2018年03月08日

●「メディアが安倍政権に過度に忖度」(EJ第4719号)

 2016年2月4日のことです。衆院予算委員会において、民
主党の階猛議員(当時)が、安倍首相に対し、安倍政権を批判し
た報道番組のキャスターが次々と降ろされている事実を踏まえて
自民党の憲法改正草案について、次のように質問したのです。
─────────────────────────────
 表現の自由を制限し、言論機関を萎縮させていないか。言論機
関が、権力者の意向を忖度し、権力者への批判を控えるようにな
るのではないか。こういったことは民主主義の健全な発展にとっ
てマイナスである。          ──民主党/階猛議員
─────────────────────────────
 これに対して安倍首相は、少し憤然として、「日刊ゲンダイ」
を例に取り上げて、次のように答弁しています。
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 現在、まるで言論機関が萎縮しているかのような表現があった
が、全くしていない。今日、帰りにでも「日刊ゲンダイ」を読ん
でみてくださいよ。これが萎縮している姿ですか。全く萎縮して
いない。むしろ言論機関に対して失礼だ。    ──安倍首相
                   http://bit.ly/2H2bwFd
─────────────────────────────
 確かに「日刊ゲンダイ」のタイトル表記は、次のようにかなり
ストレートで、過激な表現です。
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◎データ捏造ぐらい朝飯前/一時が万時ペテン内閣の欺瞞政治
        ──2018年2月21日発行/日刊ゲンダイ
◎安倍首相よ どのツラ下げて改憲、3選?
        ──2018年3月 2日発行/日刊ゲンダイ
─────────────────────────────
 確かに、他のメディア規制国で、これほど露骨な政権批判はで
きないと思います。そういう意味では安倍首相の答弁にも一理あ
るといえなくもありません。
 安倍政権に批判的な立場をとる田原総一朗氏は『週刊朝日』の
コラムで、安倍政権による一連のメディア規制について、次のよ
うに述べています。
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 私は、安倍政権により「政府の圧力」が強まったというより、
放送局の体質が脆弱になったのだととらえている。「圧力」では
なく、放送局の自己規制によって番組が無難化しているのであり
気骨があって評価されていたキャスター3人が、いずれも3月末
に降板したのも、放送局の自己批判であった。──田原総一朗氏
                   http://bit.ly/2oNKI3T
─────────────────────────────
 安倍首相は異常なほど自身が批判されることを嫌います。国会
での答弁でも、少しでもヤジられると、それを気にしてイライラ
するタイプです。そのため、批判されないように、メディアのト
ップとコンタクトし、協力を得ようとします。しかし、それでも
批判するメディアに対しては、強く要望したり、さまざまな圧力
をかけようとするのです。
 それを受け入れるメディアが多いのです。それが自主規制とい
うか、忖度というか、メディアの方が政権の要望を受け入れてし
まう傾向が強いのです。それを田原氏は、「放送局の体質が脆弱
になった」と嘆いているのです。それにしても、メディアは安倍
政権に譲り過ぎであると思います。いいなりです。
 米国のトランプ政権もメディアとは対立しています。しかし、
大統領は、特定メディアを「フェイクニュース」だとして批判し
ますが、メディアを規制しようとはしていません。米国のメディ
アは気骨があり、政権の規制などに屈しないからです。
 これが、米国の43位に対し、日本の72位という報道自由ラ
ンキングにおける米国と日本の差になっているのです。「魚心あ
れば水心あり」というのが、安倍政権と日本のメディアの癒着関
係ではないかと思います。
 「国境なき記者団」は、ネット検閲や情報統制を行っている国
を調査し、それに該当する国家を「インターネットの敵」と呼ん
でいます。2006年から2014年までに「インターネットの
敵」と指定された国は次の通りです。幸いなことに、日本は入っ
ていないし、監視対象国にもなっていません。
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    ◎「インターネットの敵の各国」
     アメリカ合衆国    シリア
     アラブ首長国連邦   スーダン
     イギリス       中華人民共和国
     イラン        トルクメニスタン
     インド        バーレーン
     ウズベキスタン    パキスタン
     エチオピア      ベトナム
     北朝鮮        キューバ
     サウジアラビア       http://bit.ly/1QlTFXg
─────────────────────────────
 しかし、「インターネットの敵」でも、その監視対象国でもな
いということは、手放しで喜べないのです。なぜなら、それは、
「それだけのICT技術を持っていない」ということも、意味す
るからです。監視対象国は次の11ヶ国です。
─────────────────────────────
     エジプト       タイ
     エリトリア      チュニジア
     オーストリア     トルコ
     カザフスタン     フランス
     韓国         マレーシア
     スリランカ         http://bit.ly/1QlTFXg
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/043]

≪画像および関連情報≫
 ●2つのランキングを比較する
  ───────────────────────────
   国境なき記者団のランキングは日本の多くのニュース・メ
  ディアがセンセーショナルに報道したので、ご存知の方は多
  いと思う。先進国であるはずの日本が報道の自由度で180
  カ国中72位(前年61位)と、かなり低位にランクされた
  というニュースは、確かにインパクトがあった。
   一方、同時期に発表されたフリーダムハウスの報道の自由
  度については日本ではあまり報道されなかったので、知らな
  い人が多いかもしれない。グーグルトレンドのスコアでは、
  フリーダムハウスが国境なき記者団を圧倒するように、グロ
  ーバルな認知度ではむしろフリーダムハウスの方が高いとも
  言えるのだが、日本が全体の44位というフリーダムハウス
  の結果は良くも悪くもない印象で、ニュースとして扱うには
  平凡に過ぎたのだろう。
   フリーダムハウスのランキングは、ツバルやソロモン諸島
  等の小国を網羅し、国境なき記者団が一まとめに扱う東カリ
  ブ諸国機構(OECS)についてもその構成国をそれぞれ別
  個に評価していることから、実は評価対象が20カ国も多く
  両者を比較するにはまずここを調整しなくてはならない。両
  者がどちらもカバーする評価対象は179カ国。その中での
  日本の順位は、フリーダムハウスが33位、国境なき記者団
  は変わらず72位だ。72位VS44位でも、印象はかなり
  違ったが、72位VS33位となれば違いはさらに際立つ。
  ではどちらかの「報道の自由度」が偏っているのだろうか?
                   http://bit.ly/2oN7gSr
  ───────────────────────────

衆院予算委での階猛議員の安倍首相への質問.jpg
衆院予算委での階猛議員の安倍首相への質問
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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