竹内薫氏の量子コンピュータの本に出ていた暗号に関する話をご
紹介します。
「ステガノグラフィー」という言葉があります。ウィキペディ
アで調べると、次のような意味です。
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ステガノグラフィー(steganography) とは、データ隠蔽技術
の一つであり、データを他のデータに埋め込む技術のこと、ある
いはその研究を指す。 クリプトグラフィー(cryptography) が
メッセージの内容を読めなくする手段を提供するのに対して、ス
テガノグラフィーは存在自体を隠す点が異なる。
──ウィキペディア http://bit.ly/2B6lKFD
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何でもない文書に重要な情報を隠して送るのですが、何も知ら
ない人には普通の文章に見えるものの、読み方のルールを知って
いる人には、ちゃんと伝わるのです。このように平文に情報を隠
す技術を「ステガノグラフィー」といいます。
昔の歌人は、このステガノグラフィーを使って和歌のやり取り
をしていたといわれます。竹内薫氏の本には、徒然草の作者の吉
田兼好と、その兼好と共に和歌四天王とよばれた歌人・頓阿との
和歌でのステガノグラフィーの例が出ています。
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◎吉田兼好
夜も涼し 寝覚めの仮庵 手枕も
ま袖も秋に へだてなき風
「夜も涼しくなったわ。家がボロいやん?アチコチの隙間から
秋風が入って目ぇ覚めるねん」
◎頓阿
夜も憂し 妬たく我が背子 果ては来ず
なほざりにだに 暫し訪ひませ
「夜が長くて退屈しているねん。ツレやねんから、遊びに来た
らエエのに。気軽においでや」 ──竹内薫著/丸山篤史構成
『量子コンピュータが本当にすごい/グーグル、NASAで実
用が始まった“夢の”計算機』/PHP新書
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一見すると時候の挨拶のように見えますが、各句の語頭をとり
さらに後ろから語尾を並べると、次のようになります。
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◎吉田兼好
よねたまえ → 米を貸してくれませんか
ぜにもほし → お金も少し貸してほしい
◎頓阿
よねはなし → 米は残念だがありません
ぜにすこし → お金なら少しありますが
──竹内薫著の前掲書より
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和歌においては、このようなテクニックのことを「折句」とか
「沓冠」といっていますが、こういう一種の言葉遊びは、平安時
代から現代まで続いてきているのです。
暗号の話はこのくらいにして、現在のコンピュータがどういう
ものであるかについて説明することにします。なぜなら、現代の
コンピュータがどういうものかわからないと、量子コンピュータ
が理解できないからです。
それでは、現代のコンピュータとは何でしょうか。
現代のコンピュータのほとんどは「ノイマン型コンピュータ」
と呼ばれています。「ノイマン」とは、ハンガリー出身の米国の
数学者であるフォン・ノイマンのことで、彼の構想により、作ら
れたコンピュータをノイマン型コンピュータというのです。
それは、「京」のようなスーパーコンピュータから、多くの人
が日常使っているウインドウズPC、アップルPC、そして各種
スマートフォンにいたるまで、すべてノイマン型コンピュータに
属するのです。
地球シミュレータと呼ばれるコンピュータがあります。海洋研
究開発機構で使われているスーパーコンピュータです。もちろん
このコンピュータもノイマン型コンピュータであることには変わ
りはないのですが、どういうコンピュータか詳しく述べると、高
性能なPCを並列につないだものであることがわかります。
地球シミュレータは、1つ1つが毎秒80億回の計算が可能な
小さなコンピュータを8台を1セットにして実に640セット、
全部で5120台を並列に接続しており、全体で最大毎秒40兆
回の計算ができる凄いコンピュータです。しかし、コンピュータ
自体はノイマン型なのです。
一体フォン・ノイマンとは、どういう人物なのでしょうか。ど
うやら、単に稀有な数学者というだけではなく、幅広い分野で驚
くべき立派な業績を上げているのです。竹内薫氏は、ノイマンに
ついて次のように絶賛しています。
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純粋数学から始まったフォン・ノイマンの経歴は、応用物理か
らコンピューター、経済学、気象学、生物学、心理学、政治へと
及ぶ。しかも、それぞれの業績は掛け持ち仕事だったのだから恐
れ入る。フォン・ノイマンの才能は、どんな分野だろうと関係な
かった。まるで石ころからダイアモンドに磨き上げてしまうよう
に、誰かの未成熟なアイデアを数学の力で瞬く間にキラキラ光る
宝物にしてしまうのだ。 ──竹内薫著の前掲書より
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実は、フォン・ノイマンは、量子コンピュータの原理である量
子力学についても実績があるのです。いずれにしても、量子コン
ピュータを理解するには、現在のコンピュータであるノイマン型
コンピュータについて詳しく理解する必要があります。
──[次世代テクノロジー論/52]
≪画像および関連情報≫
●フォン・ノイマン/宇宙人説
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現代社会は、天才であふれている。はずみで大魚をつかん
だ運才、自称天才、エセ天才、ただの詐欺師。もちろん、本
物の天才もいる。もっとも、本物の天才ともなれば、ヒトと
は限らない。染色体の数が47本、つまり、両親から受け継
がない秘密の染色体を持っている可能性もある(人間の染色
体は46本)。ところが、さらに恐ろしい仮説もある。
1950年代、アメリカの名門プリンストン大学に、ジョ
ン フォン ノイマンという数学者がいた。彼は非常な変わり
者だったので、こんな陰口をたたかれていた。「ノイマンは
人間そっくりだが、本当は宇宙人」。
たいていの本では、ジョークですませているが、中には真
に受けている本もある。いずれにせよ、それが本当なら、染
色体の数どころの話ではない。染色体があるかどうかも怪し
い。宇宙人なのだから。
アメリカのニューメキシコ州に、歴史上初の原子爆弾を開
発したロスアラモス研究所がある。1945年8月、ここで
つくられた2個の原子爆弾は広島と長崎に投下されたが、こ
の忌まわしい研究所で、不気味なうわさが流れていた。「ハ
ンガリー人はじつは火星人である」。これが普通の職場なら
「ただのヨタ話やろ」で一件落着なのだが、天下の頭脳が集
まる研究所である。噂を流した本人も、第一級の科学者だろ
うし、何か根拠があったに違いない。
http://bit.ly/2j8bLYB
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フォン・ノイマン/世界的数学者