先週のEJで日銀の隠語「焼き鳥」についてお話ししましたが
実際に行われた「焼き鳥」の例をひとつご紹介しましょう。
1995年12月のことです。かねてから三和銀行は、他行が
準備預金の積み立てが終り、コールレートが下がった頃を見計ら
って資金調達を繰り返していることについて他行から「金融村の
秩序を乱す」とクレームがきているので、日銀は三和銀行を「焼
き鳥」にしたことがあるのです。
さんざんいじわるをして「日銀貸し出し」をしたのですが、貸
し出しにさいして担保の積み増しという制裁を課したのです。三
和側は、制裁の早期解除を目指して接待を繰り返し、その見返り
として何とか早期解除を認めてもらったそうです。
1991年、東海銀行の不祥事にからんで日銀OBの幹部が処
分されたのを不満に思った日銀が、東海銀行に対する「日銀貸し
出し」を1000億円程度回収した例もあるのです。旧大蔵省と
いい、日銀といい、外務省といい、この国は本当におかしくなっ
ていると思います。
コール市場における資金の貸し手と借り手は、短資会社によっ
て結びつけられます。つまり、資金を借りたい銀行と貸したい銀
行を結びつける仲介の働きをする会社が短資会社です。短資会社
は、どの都市銀行にどけだけカネを配分するかの事実上の決定権
を握ります。
それでは、短資会社というのはどういう会社でしょうか。
短資会社は、国内で6社しかないのです。コール市場は東京、
大阪、名古屋の3ヶ所あります。とっても別に証券取引所のよう
な場所があるわけではなく、電話によって取引が行われる、いわ
ゆるテレフォン・マーケットです。
短資会社の名前と場所、それにランクは次の通りです。
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≪東 京≫ ランク
東京 短資 上位
日本 短資 中位
山根 短資 中位
≪大 阪≫
上田 短資 上位
八木 短資 下位
≪名古屋≫
名古屋短資 下位
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長い間、国内6社独占でやってきたのですが、1993年に日
英合弁の外国為替ブローカー、ハトリ・マーシャルが参入して国
内独占に風穴が空いたのです。
東京短資と上田短資は上位短資とランクされていますが、儲け
過ぎているという批判があります。上位短資は、会社の規模から
すると、異常に大きな内部留保を積み、みかけの利益をわざと小
さく操作しているという批判があります。
この国内6社すべてに代表権を持つ役員に日銀OBがいるので
す。日銀は平取締役まで含めれば、1社2、3人もOBを送り込
んでおり、短資業界は日銀の天下り業界と化しているのです。
これら6社がどのくらいの営業収益(手数料収入)を上げてい
るか、なるべく近い決算月で比較してみます。
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営業収益 決算月
東京 短資 260億3700万円 1996.11
日本 短資 212億1400万円 1996. 9
山根 短資 267億3100万円 1996. 5
上田 短資 219億1300万円 1997. 2
名古屋短資 74億2500万円 1997. 1
八木 短資 106億2300万円 1996.10
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これら6社の資本金がいずれも1億〜3億円であることを考え
ると、莫大な利益を上げていることがわかると思います。コール
市場の手数料は固定されていて、弱小短資が赤字にならない程度
に設定されているのです。
日銀の短資会社に対する保護措置は目に余るものがあります。
信用金庫関係者の話によると、愛知県の信用金庫は名古屋のコ
ール市場にしか資金を出せないのであるといいます。弱小の名古
屋短資を助けるための措置です。それでいて、静岡県の信用金庫
は、東京のコール市場に資金を出せるのです。
また、1997年11月に日銀は「債券貸借オペ」という新方
式のオペレーションを導入するさい、対象として30の金融機関
を選定したのですが、多くの都市銀行が選定から外れているのに
短資会社は6社とも全部対象になっているのです。債券貸借オペ
の実績のある都市銀行から不満が強まり、基準の公開が求められ
ていますが、日銀は基準を公表していないのです。
短資会社幹部が日銀幹部の接待をすることは日常茶飯事となっ
ており、その狙いは日銀の金融調節の情報の入手にあるとされて
います。収賄容疑で逮捕された吉沢容疑者の容疑事実の中にも接
待の見返りとして、「日本銀行の金融調節、他の市中銀行の動向
に関する機密情報の漏洩」が上げられていますが、金融市場の公
正さを守る日銀にとって考えられない不祥事といえます。
大蔵省の金融行政は護送船団方式として批判されましたが、日
銀も自分の庭先で似たようなことをやっているのです。外からよ
く見えない分、大蔵省よりも日銀の方がタチが悪いといえると思
います。その日銀が独立性を手にして、日本の金融政策は日銀が
握っているのです。 −−[円の支配者日銀/05]
2001年07月10日
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