2017年12月12日

●「世界最初のコンピュータ/ABC」(EJ第4664号)

 ノイマン型コンピュータの6つの特徴を再現します。昨日11
日のEJでは、AとCについて説明しています。
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     @        中央演算/制御装置
     A       アドレス付き記憶装置
     B          入力/出力装置
     Cデータとプログラムを区別しない記憶
     D             逐次処理
   → E           2進法の採用
                ──竹内薫著/丸山篤史構成
 『量子コンピュータが本当にすごい/グーグル、NASAで実
         用が始まった“夢の”計算機』/PHP新書
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 量子コンピュータを理解するには、現在のコンピュータを理解
する必要があります。そして、その現代のコンピュータ──ノイ
マン型コンピュータを理解する一番良い方法は初期のコンピュー
タについて知ることです。
 一般的に世界で最初のコンピュータは米国のENIAC、その
完成度を高めたのは英国のEDSACであるといわれています。
そして、そのどちらにもフォン・ノイマンが関わっている──こ
れが定説になっています。
 確かにその通りで間違いはないのですが、実はENIACとE
DSACの前後、1942年と1949年の間に同じようなコン
ピュータ開発の試みがあったのです。年代順に並べると、次のよ
うになります。
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          完成年 演算方式 メモリ プログラム
 1.ABC   1942  2進数   ×     ×
 2.コロッサス 1943  2進数   ×     ×
 3.ENIAC 1946 10進数   ×     ×
 4.The Baby  1948  2進数   〇     〇
 5.EDSAC 1949  2進数   〇     〇
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 「ABC」は1942年にアイオア州立大学のアナタソプとベ
リーによって作られたまさしく世界最初のコンピュータです。A
BCというのは「アナタソプ(A)とベリー(B)のコンピュー
タ(C)」という意味です。
 ABCは、2進数を採用し、論理回路を使った演算装置を持っ
ていましたが、メモリというものはなかったのです。しかし、一
般には現在のコンピュータと同じコンデンサを使ったメモリを持
つと説明されていますが、これはメモリというよりも、レジスタ
(一時的記憶装置)のようなものだったようです。だが、ABC
は完成しないまま開発は中止されています。
 「コロッサス」は第2次世界大戦中の1943年、ドイツ軍が
ヒトラーと将官の通信に使われていたローレンツ暗号の解読のた
めに英国で作られたコンピュータです。当時ドイツの暗号といえ
ば「エニグマ」が有名ですが、ローレンツ暗号はそのエニグマを
さらに複雑にしたものです。2進数を使い、計算は真空管で行っ
ていますがメモリはなく、ローレンツ暗号解読専用のハードウェ
アであって、コンピュータと呼ぶには難があります。
 1946年に開発されたのは「ENIAC」です。これは世界
初のコンピュータといわれています。ペンシルバニア大学のムー
ア校で、モークリーとエッカートらによって、弾道計算という軍
事目的のために制作されています。しかし、第2次世界大戦に間
に合わなかったので、1946年2月14日の聖バレンタインの
日に機密のベールを脱いでいます。
 とにかく巨大なマシンです。ENIACは、17468本の真
空管を使い、床面積は100平方メートル、重量30トン、消費
電力は150キロワットに達していたのです。
 ENIACの最大の特色は、2進数ではなく、10進数を使っ
ていることです。そのため、1万7千本という膨大な真空管を要
したのです。しかし、メモリは存在せず、弾道計算に特化した専
用計算機だったといえます。
 ややこしいことですが、「EDVAC」というマシンも存在す
るのです。1949年に英ケンブリッジ大学で開発されたEDS
ACと名前が酷似しています。したがって、このEDVACとE
DSACを混同しているケースがよくありますが、正確には違う
コンピュータです。
 EDVACは、ENIACの設計チームが、後からENIAC
の設計に顧問として参加したフォン・ノイマンの次のレポートに
基づいて開発したコンピュータなのです。レポートの名称とコン
ピュータの正式名称を次に示します。
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         First Draft of a Report on the EDVAC
  Electronic Discrete Variable Automatic Calculator
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 このマシンは、2進数を採用し、メモリとして高速な遅延記憶
装置を備え、プログラムを内蔵しています。
 これとほぼ同じ内容のコンピュータが1949年のEDSAC
ですが、その1年前の1948年にThe Baby というコンピュー
タが開発されています。これは、マンチェスター大学のウィリア
ムスとギルバーンによって作られ、1948年6月にプログラム
の実行に成功しています。
 演算方式として2進数を使い、「蓄積記憶管」といわれるCR
Tをメモリとして使う方式を開発しています。データとプログラ
ムを区別することなくメモリに記憶し、それを高速で実行する最
初のプログラム内蔵式コンピュータです。しかしこのコンピュー
タは、あくまで実験機として開発され、非常に小規模なコンピュ
ータだったのです。このマシンとEDSACについては、明日の
EJで取り上げます。  ──[次世代テクノロジー論/54]

≪画像および関連情報≫
 ●『エニアック世界最初のコンピュータ開発秘話』を読んで
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   以前、フォン・ノイマンの話をしたとき、彼がおそらく史
  上最高の高知能の持ち主だったかもしれないという話をした
  と思う。ノイマンに好意的な人々はもちろん今でも彼がノイ
  マン型コンピュータの発明者だと言うことを疑ってはいない
  だろう。しかし、本書の帯には「ノイマン、お前だけは許せ
  ない」といささか物騒なことが書かれている。私はどうもノ
  イマンにはマジシャン的なところが逢ったのではなかろうか
  ともいった。本当に頭の回転が速かったというよりも、むし
  ろいたずらが好きな性格だったのではなかろうかというわけ
  である。純情可憐な科学者の心など簡単にだませるので、計
  算機よりも早く計算を行ったというトリックも簡単にできる
  はずなのだ。もっとも、ノイマンにしてみればこんなのはた
  だの罪のないいたずらだ。
   日本ではノイマンという科学者はそれほど評価されていな
  いような気がする。内臓式プログラムミング機能をコンピュ
  ーターに組み込むことを定着させた人として、知られる程度
  だ。それに相したことを考案した最初の人ではないというこ
  とも知られている。だからアメリカでは日本とは逆にノイマ
  ンの評価が高いのかもしれないと思う程度ではある。
                   http://bit.ly/2B78SP1
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初めてのコンピュータ「ABC」.jpg
初めてのコンピュータ「ABC」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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