2018年04月11日

●「なぜ安倍は放送法改正を目指すか」(EJ第4742号)

 このテーマの最後の論点として、このところ安倍政権が急に主
張しはじめている「放送法改正」を取り上げることにします。そ
の意図は何なのでしょうか。
 「放送法改正」──具体的には「放送法第4条の撤廃」なので
す。放送法第4条とはどういう条文でしょうか。
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(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送
等」という)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定める
ところによらなければならない。
 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二 政治的に公平であること。
 三 報道は事実をまげないですること。
 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角
度から論点を明らかにすること。
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 おかしな話です。もともと安倍政権は、この放送法第4条をタ
テにして、テレビ局にクレームをつけていたからです。これにつ
いては、1月16日のEJ第4683号から、1月23日のEJ
第4688号までにかけてご紹介しています。
 この放送法第4条を安倍政権は撤廃し、放送法を変えようとし
ています。安倍政権は一体何を狙っているのでしょうか。これに
関する安倍首相をはじめとする官邸の発言をいくつかひろってみ
ることにします。
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◎高市早苗前総務相(当時)
 ・行政が何度要請しても、全く改善しない放送局に何の対応も
 しないとは約束できない。将来にわたり(停波の)可能性が全
 くないとは言えない。──2016年2月9日/産経ニュース
◎安倍首相
 ・インターネットテレビには放送法の規制はかからないが、見
 ている人には地上波などと全く同じだ。日本の法体系が追いつ
 いていない状況で、電波での大きな改革が必要だ。
             ──2018年2月1日/毎日新聞
 ・(批判的な)TBSやテレ朝は報道じゃない。
         ──「週刊文春」/2018年4月12日号
◎今井尚哉首相秘書官
 ・テレビに政治的中立はないだろう。
         ──「週刊文春」/2018年4月12日号
                  https://bit.ly/2v3KrAh
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 今井尚哉首相秘書官とは何者でしょうか。
 黒澤映画に『隠し砦の三悪人』というのがあります。これに合
わせて「官邸の隠れ三役人」とよくいわれます。三役人とは次の
3人であり、そのなかに今井秘書官は入っています。
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        1.杉田和博内閣官房副長官
        2.  今井尚哉首相秘書官
        3.   北村滋内閣情報官
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 この3人は政治報道にはまず現れることはないです。しかし、
この3人が安倍政権の裏を知り尽くし、政権を動かしているとい
っても過言ではないのです。なかでも今井尚哉首相秘書官は、閣
僚を超える権限を有していて、今回の放送法改正のペーパー作成
も今井秘書官が担っているとされています。
 これらの発言に関しての異論や反論やコメントをいくつか集め
てみると、次のようになります。
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◎野田聖子総務相
 ・仮に4条が撤廃されれば、公序良俗を害するような番組や、
 事実に基づかない報道が増加する。
◎石破 茂自民党元幹事長
 ・報道のあり方は、健全な民主主義にとって極めて大事なこと
 だと思っていて、放送法4条の改正は慎重であるべきだ。正し
 い民主主義のあり方とは何なのかを議論していきたい。
         ──2018年4月5日/朝日新聞デジタル
◎岸田文雄自民党政調会長
 ・放送法の役割、この政治的な公平性とか、公序良俗の維持と
 か、さまざまな役割があるといわれています。慎重に議論すべ
 きものではないか。──2018年4月5日/TBSニュース
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 放送法改正の根っこには、いわゆる「放送と通信の融合」の問
題があります。2月23日のEJ第4710号で、安倍首相がア
ベマTVの「徹の部屋」(一番会いたい人物と本音トーク)に出
演したことを取り上げましたが、そのとき、安倍首相は自説を思
い切り話して、とても気分がよかったのだと思います。しかも、
それは昨年10月の総選挙前のことです。
 この体験によって、安倍首相はネット番組を高く評価するよう
になったものと思われます。ちなみに、ここで「徹」とは、熱烈
な安倍応援団の一人である見城徹幻冬舎社長のことです。
 しかし、その見城氏でさえも放送法改正には「無茶な構想」と
疑問を呈しています。
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◎見城徹幻冬舎社長
 ・僕の想像ですが、安倍さんは報道ステーションやサンデーモ
 ーニングが気に食わないのでしょう。しかし、それとこれとは
 話が別だと思います。
         ──「週刊文春」/2018年4月12日号
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/066]

≪画像および関連情報≫
 ●放送法第4条撤廃案/首相、批判報道に不満か
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   政府が検討中の放送制度改革案は、政権とマスコミの関係
  を変えかねない。表向きは放送と通信の垣根をなくして魅力
  的な番組を作りやすくし、業界を活性化するのが目的だが、
  政権に批判的な報道への安倍晋三首相の不満が垣間見える。
  「今はネットでテレビのニュース動画も流れている。同じこ
  とをやっているのにテレビだけ規制があるのはおかしい」。
  首相官邸幹部は、首相の放送法4条撤廃の考えをこう代弁す
  る。安倍政権下では、4条の「政治的公平」原則をテコに民
  放がけん制されてきた。2014年衆院選では自民党が民放
  とNHKに「要望書」を提出し、選挙報道での「公平中立、
  公正」を求めた。直前のTBS番組で、景気への厳しい声が
  相次ぐ街頭インタビューをスタジオで見た安倍首相が「全然
  (評価する)声が反映されていない。おかしいじゃありませ
  んか」と反発していた。16年2月には高市早苗総務相(当
  時)が、政治的公平性を欠く放送局に電波停止を命じる可能
  性に言及し、首相が追認した経緯もある。
   一方、首相はネット番組には好意的だ。昨年の衆院選の際
  は「アベマTV」に約1時間出演。その後、今年1月31日
  には楽天の三木谷浩史会長兼社長が代表理事の新経済連盟の
  新年会であいさつ。ネット出演を振り返り「双方向でいろん
  な意見があり面白いなと思った。見ている人には地上波と全
  く同じだ。法体系が追い付いていない」と語った。内閣府の
  規制改革推進会議のワーキンググループで放送制度の議論が
  始まったのはその直後の2月7日だった。
                  https://bit.ly/2pK4nmK
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今井尚哉首相秘書官.jpg
今井尚哉首相秘書官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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