について知るには、現代のノイマン式コンピュータについて知る
必要があります。世界初のコンピュータの表を再現します。
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完成年 演算方式 メモリ プログラム
1.ABC 1942 2進数 × ×
2.コロッサス 1943 2進数 × ×
3.ENIAC 1946 10進数 × ×
→4.The Baby 1948 2進数 〇 〇
→5.EDSAC 1949 2進数 〇 〇
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「The Baby」──これは開発者が付けた愛称ですが、開発者は
マンチェスター大学のウィリアムスとギルバーンです。マシンの
正式名称は「SSEM」といいます。
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SSEM=小規模実験機
Small Scale Experimental Machine
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このマシンの最大の特徴は、メインメモリがはじめて装備され
たことにあります。その名称は「蓄積記憶管」です。これはウィ
リアムスが開発したもので、その名をとって「ウィリアムス管」
とも呼ばれています。
ウィリアムスは、CRTをメインメモリとして使ったのです。
CRT(Cathode Ray Tube/陰極線管)は、かつてテレビにも、
PCのディスプレイにも使われたことがある、あのブラウン管の
ことです。しかし、ブラウン管がメモリとして使われるというの
は、いささかわかりにくいですね。
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陰極線管の蛍光面に電子が衝突すると光が放出される。このと
き副作用として衝突箇所の周囲は電荷がわずかに変化する。これ
を測定することによって陰極線管を単純な記憶装置として使用す
ることが可能になる。電荷はすぐに失われるため繰り返し電子を
衝突させることが必要であり、記憶保持動作が必要な、いわゆる
(広義の)Dynamic Randam Access Memory の一種といえる。
ウィキペディア http://bit.ly/2C1gIan
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これは、ある意味において、現在のPCのメインメモリである
DRAMの動きに近いものがあります。DRAMの素材はコンデ
ンサですが、コンデンサは、トランジスタと違って電荷を貯める
のに不向きな素材です。そのため、メインメモリにコピーされた
データやプログラムはそのままでは消えてしまうので、大量の電
気をメインメモリに送って消えないように維持するのです。この
動作を「メモリ・リフレッシュ」といいます。
ウィリアムスは、6インチのCRTを利用して、データをCR
Tの蛍光面上に残留する電荷として記憶されることに成功してい
ます。しかし、電荷は一時的には蛍光面上に留まるものの、すぐ
失われるので、電荷を読み出して、再書き込みを繰り返すことに
よって、データは維持されるのです。これは「リフレッシュ」と
呼ばれています。メモリ・リフレッシュと同じです。
規模から考えても「The Baby」は、いわゆるウィリアム管がコ
ンピュータのメモリとして使えるかどうかを確認するためのテス
トマシンであることは明らかです。
初めてのコンピュータのなかで、最も完成度が高く、汎用性も
あるコンピュータは、1949年にケンブリッジ大学のウィルク
スと英国ケンブリッジ大学の数学研究所のチームによって開発さ
れた「EDSAC」です。
EDSACの開発にフォン・ノイマンが直接参加しているわけ
ではないのですが、ENIACの設計に関してフォン・ノイマン
が書いたEDVACのレポートが参考にされています。昨日EJ
でも書いたように、ENIACの制作チームは、ノイマンのED
VACのレポートにしたがって、新しいコンピュータの制作に着
手し、EDVACという名のコンピュータを作成していますが、
ケンブリッジ大学によるEDSACの方が先に完成してしまい、
EDVACは世界一の功績を奪われたのです。EDSACの完成
は1949年であり、EDVACは1951年です。
EDSACには3000本の真空管が使われ、消費電力は12
キロワット、占有面積は20平方メートルと、ENIACに比べ
るときわめてコンパクトに仕上がっています。演算方式に2進数
を使い、メインメモリにプログラムを内蔵する典型的なノイマン
型コンピュータになっています。
EDSACで一番特徴的なのはメインメモリです。それはコン
ピュータの名称にもあらわれています。
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EDSAC
Electronic Delay Storage Automatic Calculator
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この名称のなかの「Delay Storage」 は「遅延線メモリ」を意
味しています。添付ファイルの写真のパイプが並んでいる長い箱
が遅延線メモリであり、これ全体でほぼ1キロバイトの記憶容量
になります。なお、写真の男性がEDSACの制作者であるウィ
ルクスです。
管のなかに水銀を満たし、片方から超音波のパルスを与えると
超音波は水銀中を伝わって反対側に届きます。これを電気信号に
変えて、また超音波のパルスにして管に戻してやると、水銀のな
かで循環する超音波のパルスとしてデータを記憶させることがで
きるのです。これが遅延線メモリです。EDSACは、このメモ
リを2台備えており、2キロバイトのメモリであったことがわか
ります。当然のことですが、メインメモリが装備できないと、プ
ログラムを内蔵することができないのです。
──[次世代テクノロジー論/55]
≪画像および関連情報≫
●復元された「EDSAC」コンピュータ
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英国ブレッチリーパークにある国立コンピューティング博
物館で、世界に大きな影響を与えたコンピュータのうちの1
台である「EDSAC」の復元を中心に据えた新たな展示が
始まった。オリジナルのEDSACは、第2次世界大戦終了
直後にケンブリッジ大学で作り上げられ、世界で最初の業務
向けコンピュータであるLEOの基礎を築いた。
EDSACの復元は、アンドリュー・ハーバード氏の率い
る約20人のボランティアによっておよそ2年にわたって続
けられてきており、このプロジェクトは2015年に完了す
る予定となっている。現時点で、訪問者の興味を引くうえで
十分なレベルにまで復元が進んでいる。コンピュータ歴史家
であるマーティン・キャンベル・ケリー氏によると、コンピ
ュータプログラミングの黎明期を象徴するマシンのプログラ
ムを作成することに対する、若い人々への今後の動機付けに
なるという。
博物館のウェブサイトには「公式展示の開始時に、EDS
ACの重要な特徴を示すデモが実施された。ビル・パービス
氏は、キーボードのなかった時代にどのようにプログラムを
入力していたのかや、ディスプレイ画面が普及していなかっ
た時代にどのように結果が出力されていたのかを説明した。
http://bit.ly/2B8uOcu
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●写真/図出典 http://bit.ly/2jtWOAr
「遅延線メモリ」