にします。AI(人工知能)というのは、基本的には人間の脳の
働きと同じことをコンピュータに行わせるテクノロジーのことで
す。このような考え方に基づいてAIを定義すると、次のように
なります。
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AI(人工機能)とは、インプットに対して、人間がするよ
うなアウトプットを行う装置のことである。
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コンピュータの性能が低い時代のAIは、少ない計算量で、人
間らしい振る舞いをさせる、たとえば、インプットに対するアウ
トプットの「ルール」を予め人間が決めておいたり(ルールベー
スのAI)、あるいは、インプットされた情報を統計確率的推論
によるアルゴリズムで精度の高いアウトプットを得る(統計・確
率的なAI)などが、これまで試みられてきています。
しかし、インプットとアウトプットの間のブラックボックスの
部分を、人間自身がコンピュータに与えている限りにおいては、
いつまで経ってもAIが人間を超えるアウトプットを出せる存在
になることは困難です。コンピュータ自らが、自動的に知識を獲
得し、人間のように思考して、人間のようにアウトプットする存
在になって、はじめて人間を超えることができるのです。
そうであるとすると、AIの研究は、原点に戻って人間の脳を
シミュレートする「脳科学に基づくAI」にならざるを得ないの
です。事実これまでのAIの歴史はそうなっています。
仕事というものを人間がやれるかやれないかで分けて、AIと
の関係を考えてみます。
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1.人間しかできなかったこと
2.人間にはできなかったこと
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本来AIやAIを組み込んだスマートマシンは、上記「2」の
「人間にはできなかったこと」を可能にし、結果として人間の能
力を拡張することを目的としています。
たとえば、人間が一生かかっても参照できない量の学術文献や
判例などの法律文書をすべて読んで分析し、最適の解釈や判断を
示してくれたり、過去の犯罪記録の分析から犯罪の発生現場や内
容を予測し、それに基づいて指定された地域のパトロールを強化
することで検挙率を増やすことにより、犯罪の発生率を下げると
いったことなどが上げられます。
これに対して、どんな強力なコンピュータでもAIでは処理で
きない上記「1」の「人間しかできなかったこと」はたくさんあ
ります。自動車の運転や企業における一般的事務作業、人との応
対業務や営業業務などがそれに当たります。AIでこれらを可能
にすることができれば、それらをAIに置換することによって、
人間の能力を効率化することができます。
しかし、現代のAIは、上記「1」と「2」の両方ともできる
ようになりつつあります。これらのカギを握っているのが「脳科
学に基づくAI」の実現です。
「脳科学に基づくAI」のニューラルネットワークとは何かに
ついて考えます。
ニューラルネットワークは、神経回路網を意味する言葉で、人
間の知能をつかさどる脳を構造を模倣することで、その振る舞い
を再現しようとするタイプのAIです。科学ライターの大和哲氏
は、ニューラルネットワークを次のように定義しています。
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ニューラルネットワークは、簡単に言うと、コンピュータ内で
データとして、インプットが入ってからアウトプットが出てくる
まで、その間に重みづけのグラフが構築されていて、「問題」と
して入力されたデータは、適切なルートを通って「回答」である
アウトプットを出力します。
ここで言う“重み”とは、情報にとってどれだけ重要かを表し
た数値だと考えるといいでしょう。そして、ニューラルネットワ
ークの特徴は、このルートを通る間、情報がグラフ中の経路の重
み自体を、さらに軽くしたりあるいは重くしたりと、調整にも使
われる点です。つまりニューラルネットワークは、「経験から学
習する」人工知能であることが特徴のひとつです。
https://bit.ly/2xH3e5M
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これだけではピンとこないと思いますが、脳科学に基づくAI
の構造は次のようなものです。初期のニューラルネットワークで
ある「パーセプトロン」には情報の入力層と出力層から成る2層
であったのに対し、現在のニューラルネットワークは、入力層と
出力層の間にいくつもの「隠れ層」といわれるものがある多層構
造になっているのです。これが「ディープ(深層)」といわれる
ゆえんです。
多層にすると、入力層からインプットされた情報は、出力層か
らアウトプットされるまで、いくつもの隠れ層にインプットされ
何らかの処理をこ施されてアウトプットされることの繰り返しで
最終的に出力層からアウトプットされます。そのようにいくつも
の層を経過することによって、初期情報が何らかの上位概念を形
成していくと考えられるのです。
人間の場合、目や耳から入力された情報がアウトプットされる
までの処理のプロセスはいわゆるブラックボックスであり、脳が
どのような処理を行ったかは不明です。これに対してこれまでの
AIは、インプットからアウトプットまでの推論プロセスは説明
できるのです。ブラックボックスではないのです。これでは人間
を超えることはできないのですが、ニューラルネットワークでは
その意思決定プロセスはわからなくなってきています。それだけ
現代のAIは、人間の脳に大きく近づいてきているといえます。
──[次世代テクノロジー論U/024]
≪画像および関連情報≫
●数学知識もいらないゼロからのニューラルネットワーク入門
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これまでに人工知能(AI)関連の記事を読んだことがあ
る人であれば、ほぼ間違いなく”ニューラルネットワーク”
という言葉を目にしたことがあるだろう。ニューラルネット
ワークとは、大まかな人間の脳の仕組みを模したモデルで、
与えられたデータを基に、新しい概念を学習することができ
る。機械学習の一分野であるニューラルネットワークこそ、
長く続いた”AI冬の時代”を終わらせ、新時代の幕開けを
告げたテクノロジーなのだ。簡単に言えば、ニューラルネッ
トワークは業界の根底を覆すような、現存するテクノロジー
の中でもっともディスラプティブな存在だ。
そんなニューラルネットワークに関するこの記事の目的は
読者のみなさんがディープラーニングについて会話ができる
ようになるくらいの理解を促すことにある。そのため、数学
的な詳しい部分にまでは入らず、なるべく比喩や、アニメー
ションを用いながらニューラルネットワークについて説明し
ていきたい。
AIという概念が誕生してからまだ間もない頃、パワフル
なコンピューターにできるだけ多くの情報とその情報の理解
の仕方を組み込めば、そのコンピューターが”考え”られる
ようになるのでは、と思っている人たちがいた。IBMの有
名な「ディープブルー」をはじめとするチェス用のコンピュ
ーターはこのような考えを基に作られていた。
https://tcrn.ch/2Ja4UtU
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ニューラルネットワーク


