2017年12月22日

●「Nスペ『光と闇の迷宮』と量子論」(EJ第4672号)

 量子コンピュータについて語るときは、単にその概要について
述べるだけでも、量子力学というものをある程度理解することが
不可欠になります。そういうわけで、量子力学の本を数冊何回も
読み、ネット上のさまざまなコンテンツを参照しましたが、それ
でも十分に理解できないでいます。
 とにかく量子力学の世界は尋常な世界ではないのです。光電効
果を解明し、ノーベル物理学賞を受賞したあのアインシュタイン
でさえ、量子力学には終生疑問を唱えていたのです。なかでも、
量子力学に関するデンマークの理論物理学者ニュールス・ボーア
との理論論争は有名であり、その論争にアインシュタイは何度も
一敗地にまみれ、晩年は疲れ果てていたといわれます。
 そんなある日、ドイツのカブートのアインシュタインの別荘で
アインシュタインは、インドの大詩人タゴールに次のように尋ね
ています。そうです。あの有名な質問です。
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 われわれが見ていないときは、空にかかる月は存在しないの
 でしょうか。           ──アインシュタイン
─────────────────────────────
 この質問にタゴールは、どのように答えたのでしょうか。コン
ノケンイチ氏の本から、引用します。
─────────────────────────────
 量子力学の大御所ボーアとの論争に疲れた晩年のアインシュタ
インは、悩み抜いた末にインドの大詩人タゴールに次のように問
うている。「われわれが見ていない時は、空にかかる月は存在し
ないのでしょうか?」
 タゴールは答えた。「この世界は人間の世界です。科学理論と
いえども所詮は人間世界の科学者の見方にすぎません。世界とは
人間と無関係に存在するものではないでしょうか。私が見ていな
くても、月は確かにあるのです。月はあなたの意識になくても、
他の人の意識にはあるのです。人間の意識の中にしか月は存在し
ないことは同じです。
 私は人間を超えた客観性が存在することを信じます。ピタゴラ
スの定理は人間とは関係なく存在する真理です。しかし科学は、
月も無数の原子が描く現象であることを証明したではありません
か。あの天体に光と闇の神秘を見るのか、無数の原子を見るのか
もし人間の意識が月だと感じなくなれば、それは月ではなくなる
のです。               ──コンノケンイチ著
       『死後の世界を突きとめた量子力学』/徳間書店
─────────────────────────────
 禅問答です。タゴールは月は客観的存在であるといいながら、
「人間の意識が月だと感じなくなればそれは月ではなくなる」と
いっています。これに近い言葉に次のものがあります。
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     情報がないことは事実がないのと同じである
─────────────────────────────
 人間は目の前で起こった事実は認識できますが、遠く離れた世
界で起きていることは、報道がなければ知ることはできず、それ
は事実が存在しないのと同じことになります。
 アインシュタインは「宇宙を含む自然界の森羅万象は人の意識
に関係なく、あくまでも客観的な実在である」というのが信念で
したが、それはこの世の中のすべての人がそのように考えている
物理学の常識です。しかし、ミクロの世界の物理学である量子力
学では、それはまったく違う意味を持ちます。アインシュタイン
は、晩年に近づくにつれて、自分の物理学が量子力学に携わる学
者から論破されることが多くなり、そのことで悩み抜いていたと
いわれます。
 こういう量子力学の不思議な世界について、わかりやすく、か
つ懇切にわたって説明している動画を発見しました。動画のなか
には、光は波か粒子か、ヤングの実験、光電効果、光量子仮説な
ど、ここまで取り上げた命題や、アインシュタインとボーアの論
争、シュレディンガーの猫など、量子力学に関するさまざまな話
がすべて取り上げられています。アインシュタインとタゴールと
の対話もこの動画の一番最後に登場します。動画の時間は、約1
時間30分かかりますが、興味深いし、分かりやすいし、すこぶ
る濃い内容です。ぜひ視聴をお勧めします。
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    NHKスペシャル/アインシュタイン・ロマン
    「光と闇の迷宮」/1時間29分
                   http://bit.ly/2kSzrx7
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 上記の動画にも出てきますが、「だるまさんころんだ」という
変種の鬼ごっこがあります。この遊びと量子力学は似たところが
あるとよくいわれます。これについて、既出の竹内薫氏はネット
で次のように述べています。
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 ヒトが量子を観測していない間、量子はどこで何をしているの
かというと、「逃げて隠れて遊んでいる」のである。量子が遊ぼ
うと思ってやっているのかどうかは別として、量子のふるまいは
「だるまさんがころんだ」の遊びによく似ている。
 木の幹やら柱にへばりついて「だるまさんがころんだ!」と叫
ぶ鬼の役は、量子を観測するヒトや観測装置だ。鬼が振り返るた
びに「ぴたっ」と止まらなければいけないというルールは、ちょ
うど観測をした瞬間に該当する。量子の状態は、観測するまでは
確率的にしかとらえられない。「だるまさんがころんだ」も、鬼
が振り返るまでは誰がどこにいるかは確率的だ。確率的、とはつ
まりこの辺にいそうだってことだ。だいたいどの辺にいるかは見
当がついているが、実際どこにいるかは僕が振り向いてみないと
わからない。             http://bit.ly/2BJFpIP
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/62]

≪画像および関連情報≫
 ●NHKスペシャル「光と闇の迷宮」の感想
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   世界中でアインシュタインを尊敬していたり好きだったり
  する者は数多いと思うが、「嫌いだ」と言う者は少ないだろ
  う。若いころ当方は、初心者用の相対性理論の本を読んで、
  その内容に驚き、感動した。誰もが絶対的だと思うだろう時
  間が相対的であると言うその発想の独創性に感動した。「ア
  インシュタインは人類史上最も神に近づいた人間だ」と思っ
  て尊敬していた。しかしNHKスペシャル「アインシュタイ
  ン・ロマン」を見て、アインシュタインへの尊敬は薄れた。
   NHKでアインシュタインの特別番組が放送されると知っ
  た時、当方は喜び、その放送日が待ち遠しかった。確かそれ
  は週に一回、全部で五回放送されたと思う。そして一回目と
  二回目を見て、がっかりした。放送された内容が「特殊相対
  性理論」と「一般相対性理論」のことで、それは既に本を読
  んで知っている事ばかりだった。
   だから三回目を見る時はあまり期待していなかった。この
  回のタイトルは「光と闇の迷宮」。その放送の前半でニュー
  トンとホイヘンスが「光は粒か、波か」で論争する。「光は
  粒である」と主張するニュートンに対して「光は波である」
  と主張するホイヘンス。互いに譲らない論争に、アインシュ
  タインは「光は粒と波の両方の性質を持つ」と結論付けた。
  しかし、その矛盾する構造については解明することが出来な
  かった。この内容も本を読んで知っていた。「また知ってる
  ことだ」と落胆しながらも番組の続きを見た。そして、そこ
  からはタイトルの通り、「光と闇の迷宮」だった。当方の知
  らない世界の扉が開き、不思議な迷宮の中に入って行った。
                   http://bit.ly/2kzMDaO
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アインシュタインとタゴールの対話.jpg
アインシュタインとタゴールの対話
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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