「ウインドウズ3・0」──よほど専門的なユーザーでない限
り、このOSのことを当時知る人は少なかったと思います。その
後に出る「ウインドウズ3・1」は知っていても、このウインド
ウズを使った人は少ないと思います。当時明治生命情報システム
部の私のチームは、3・0のベータ版を入手し、さまざなアプリ
ケーションをテスト的に構築しています。そして、ウインドウズ
3・0の解説本も、チームで執筆しています。この準備があった
ので、生保業界で一番先にウインドウズを導入できたのです。
 1993年に「ウインドウズ3・0」の改良型「ウインドウズ
3・1」が登場し、それを踏まえて1995年に「ウインドウズ
95」搭載のPCが登場し、本格的なウインドウズ時代が始まる
ことになります。
 このときから、激増したCPUのグラフィック・データ処理の
一部を「グラフィック・アクセラレータ」というハードウェアで
処理するようになります。つまり、激増するグラフィックス・デ
ータの処理を、専用のアクセラーレータというハードウェアで肩
代わりするシステムが実現したのです。
 今になって考えると、これが後の「GPU」の開発に結びつい
てきます。PCのグラフィックス・ユーザー・インターフェイス
(GUI)の定着とともに、その後、動画や3Dグラフィックス
など、処理しなければならないグラフィックス・データ量は激増
し、その高速処理の実現が求められたのです。これはPCの根本
的なハードウェアの構造変化を促すことになります。
          ──[次世代テクノロジー論U/035]

≪画像および関連情報≫
 ●グラフィックカードってどんな役割をするの?
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   パソコンがディスプレイモニター上に映し出す映像は、文
  字や写真といった「2D(平面)映像」と、立体的な三次元
  コンピュータグラフィックス(3DCG)に代表される「3D
  (立体)映像」に大きく二分されます。(※ここでいう3D
  は、最近話題のメガネをかけて映像が飛び出てくる3Dとは
  別の話)。基本的に、2Dではあらかじめ用意された画像を
  映し出すのに対し、3Dでは縦・横・高さ・奥行きなどの位
  置情報から計算して映像を作り出します。その為、3Dの方
  が2Dよりも高度な処理を必要とし、より美しい3D映像を
  よりスムーズに描画するには、高性能なグラフィックス機能
  が必要となってきます。
   多少強引な説明となりますが、2Dを表示するためには、
  グラフィックスチップ(GPU)の性能よりも、VRAMと
  呼ばれる映像処理に使う、グラフィックスメモリの容量の方
  が重要となります。実は、フルHD解像度(1920×10
  80)を超える2048×1536もの高解像度な映像をフ
  ルカラー表示するのに必要なVRAM容量は16MBであり
  一昔前のパソコンでも十分な性能を持っています。このよう
  な状況から、現在のグラフィックカードは「3D映像を美し
  く高速に描画させるためのもの」と言っても過言ではないで
  しょう。では、3Dを使わない人にはグラフィックカードは
  不要なのか?という疑問が湧きますが、最近ではOSで3D
  機能を使用したり、グラフィックカードをグラフィックス処
  理だけでなく汎用的に利用する動きも広がりを見せているの
  で、グラフィックカードを搭載しなくても良いとは一概には
  言えなくなってきています。   https://bit.ly/2K8U9aM
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スーパーコンピュータ「京」.jpg
スーパーコンピュータ「京」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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