2018年01月24日

●「岸井成格アンカー外しの意見広告」(EJ第4689号)

 保守系雑誌というものが何冊かあります。いずれも自民党、と
くに安倍政権を熱烈に支援する雑誌です。そのなかで、次の2つ
の雑誌は代表格といえます。
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       1.  『WiLL』/ ワック
       2.『Hanada』/飛鳥新社
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 これら2冊の雑誌は、広告などで見たことはあると思いますが
赤字に白抜きのデザインで、きわめてよく似ています。それに、
この2冊の雑誌は毎月同日に発売されるのです。何か意地で、張
り合っている感じです。何があったのでしょうか。
 もともとワックという出版社が発行している『WiLL』とい
う雑誌があり、元『週刊文春』の名編集長といわれた花田紀凱氏
が編集長を務めていたのです。
 ところが、2016年3月のことです。花田紀凱編集長がワッ
クの鈴木隆一社長と対立し、編集部員を丸ごと引き連れて飛鳥新
社に電撃移籍してしまったのです。そして、『WiLL』と内容
もデザインも同じような『Hanada』という雑誌を創刊した
のです。『WiLL』も陣容を立て直し、『Hanada』に対
抗して発刊を続けています。つまり、分裂騒動があったのです。
 これらの保守系雑誌は、自民党政権、なかんずく安倍政権を事
実上側面支援しています。その派手な広告を出すだけでも安倍政
権の効果的な支援になるのです。
 TBSの論客、岸井成格(しげただ)氏の「ニュース23」の
アンカー降ろしに一役買ったのは、これら2つの雑誌の常連ライ
ターたちです。そのきっかけは、安保法制です。2014年7月
1日の「集団的自衛権一部容認」閣議決定から、2015年9月
19日の安保法案成立に至るまで、「ニュース23」は、数知れ
ず特集を組んで、安保法案に警鐘を鳴らしたのです。そして、安
倍政権がどのタイミングで強行採決をするかという段階まで議論
が煮詰まってきた9月16日には、岸田氏は次のように発言し、
この法案に明確に「NO」を突き付けたのです。
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 メディアとして、廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきで
 ある。     ──岸井成格/「ニュース23」アンカー
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 これに反発した作家や有志の組織「放送法順守を求める視聴者
の会」なるグループが、2015年11月14日付の産経新聞朝
刊と、同15日付の読売新聞朝刊に、岸井成格氏によるテレビ番
組での発言に対して抗議する意見広告を掲載したのです。意見広
告の一部を添付ファイルにしてあります。
 共同呼びかけ人としては、次の7氏が名前を連ねていますが、
そのほとんどの人が上記2誌の常連執筆者です。
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    すぎやまこういち    ケント・ギルバート
    渡部昇一        上念 司
    鍵山秀三郎       小川栄太郎
    渡辺敏夫            (敬称略)
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 この意見広告では、岸井氏の発言は、放送法第4条の「重大違
反行為」に当たるとし、暗にその退陣を求めています。2014
年の総選挙前から、安倍首相は「ニュース23」とは対立してお
り、「放送法順守を求める視聴者の会」が、そのトドメを刺す意
見広告を出したのです。
 これについて、ニューヨークタイムズ前東京支局長、マーティ
ン・ファクラー氏は、自著において、次のように、反対の論陣を
張っています。
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 そもそも放送法は「放送の自由」を守るために存在する倫理規
範だ。政権に批判的な報道に対し、放送法を盾に攻撃するなど、
本末転倒にしか思えない。
 渡部昇一氏やケント・ギルバート氏には言論の自由、表現の自
由があるわけだし、彼らが新聞の意見広告で何を言おうと自由で
ある。私から言わせれば、こんな意見広告は受け流す程度のもの
だ。無視して放っておけばいいレベルの話なのに、TBSは過剰
に反応してしまったのだろうか。その後、岸井氏の16年3月い
っぱいでの「ニュース23」アンカー降板と、TBS専属の「ス
ペシャルコメンテーター」就任が発表された。
 こういうときは、朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などがそれぞ
れ取材をして、TBSで今、何が起きているか、伝える必要があ
る。メディアには、人々が事実かどうかを判断する材料を提供す
る役割があるからだ。ところが朝日新聞騒動のときと同様、また
してもジャーナリスト同士の横のつながりは生まれなかった。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
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 ちなみに同会は総務省に対しても公開質問状を出し、総務省が
従来採っている放送法第4条に関する「1つの番組ではなく当該
放送事業者の番組全体を見て、全体としてバランスの取れたもの
であるを判断することが必要」という見解を批判しています。こ
のように、彼らはちゃんとわかってやっているのです。
 この意見広告は、大新聞2紙の1ページ全部を使っています。
おそらく広告費と製作費をあわせると、億単位の資金が必要です
が、岸井発言後わずか数週間でよく調達できたものです。証拠は
ありませんが、相当強大な資金的バックがないと、なかなかこれ
だけの意見広告を出すことは困難です。
 いずれにせよ、テレビ局の一人のキャスターを外すために、こ
れだけのことが行われたのです。まさに言論封殺です。日本には
「言論の自由」はないのでしょうか。
            ──[メディア規制の実態/013]

≪画像および関連情報≫
 ●岸井成格氏スペシャルコメンテーター就任/TBSの見解
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   TBSによると、スペシャルコメンテーターは同局との専
  属契約で、番組の垣根を越えてさまざまな報道・情報番組に
  出演し、ニュースについて解説や論評をする。就任は岸井氏
  が初めて。「サンデーモーニング」などの報道番組に引き続
  き出演し、選挙特番などにも幅広く出演する。4月にリニュ
  ーアルするNEWS23には、コメンテーターとして随時登
  場するという。
   岸井氏は、毎日新聞で政治部長、論説委員長、主筆などを
  歴任。スペシャルコメンテーター就任について「報道の第一
  線で発信を続けていくことになった。その責任・使命の重さ
  を自覚し、決意を新たにしていく」とコメントした。TBS
  は、NEWS23のリニューアルの内容について「今後、発
  表する」としている。       http://bit.ly/2DoJ5zE
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岸井成格バッシングの意見広告.jpg
岸井成格バッシングの意見広告
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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