2018年06月15日

●「ワトソンの無期限無料試用の狙い」(EJ第4786号)

 2017年10月27日に、日本IBMは、ワトソンについて
次のアナウンスを行っています。
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 IoTのシステム構築には試行錯誤がつきもので、PoC(概
念検証)などでは試作や検証に時間がかかる傾向がある。そうし
た課題に対し、日本IBM、同社のAIプラットフォームである
ワトソンなどを開発者が無料で、かつ無期限に利用できるサービ
スを2017年10月27日から開始した。  ──日本IBM
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 このIBMのサービスは「IBMクラウド・アカウント」と呼
ばれます。これまでは、無料試用トライアルは30日に限定され
ていたものが、無期限に無料で利用できるようになったのです。
AIを試してみたい企業や個人のデベロッパーにとって、またと
ないチャンスが訪れたといえます。なぜ、IBMは、このかなり
思い切ったサービスに打って出たのでしょうか。
 これには、諸説がありますが、AI(人工知能)の分野におい
て先行していたはずのIBMが、優秀な人材を集め、集中的にA
Iに投資を行っているグーグルやマイクロソフト、フェイスブッ
クなどから遅れをとっているからであるといわれています。確か
に、これまでにIBMは莫大なコストをワトソンに注いでいます
が、目立った成果を上げられないでいるからです。
 それに、IBMはワトソンをグーグルなどで開発を進めるAI
とは別のビジネスシステムとして位置づけようとしているフシが
あります。10月27日のユーザーイベントで基調講演をしたエ
リー・キーナン日本IBM代表取締役社長は、世界を変える6つ
の技術として、@AI、AIoT、Bブロックチェーン、C量子
コンピュータ、Dニューロモーフィックコンピュータ(脳型コン
ピュータ)、E世界最小コンピュータの6つを上げ、コンピュー
タが現在、人間の生活を大きく革新しつつあると述べたうえで、
AIについて次のように述べています。
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 AIには、人々の生活を直接的に助けるAIと、ビジネスを支
援するAIがある。ワトソンはビジネスを助けるAIである。限
られたゲーム盤の上でさらにルールが固定化されたゲームとビジ
ネスの世界は大きく異なる。AIをビジネスで活用するためには
業界用語や文脈、ワークフローをAIが理解できないと難しい。
ワトソンは、すでに医療現場で医者の診断を支援するサービスを
開始しており、ビジネスの世界で実績がある。他のAI技術では
そういう実績はまだない。      https://bit.ly/2t6IQFG
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 これでわかるように、IBMは、ワトソンをグーグルなどが主
導する、いわゆるAIとは別のものであるとしているようです。
ワトソンは既に業務に役立つレベルに達しており、さらに多くの
成功事例を生み出そうとして「IBMクラウド・アカウント」を
スタートさせたものと考えられます。
 その成功事例を担っているのは、ワトソンの展開において日本
のパートナーとしてIBMに協力してきたソフトバンクグループ
です。10月27日のユーザーイベントで、日本IBMエリー・
キーナン社長に続いて登壇したソフトバンクの代表取締役社長兼
CEOの宮内謙氏は、EC(電子商取引)の市場規模が200兆
円以上になっているが、これからの10年間は、それよりももっ
と大きな変化が起きるとして、テクノロジーによる企業の成長戦
略の可能性について、次のように述べています。
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 成長戦略を描くうえで、考えなければいけない3つの経済変化
として、「コネクテッドエコノミー」
    「シェアリングエコノミー」
    「スコアリングエコノミー」を挙げる。
 コネクテッドエコノミーは、通信により人と人がつながり、場
所も時間を選ばないコミュニケーションができるようになったこ
とで生まれる価値を示す。今はこれがさらに広がり、人だけでな
くモノもつながることができる。
 さらにこのコネクテッドエコノミーを土台として、完全にモノ
の管理が行えるようになったことで、シェアリングエコノミーが
生まれた。カーシェアリングや自動車シェアリングなどのほか、
ウーバーなどの自動車配車サービスなどもこれに当たる。
 さらに、あまり注目されていないが、今後重要になることにス
コアリングエコノミーがある。コネクテッド化により、モノの完
全な管理が可能となることで、例えばシェアされた自動車をどの
ような使い方をしているのかが把握できる。
そこで利用者がスコアリングされるような状況が生まれる。これ
らはさらにさまざまな産業に広がっていき、新たなチャンスを生
み出すだろう。           https://bit.ly/2t6IQFG
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 ソフトバンクでは、AIを活用した革新的企業との協業や出資
などを展開しています。その分野としては、セキュリティ、ライ
ドシェア、医療、自動運転、ロボット、半導体、室内農業、産業
IoTなど、多方面に及んでいます。
 日本IBMは、「IBMクラウド・アカウント」のサービス開
始を機会にワトソンのユーザーを一挙に増やすことを計画してい
ます。日本IBM三澤智光取締役は次のように述べています。
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 ワトソンの国内での展開は既に350社以上におよんでいるが
日本語APIを自由に触りたいという声が非常に多かったので、
今回「IBMクラウド・アカウント」を用意した。より多くの開
発者にさまざまな形で触れてもらうことが重要だと考えている。
 ──日本IBMクラウド事業本部長/三澤智光取締役執行役員
                  https://bit.ly/2JO4GVe
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          ──[次世代テクノロジー論U/030]

≪画像および関連情報≫
 ●「IBMクラウド・アカウント」の価値
  ───────────────────────────
   今回リリースされた「IBMクラウド・アカウント」は、
  利用期間に制限がない。使用料金が発生することがないため
  クレジットカードなどの登録も不要だ。これまでのフリート
  ライアルは30日間の期間限定だったが、今度はじっくり試
  すことができる。また、学生などでクレジットカードを所持
  していない人とっても利用のハードルが下がったことは大き
  な意義がある。
   しかし、有料プランと比較した場合、当然ながらいくつか
  の制約が存在する。利用可能な組織・地域とも各1つ。CF
  メモリが256MB、主要サービスはライトプランのみで、
  インスタンスもプランごとに1つといった機能面の制限。そ
  して、10日間の開発停止でアプリが停止し、30日間の活
  動停止でサービスが削除される。これらの制限は実際の開発
  において、どれほどの障壁となるのか。また、無料化におけ
  る社会的な意義や今後、どんな可能性を秘めているのか。
   川合氏は「ストーリーAI」と呼ばれる、物語における感
  情の動きをビジュアライズするAIの開発者。現在はアルゴ
  リズムの強化と商用化に向けたサービス開発を行っている。
   「私が開発するストーリーAIは、物語における感情の振
  れ幅と時間軸(X軸)と感情軸(Y軸)でビジュアライズし
  表現するものです。物語の登場人物たちがストーリー中にど
  のような感情を抱いているのかをテキストから理解し、物語
  の盛り上がりを判断するアルゴリズムをつくりました」。
                  https://ibm.co/2lcG7ad
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宮内謙ソフトバンク社長兼CEO.jpg
宮内謙ソフトバンク社長兼CEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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