決裁文書を財務省が改ざんした疑いによって国会が止まっている
からです。これは、今回のテーマそのものではありませんが、メ
ディアのあり方にも関係するので、考えてみることにします。
これは、「安倍首相VS朝日新聞」の最終戦争といわれていま
す。安倍首相による国会などでのあまりにも露骨な朝日新聞批判
に対するメディアとしての報復のように見えるからです。
1月24日のEJ第4689号でも取り上げた2冊の保守系雑
誌があります。安倍政権を熱烈に支援し、それに反対を唱えるも
のを徹底的に攻撃する雑誌です。その最新号である4月号の表紙
を添付ファイルにしてあります。両誌は別の出版社ですが、4月
号の両誌のトップ記事は次の通りです。
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◎『月刊/Hanada』/2018年4月号
・総力大特集/「赤っ恥、朝日新聞」
「言論の矜持」はどこへ 櫻井よしこ
哀れ!朝日新聞の自殺 小川栄太郎
「誤報して逆上」は昔っから 高山正之
◎『月刊WiLL』/2018年4月号
・やはり逃げたか、朝日論説主幹
櫻井よしこ/川村二郎
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両誌はいずれも朝日新聞を取り上げ、激しい言葉で批判してい
ます。両誌の朝日新聞批判はほぼ常態化しており、朝日新聞とし
ては面白くないでしょう。両誌はそうすることによって、安倍政
権を支援しているのです。いわば「安倍首相大好き雑誌」です。
一方、安倍首相は、国会で朝日新聞を名指しして、批判してい
ます。一国の首相が特定新聞社を名指しして、批判するのは異例
中の異例です。2018年2月20日付、毎日新聞(電子版)は
それを次のように伝えています。安倍首相の発言は、両誌の特集
にもリンクしています。
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安倍晋三首相が先月末から国会の答弁で5回、学校法人「森友
学園」問題に絡んで朝日新聞批判を展開した。自民党参院議員の
フェイスブックにも朝日新聞を「哀れ」と書き込んだ。首相が公
の場などで特定の報道機関のバッシングを続けるのは異例だ。識
者は「首相は自分に都合のよい事実を切り取って自身への批判を
すり替えている」と指摘する。 【青島顕、川名壮志】
http://bit.ly/2EGLlqK
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なぜ、朝日新聞は、このように批判されるのでしょうか。それ
には、2人の「吉田」に関わる報道の失敗、それも大失敗がある
からです。不思議なことに、2人とも奇しくも「吉田」という人
物なのです。2人の「吉田」とは次の通りです。
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吉田清冶氏 ・・・ 吉田証言 ・・・ 慰安婦問題
吉田昌郎氏 ・・・ 吉田調書 ・・・ 福島第一原発事故
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この2つの報道によって、朝日新聞は今も責められています。
「吉田調書」については、報道のあり方に関係するので、後で取
り上げて論評する予定です。
これら2つの報道の失敗があるとしても、なぜ安倍首相は今国
会でわざわざ朝日新聞を名指しして批判するのでしょうか。最近
朝日新聞が、何か安倍政権にとって不都合なことをして、それを
批判するならわかりますが、持ち出してくるのは、すべて過去の
ことばかりです。それを前掲の保守系の2つの雑誌が記事として
取り上げ、コトを大きくするのです。異常ですらあります。リテ
ラの記事に次のような記述があります。
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総理大臣がいちメディアを国会で吊し上げるなど、言論機関を
萎縮させる圧力行為としか言いようがないが、その批判の中身が
またひどかった。なんと安倍首相は、1989年に起こった珊瑚
事件をもち出し「(朝日は)なかなか謝らなかった」と言うと、
今度は福島第一原発事故での吉田調書や従軍慰安婦問題における
吉田清治証言を取り上げ、「吉田所長の調書。これも最初は全然
謝らなかった」「吉田清治の証言にいたってはですね、これはま
さに日本の誇りを傷つけたわけであります」と主張したのだ。
いったいこの男はいつまで同じインチキな印象操作を続けるつ
もりなのか。本サイトで何度も書いているが、従軍慰安婦の強制
連行をめぐる吉田証言は朝日新聞だけの誤報ではない。産経や読
売、毎日も吉田氏を記事で紹介しており、産経は「被害証言がな
くとも、それで強制連行がなかったともいえない。吉田さんが、
証言者として重要なかぎを握っていることは確かだ」とまで書い
ていた。 http://bit.ly/2BZiQ62
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吉田証言にしても、吉田調書にしても朝日新聞は正式にその非
を認め、謝罪しています。謝罪では済まないことであるとしても
それをわざわざ首相が今国会で蒸し返し、批判することはないと
思います。本にでも書けばよいことです。
しかし、さすがの朝日新聞も、今国会での安倍首相の度重なる
批判には我慢の限界を超えたようです。そういう2月のある日、
朝日新聞の幹部が、国会議員OBに会ったとき、次のようなこと
を話したそうです。
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自分たちはそれなりにやってきたつもりだが、国会の委員会で
の安倍首相の名指し攻撃は度を越している。そこまでやるなら、
こっちも腹を決めて勝負に出る。森友学園問題に関して隠し玉が
ある。 ──2018日3月5日発行/日刊ゲンダイ
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──[メディア規制の実態/045]
≪画像および関連情報≫
●月刊誌の『朝日新聞批判』が毎月のように続く理由
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ジャーナリストの田原総一朗氏はメディアの「朝日新聞批
判」の訳を説く。「月刊Hanada」や「月刊WiLL」
などの雑誌が毎月のように朝日新聞攻撃の大特集を展開して
いる。もちろん言論、表現は自由だから、朝日新聞批判を行
うのは何の問題もない。だが、毎月のように朝日新聞批判を
まるで目玉企画としているのは尋常ではない。それほど新し
い展開はないにもかかわらずだ。つまり、朝日新聞批判を目
玉とすると雑誌が売れるということなのだろう。
両誌が朝日新聞批判を大きく報じ始めたのは、森友・加計
疑惑などが生じて、安倍内閣の支持率が落ち始めたころから
である。そもそも朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などは、安
倍首相が「戦後レジームからの脱却」を唱え、東京裁判批判
を展開したころから批判的だった。安倍首相が「ナショナリ
スト」で、いわば「歴史修正主義」ではないか、ととらえた
からだ。
2013年12月に安倍首相が靖国神社に参拝すると、中
国・韓国だけでなく米国も「失望した」と強く批判した。何
人もの首相が靖国参拝をしたが、米国が批判をあらわにした
のはこのときが初めてである。米国も、安倍首相が「歴史修
正主義」ではないか、と疑ったのだ。
安倍首相はその後、靖国参拝はしなくなったが、特定秘密
保護法や集団的自衛権の行使容認など、それ以前の歴代首相
がタブーとして避けてきた法案を次々に成立させて、野党は
もちろん、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞などは強く批判し
続けた。いわば、反安倍首相的な姿勢をはっきり示すように
なった。 http://bit.ly/2p26T6k
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朝日新聞を攻撃する2月刊誌