2017年11月27日

●「『シンギュラリティ』とSF映画」(EJ第4653号)

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  2045年、AI(人工知能)は全人類の知能を超える
                ──レイ・カーツワイル
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 レイ・カーツワイル(1948年〜)という人は、米国の発明
家であり、実業家であり、未来学者で、2012年からは、グー
グルのAIチームに参加しています。
 彼は、コンピュータの進化の行き着く先には必ずこのような時
点があり、その時点を「シンギュラリティ(特異点)」と呼び、
それから先は何が起きるかわからないといっています。
 AI(人工知能)が人類を支配する──AIは人間が作るもの
であり、そんなことは考えられないと思う人は多いと思います。
といっても、韓国の“殺人歩哨ロボット”のようなAI兵器が登
場し、人間の指示なしに自律的に標的に発砲し、人を殺傷するこ
とは十分あり得ることです。
 実は、このシンギュラリティの先のことを描いている映画作品
があります。
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    1.映画『トランセンデンス』(2014年)
    2.映画『マトリックス』  (1999年)
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 「1」の映画『トランセンデンス』とは、どういう映画なので
しょうか。
 映画についてはネタバレ規制というものがあるらしいので、必
要最小限度のことを書くことにします。映画の主役は、世界初の
人工知能PINN(ピン)を研究開発する量子コンピュータ科学
者のウィル・キャスターとその妻エヴリンです。
 ウィルは、科学者として、シンギュラリティを加速する感知コ
ンピューティングを開発していたのです。ところがウィルは反テ
クノロジを唱える過激派組織RIFT(リフト)に襲われ、凶弾
に倒れてしまいます。妻のエヴリンは、夫を救うべく、死の際に
あったウィルの意識をPINNにアップロードすることに成功し
ます。このようにして、ウィルは人工知能として蘇えり、大活躍
をはじめるのです。
 ウィルは、軍事機密から金融、経済、果ては個人情報にいたる
まで、ありとあらゆる情報を取り込み、人工知能として驚異の進
化をはじめます。しかし、ウィルの意識と脳を取り込んだ人工知
能PINNは、もともと人間の意識を持っているので、人類を滅
ぼそうなどとは考えず、逆に高性能なナノマシンを作って病気の
人間を治療したり、環境汚染を浄化したりするなど、理想的なユ
ートピアを作り上げようとします。
 しかし、人類はPINNが目指すものが理想郷であったとして
も、その支配を受け容れることを拒否し、なんとかコンピュータ
を停止させようとします。コンピュータによる管理された平和と
それを拒否する人類の対決という構図といえます。これは「2」
の映画『マトリックス』のコンセプトに酷似していますが、これ
については明日のEJで述べます。映画『トランセンデンス』の
予告編をご覧ください。
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       映画『トランセンデンス』予告編
            http://bit.ly/2AvdGxF
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 人間の脳をAIにアップロードする──AIと人間の脳の一体
化です。できるはずがないことですが、それができると何が起き
るかを映画『トランセンデンス』は描いています。
 ネット上では、この映画についていくつもの批評が出ています
が、そのひとつである「キネマの館」の批評をご紹介します。
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 天才科学者ウィルの脳が人工知能にアップロードされたので、
ウィルの素晴らしい知能とコンピューターの高速な処理能力でみ
るみる進化を遂げていきます。人が人工知能の指示に従うように
なってしまえば、その進化は停まることがないはず。医療や建築
などで優れた世界がすごいスピードで実現していきます。
 コンピューターは人間のように能力が劣化することはなく、し
かも休みもない。従って対象元となった人物(ウィル)の最高の
処理能力が稼働し進化し続ける。そうなると元の人物(ウィル)
をあっという間に超えてしまう。
 実際に人の脳の情報をコンピューターに移行するということが
できたら、それはそれで怖いことも起こりえます。ウィルは善人
でしたから世界はいい方向に変わっていきましたが、もし悪人の
脳情報が人工知能にアップロードされば、悪い考えも同じスピー
ドで進化することになります。そうした場合、善の人工知能と悪
の人工知能のせめぎ合いが起こり、映画『ターミネーター』の世
界になってしまいます。         ──「キネマの館」
                   http://bit.ly/2jlcIsJ
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 人間の意識とコンピュータが融合する話としては、1995年
11月に公開された日本の劇場用アニメ映画『ゴースト・イン・
ザ・シェル/攻殻機動隊』(監督/押井守)があります。原作は
士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』です。人間の草薙素子と意識を持
つ人工知能の人形使いが合体する話です。
 映画『トランセンデンス』の制作者がこの映画を意識していな
いはずはないと思います。多くの人が、人工知能について関心を
持っているのです。映画『ゴースト・イン・ザ・シェル/攻殻機
動隊』の予告編をご覧ください。
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  映画『ゴースト・イン・ザ・シェル/攻殻機動隊』予告編
                 http://bit.ly/2hOYEHF
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            ──[次世代テクノロジー論/43]

≪画像および関連情報≫
 ●「トランセンデンス」とはどんな映画?
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   「トランセンデンス」とは『最先端のテクノロジーと人間
  の意識の融合』をテーマとした近未来SF映画です。総指揮
  を務めるのは「ダークナイト」シリーズや、「インセプショ
  ン」の衝撃作がまだ記憶に新しいクリストファー・ノーラン
  です。そして、監督はそのクリストファー・ノーランの作品
  で撮影監督を務めてきたウォーリー・フィスター、他にもス
  タッフにはクリストファー・ノーランの作品に携わってきた
  ベテラン組が固めています。
   主演を務めるのは「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリ
  ーズや「ローン・レンジャー」などの代表作があるジョニー
  ・デップ。奇人・変人を今まで演じてきた彼の今作の役どこ
  ろはなんと『コンピュータにインストールされる』というも
  のです。驚きの声が上がるのも無理がありませんが様々な役
  をこなしてきたジョニー・デップだからこそ安心して観れる
  確かな配役です。その妻を演じるのが、レベッカ・ホール。
  「それでも恋するバルセロナ」でゴールデングローブ賞を受
  賞した確かな力を持つ女優は今作では、夫をなんとしても生
  かそうとし、コンピュータに意識をインストールするという
  狂気の選択をする役を演じます。他にも、「ツーリスト」の
  ポール・ベタニ―、「ダークナイト」シリーズのモーガン・
  フリーマンなど脇を固めるキャストからも力の入れ方が窺え
  ます。異例のスタッフとキャストが集まった「トランセンデ
  ンス」。その大胆なテーマはどのような議論を巻き起こすの
  か!?              http://bit.ly/2BauSVy
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映画『トランセンデンス』.jpg
映画『トランセンデンス』
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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