2018年05月09日

●「日本はAIで周回遅れをしている」(EJ第4759号)

 現代は変化の時代です。それも、あらゆるものに半端でない大
変化が起きる時代です。常識が変化し、常識でなくなる時代とも
いえます。「変化」といえば、英国の自然科学者、チャールズ・
ダーウィンは、次の有名な言葉を残しています。
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 最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びる
 のでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者
 だけである。        ──チャールズ・ダーウィン
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 唯一生き残ることが出来るのは変化できる者だけである──残
念ながら、現在の日本は、その変化に十分に対応できているとは
いえないのです。とくに先端技術のAI(人工知能)分野の競争
力は、米国や中国と比べると大きく見劣りします。
 権威ある米国人工知能学会への2017年の論文投稿数は、中
国が全体のシェアの31%、米国も30%を占めたのに対し、日
本のシェアはたったの4%であり、投資額についても大きく水を
あけられているのが現状です。
 2018年5月3日付の日本経済新聞は一面のトップ記事に次
のタイトルをつけています。
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   日本の研究開発見劣り/企業投資アジア・米急伸
     ── AI分野など競争力に懸念 ──
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 このような記事が出ると、日本はいかにも研究開発費を投入し
ていないと思われますが、総額でみると、日本は世界第3位なの
です。2015年の数字では日本全体の研究開発費は1800億
ドルで、米国の5000億ドル、中国の4100億ドルに次いで
世界第3位を占めています。しかも、GDP比では、3・6%で
米国の2・6%、中国の2・1%を抑えてトップであり、日本は
依然として「研究開発大国」の地位を堅持しています。
 それなら、何が問題かというと、研究開発の土台である基礎研
究に十分な資金が配分されていないことです。それと、選択と集
中が十分ではないことです。重要なものには他を削っても大量の
資金を投入する努力が足りないのです。
 2017年度の世界企業研究開発費の投入額ベスト10は次の
通りですが、10年前の2007年と比較すると、大きく様変わ
りしています。
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  1位:アマゾンドットコム(米)   226.2億ドル
  2位:アルファベット(米)     166.2億ドル
  3位:サムスン電子(韓)      131.8億ドル
  4位:インテル(米)        131.4億ドル
  5位:フォルクスワーゲン(独)   131.0億ドル
  6位:マイクロソフト(米)     122.9億ドル
  7位:アップル(米)        115.8億ドル
  8位:ロシュ(スイス)       105.5億ドル
  9位:ジョンソン&ジョンソン(米) 103.8億ドル
 10位:トヨタ(日)          95.8億ドル
            2018年5月3日付、日本経済新聞
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 ちなみに10年前の2007年のトップはGMです。3位にト
ヨタ、5位にフォードというように自動車が上位を占め、それに
次いでジョンソン&ジョンソンが2位、ファイザーが4位、ロシ
ュが7位と、医薬品が上位を独占していたのです。これに対して
ICT分野はマイクロソフトが6位に入っただけの劣勢です。
 しかし、2017年になると、1位から4位はICTが独占し
ています。自動車は5位にフォルクスワーゲン、10位にトヨタ
が辛うじて入るなど自動車が劣勢になり、医薬品も8位以下の下
位に押しやられています。
 トッブのアマゾンドットコムは、226億ドルと、10年前の
28倍であり、アマゾンのAIの開発要員は5000人の規模に
達しています。ちなみに、アルファベットというのは、グーグル
及びグループ企業の持ち株会社です。
 アジアでは、世界3位の韓国のサムソン電子と、ベスト10で
はないものの、中国の電子商取引のアリババ集団の伸びが目立っ
ています。アリババは、米国、中国、ロシアなど7ヶ所に配置し
た研究施設で、AIの研究開発を実施しています。今後3年間に
150億ドルの資金を投入すると発表しています。これに対して
同じアジアの日本は、世界100位までに入る日本企業は17社
10年前の24社から大きく減少しています。
 それにしても驚くべきは米国企業の強さです。10社中6社が
ベスト10に入っています。米国では約8年で企業が育つといわ
れています。とにかくスピードが早いのです。
 グーグルは、1996年に、同社の検索エンジンの原型になる
「バックラブ」が開発されてから8年後の2004年にナスダッ
クに上場しています。その2004年に創業したフェイスブック
は、8年後の2012年にやはりナスダックに上場しています。
 まだあります。2008年にはエアビーアンドビー、2009
年にはウ―バーが創業していますが、8年後の2017年〜18
年には、いずれも超大企業に成長しています。
 このペースでいくと、2017年から2018年に設立された
AIやVRのICT企業が8年後の2025年頃に大企業になる
可能性があります。これに対して日本は、トヨタ、パナソニック
ソニーと昔の名前ばかり。トヨタこそベスト10に入ったものの
パナソニックは10年前の15位から36位、ソニーは18位か
ら35位と半導体などの多額の経費のかかる事業から撤退してい
るし、東芝にいたっては半導体メモリー事業を売却しようとして
います。安倍首相はAIに力を入れるといいますが、日本政府の
AI投資額は20%以下、民間では10%以下です。
          ──[次世代テクノロジー論U/003]

≪画像および関連情報≫
 ●日本企業がAIで周回遅れになった理由/田原総一朗氏
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   2017年6月2日の日本経済新聞朝刊1面に「世界の株
  時価総額最高」という記事が載った。投資マネーが株式市場
  に流れ込み、5月末の世界株の時価総額が76兆ドルとなり
  2年ぶりに最高を更新したという。
   牽引役はアップル、グーグルの親会社であるアルファベッ
  ト、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムといった米国
  のIT企業だ。日経新聞もこの記事で指摘しているように、
  時価総額の上位には日本企業が全く見当たらない。1〜8位
  が米国企業で占められ、9位にテンセント、10位にアリバ
  バと中国企業がランクインした。
   日本勢は全く振るわない。10年前(2007年5月末)
  は、10位にトヨタ自動車が入っていたが、今回は38位ま
  で後退した。時価総額だけではない。今、最も投資を呼び込
  んでいるAI(人工知能)開発においても、日本勢は完全に
  出遅れてしまったと言っていい。
   なぜ、こんなことになったのか。
   今、僕はAIの取材を進めている。その中で、AI研究の
  第一人者である東京大学大学院工学系研究科の松尾豊特任准
  教授に話を聞く機会があり、「なぜ、日本はAI時代に出遅
  れてしまったのか」と尋ねた。彼の答えは以下のようなもの
  だった。            https://nkbp.jp/2JTJ35R
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チャールズ・ダーウィン.jpg
チャールズ・ダーウィン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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