2018年05月08日

●「なぜ国会にPCが持ち込めないか」(EJ第4758号)

 はっきりしていることがあります。それは日本が「ICT後進
国」であることです。それは、国会において、現代社会では信じ
られないような古い慣習や規則が根強く残っており、それらを変
更しようとする動きがないことから、そういえると思います。
 自民党の小泉進次郎議員によると、国会会議場や国会内の諸会
議では、PCやスマホを持ち込めないそうです。確かにそういわ
れてみると、国会の会議場や各種委員会で、PCを広げている人
やスマホを見ている人はいないように感じます。
 調べてみると、現在の国会では、衆議院規則215条、参議院
規則211条というものがあり、PCやスマホなどの持ち込みが
事実上禁じられています。
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 議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を
閲読してはならない。──衆院規則216条/参院規則211条
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 この規則の意味は「議事に関係のある書類を除き、議事に関係
のない新聞、書籍等は閲読してはならない」ということになりま
す。要するに、会議中に関係のない新聞や書籍などを読んではな
らないといっているのです。その趣旨はよく理解できます。「会
議」に参加しているときは、それに集中せよという当たり前の常
識を述べているからです。
 問題は、ここでいう「新聞紙、書籍等」の概念のなかに、電子
文書が考慮されておらず、PCやスマホも見てはいけないことに
なっている点です。つまり、会議中に議事と関係のないスマホを
見たり、関係のないPCの画面を見ることは、やるべきことでは
ありませんが、これを禁ずることは、まるで学校の校則に等しく
国会議員に強いることではないと思います。
 しかし、議事に関係のあるウェブサイトを参照したり、議事を
PCやスマホでメモしたり、送られてきたメールを見るぐらいの
ことはしてもよいのではないかと思います。しかし、そういうこ
とは一切禁止されているのです。
 安倍政権の2014年4月25日の参院外交防衛委員会でのこ
とです。小松一郎内閣法制局長官(故人)が、スマホの画面を見
ながら答弁し、問題になったことがあります。おそらく答弁の要
点が、メモとして、スマホに電子文書として書き込まれていたも
のと思われます。
 ところがこれが大問題になったのです。民主党の斎藤嘉隆氏は
小松一郎長官の行為について、参院予算委員会で安倍首相に質問
したところ、安倍首相は次のように答弁しています。
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 携帯を持ち込んで、委員会と関係のない会話をしたり、メール
を見たりということは明らかに委員会の権威を汚すことであり、
やってはいけないということになっています。それに近い行為を
したということで注意を受けたことは、小松長官は反省しないと
いけない。
 しかし、小松長官は国会の答弁に関わることについて、一緒に
いた人の携帯のメールを紹介したという次第ですので、今後たと
えば、iPadなどを活用した方が、議論において活性化される
ことがあるかもしれないと申し上げた次第であります。
                       ──安倍首相
─────────────────────────────
 この安倍首相の答弁でわかることがあります。条文を読む限り
においては、議事に関係のある答弁をスマホに入れていただけの
ことであり、問題はないはずです。しかし、電子文書を文書とし
て認めていないため、これが問題になるのです。
 これに関して、東洋大学の山田肇教授は「ITを受け入れない
愚かな国会」というハフィントンポストのブログ(巻末の「画像
および関連情報」参照)で、次のように批判しています。
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 民間でIT機器を持ち込んで会議を進めるのは、それを利用し
て最新の情報を入手しながら議論しないと、間違った判断をする
恐れがあるからだ。事情は国会も同じはずだ。小松長官に謝罪さ
せるよりも、古色蒼然としたルールを改正し、審議にITを利用
するように、国会は動くべきである。 https://bit.ly/2HQzQue
                  ──東洋大学山田肇教授
─────────────────────────────
 今や民間企業では、会議でPCは不可欠のものになっており、
山田教授もいうように、必要に応じて関連ウェブサイトを参照し
たりすることは、当たり前になっています。G7やG20、国連
の会議などでは、ごく当たり前のようにPCが使われています。
 このような時代に合わない国会規則がいつ決まったのか調べて
みると、1995年〜1996年の両院の議院運営委員会におい
て定められています。衆議院の議場では、携帯電話やポケベルが
使用禁止。参議院ではそれに加えて、PC、ワープロ、ラジオ、
録音機などに類する機器の使用が禁止されています。ここでワー
プロというのは、ワープロ専用機のことです。
 1995年といえば、PCはほとんど普及しておらず、ネット
も使われていなかった時代です。もちろん、携帯電話も、まだな
かったのです。そんな時代にできた両院の国会規則を、なぜまだ
後生大事に守っているのでしょうか。
 安倍首相も「今後たとえばiPadなどを活用した方が、議論
において活性化されることがあるかもしれない」とまで発言して
いるのに、その後まったく動いていません。安倍一強といわれる
安倍政権というのは、そんなことすらできないのでしょうか。
 小泉進次郎議員もポリテックを主張する前に、この古色蒼然た
る国会規則を撤廃することの方が先ではないでしょうか。
 確かに、国会には古色蒼然たる議員がまだたくさんいます。も
ちろんPCは使えませんし、携帯電話すら持っていない人もいま
す。そういうエライ議員たちが反対するので、ICTが使えない
でいるのです。   ──[次世代テクノロジー論U/002]

≪画像および関連情報≫
 ●ITを受け入れない愚かな国会
  ───────────────────────────
   2014年3月25日の参院外交防衛委員会で、小松内閣
  法制局長官が携帯電話を見ながら答弁し、質疑が一時中断し
  たそうだ。時事通信によれば、法制次長に関する質問があっ
  たので、「今、質疑の中継を見ていた次長から、連絡があっ
  た」と長官が携帯画面を読み上げたという。この行為は、携
  帯電話を議場に持ち込んではならないという国会のルールに
  反し、長官は「大変重大な誤りだった」と陳謝させられたそ
  うだ。
   「馬鹿か」というのが僕の感想である。委員会の場にいな
  かった次長に関する質問に、短時間で答えようと努力した長
  官が、なぜ謝罪させられるのだろうか。参議院のネット中継
  アーカイブでは、該当部分は音声が消されており、確認する
  ことができなかった。これも理解できない。くだらないこと
  でもめていたと、国民に知らせたくなかったからなのか。
   民間では、パソコンや携帯を会議に持ち込むのは当たり前
  だ。国会ではパネルを掲げて質問するのが通例のようだが、
  なぜ、プロジェクタ−を用いてプレゼンテーションしないの
  か。動画も音声も再生できるから、より説得力を持って質疑
  ができるというのに。この件について国会議員に直接質問し
  たところ、1枚2万円でパネルの作成を請け負う業者がおり
  切り捨てるのがむずかしいからだと返事があったが、とても
  信じられない。国会では、こんな当たり前のIT利用もでき
  ないというのは、どうしてだろう。https://bit.ly/2rh6uim
  ───────────────────────────

東洋大学/山田肇教授.jpg
東洋大学/山田肇教授

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロージ論U | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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