2017年12月18日

●「量子とは『量の最小単位』である」(EJ第4668号)

 先週検討した竹内薫氏による「ややこしい計算」の第1は「大
きい数の計算」、第2は「高度な関数の計算」、第3は「幾つも
の式をセットした計算」です。この3番目の計算は、非常に複雑
であり、人類はこの計算をスムーズに行うためにコンピュータを
開発したのです。英語で「計算する」という言葉には、次の2つ
があります。
─────────────────────────────
           1.calculate
           2. compute
─────────────────────────────
 「calculate」 の語源は「チョーク」といわれています。これ
はチョークを使って、地面や石板に式を書いて計算することを表
しています。初期のコンピュータは、まさに演算のためのマシン
──カルキュレーターであったのです。EDSACの「C」は、
カリキュレータを表しているのです。
─────────────────────────────
   EDSAC
   Electronic Delay Storage Automatic Calculator
─────────────────────────────
 しかし、「compute」 は同じ計算でも少し違うのです。複数の
演算を組み合わせて、何らかの結果を導くことをいいます。つま
り、「幾つもの式をセットした計算」を解くマシンがコンピュー
タというわけです。
 EDSAC以降、2進数と逐次処理を組み合わせたコンピュー
タ、いわゆるノイマン式コンピュータが続くことになりますが、
これによってあらゆる計算が可能になり、そこに大きな汎用性が
生まれたのです。なぜなら、2進数では、簡単に「論理回路」を
作ることができるからです。
─────────────────────────────
       1. 論理和/A or B
       2. 論理積/A and B
       3. 論理否定/Not A
─────────────────────────────
 論理回路というのは論理演算を表現した電子回路のことです。
ジョージ・ブールによる「ブール代数」に基づいています。本来
であれば、論理回路について説明するべきですが、説明が長くな
るので、これについては次の説明をもってかえることにします。
─────────────────────────────
 コンピュータ理論に関する初歩の高校教科書を開くと、二つの
きわめて単純な原理を知ることができる。チェスの駒の動きから
動画まであらゆる種類のデータは、1と0というたった二つの記
号の列に変換できる。そしてそのデータは、ゲートと呼ばれる単
純なスイッチが行なう、AND、OR、NOTという簡単な基本
操作によって制御できる。
 「ANDゲート」の二つの入力に1という信号がくると、この
ゲートは1(YES)を出力する。そしてそれ以外の場合には0
(NO)を出力する。つまりA and B″ ということだ。「O
Rゲート」はもっと懐が広く、AとBのどちらかに1が入力され
れば、1を出力する。
 「NOTゲート」は、入力を反転するだけだ。つまり1が入力
されると0を出力し、0が入力されると1を出力する。こうした
基本部品を何百万個とつなぎ合わせれば、デジタルな連鎖反応を
引き起こすことができる。単語や数や画像や音声やチェス盤上の
位置を表す1と0の列が、パチンコ玉のように回路の中を跳ね回
る。こうしてコンピュータは作動するのだ。
           ──ジョージ・ジョンソン著/水谷淳訳
    『量子コンピュータとは何か/数理を楽しむシリーズ』
                         早川書房
─────────────────────────────
 ここから、量子コンピュータの話に入っていきますが、このテ
ーマのEJは12月28日までなので、今日を含めてあと9回し
かありません。これで、量子コンピュータというものが現在のノ
イマン型コンピュータとどこが違うのか、いささかざっくりとし
た話になりますが、明らかにしたいと思います。
 「量子」とは何でしょうか。
 結論からいうと、量子とは「量の最小単位」です。何の量かと
いうと、エネルギーの量です。物質をどんどん小さくしていくと
します。すべての物質は「分子」からできていて、その分子はさ
らに「原子」の集まりであり、原子は「原子核」と「電子」、さ
らにその下に「陽子」と「中性子」があり、やがて素粒子に行き
着きます。
 そういう極小の世界ではエネルギーも分割不能なカタマリにな
ります。これが「量子」です。こういう極小の世界になると、世
の中の常識が通用しない不思議な力学が働きます。これを「量子
力学」といいます。量子力学は次のよえに定義されています。
─────────────────────────────
 量子力学は、一般相対性理論と同じく現代物理学の根幹を成す
理論として知られ、主として分子や原子、あるいはそれを構成す
る電子など、微視的な物理現象を記述する力学である。
 量子力学自身は前述のミクロな系における力学を記述する理論
だが、取り扱う系をそうしたミクロな系の集まりとして解析する
ことによって、ニュートン力学に代表される古典論では説明が困
難であった巨視的な現象についても記述することができる。たと
えば量子統計力学はそのような応用例の一つである。したがって
生物や宇宙のようなあらゆる自然現象もその記述の対象となり得
る。       ──ウィキペディア http://bit.ly/1MHBP2P
─────────────────────────────
 世の中の常識が通用しない不思議な力学とは具体的にどのよう
な現象をもたらすのでしょうか。明日のEJからそのことを追及
していきます。     ──[次世代テクノロジー論/58]

≪画像および関連情報≫
 ●人間が壁を通り抜けられる?量子力学の不思議な世界
  ───────────────────────────
   皆さんは、量子力学という物理学の理論をご存じでしょう
  か。量子力学とは、我々よりもはるかに小さな世界で起きる
  出来事を記述するための理論です。小さな世界で起こる出来
  事なんて自分たちにはあまり縁がないと思う人もいるでしょ
  う。特に理系が苦手な人にとっては、もっとも避けて通りた
  い分野のひとつかもしれません。しかし、私たちの生活に大
  いに関係がある理論なのです。
   量子力学は「事実は小説より奇なり」を体現するような理
  論とも言うことができ、とても不思議でとても面白い学問。
  今回はそんな量子力学の面白い話題を、やさしく楽しくお伝
  えしたいと思います。
   まずは、量子力学が使われている現場についてお話ししま
  す。上述のように、量子力学は我々よりもはるかに小さい世
  界での出来事を記述するための理論。具体的には、電子など
  の状態を書き表すためのものです。電子といえば電気の担い
  手。つまり量子力学は、電気が物質をどのように流れるかを
  考えるために必要なのです。例えば、電気を流したり流さな
  かったりできる半導体などは、まさに量子力学の知識が大活
  躍する領域です。量子力学の分野で最近話題なのが量子情報
  通信。量子力学のある特性をうまく利用すると、誰にも傍受
  されない完璧な通信が可能なると期待されている通信技術で
  す。               http://bit.ly/2zejeLi
  ───────────────────────────

物質を構成するもの/極小の世界.jpg
物質を構成するもの/極小の世界
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]