して、配車を依頼したところ、すぐには配車できないといわれた
ので、バスで駅まで行ったのです。ところが駅にはそのタクシー
会社のタクシーが多数客待ちをしているのです。この客待ちの時
間が長ければ長いほど、配車の効率が低下することになります。
多くの場合、タクシー会社は、配車依頼の電話が入ると、無線
で配車依頼者の場所に近いところを走っている空きタクシーをそ
こに向わせるやり方を昔からとっています。しかし、この方法で
は、タクシーの客待ちロスを減らすことは困難です。
いわゆるライドシェアサービスのウ―バー(Uber)の創業者は
サンフランシスコであまりにもタクシーがつかまらないのに業を
煮やして、2009年3月に自分で会社を設立しています。実体
験に基づいているのです。そのウ―バーは、5年足らずで時価総
額7兆円の巨大企業になっています。発想が違うのです。
そのウーバーも、自家用車の有料配送の規制のある日本にはお
手上げの状態ですが、2017年10月30日付の日本経済新聞
は、次のニュースを一面トップで報道したのです。
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中国配車アプリ、日本進出
/最大手・滴滴/タクシーと連携
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中国の滴滴出行といえば、タクシー配車とライドシェア(相乗
り)サービスの世界最大手です。滴滴出行は、日本ではタクシー
国内最大手である第一交通産業と提携し、来年春にもタクシーを
配車できるようにするという内容の記事です。
お客が滴滴のスマホのアプリの地図で、出発地と目的地を指定
すると、その情報を登録タクシーが受信し、一番出発地の近くに
いるタクシーが出発地に迎えに行くという仕組みです。もちろん
そのさいには、何分で出発地に迎えに行けるかをお客に知らせ、
料金はスマホを通じて支払われることになっています。
滴滴出行は、来年の春にも都内で500台の規模で運用します
が、第一交通産業としては、主として中国人旅行者のタクシー需
要を取り込めるメリットがあります。中国からの旅行者は、日本
に来る前にネット上で配車を依頼し、料金を払い込んでしまうの
で、成田や羽田空港などには、登録タクシーが続々と迎えに行く
ことになります。
滴滴出行としては、第一交通産業の保有する約8700台のタ
クシー全てをアプリで配車できるようにするとともに、他のタク
シー会社とも提携することによって、大阪などの他都市にも対象
を拡大し、徐々に登録車の台数を増加させる計画です。
白タクの規制緩和は、タクシー会社の反対もあって簡単には実
現するとは思われないものの、いつかは条件付きで実現される日
が来ます。しかし、そのときは、既にタクシー配車で実績を持つ
滴滴出行によって事業は独占されてしまうことは目に見えていま
す。日本の企業のテクノロジー4・0への対応は遅いのです。
これについて、大前研一氏は、ウ―バーの例をひいて次のよう
に述べています。
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私はよくオーストラリアに行きますが、今やゴールドコースト
に昔ながらの流しのタクシーはほとんど走っていません。以前か
らよく知っているタクシーの運転手に尋ねると「街で手を挙げて
タクシーをつかまえる人がいなくなりました」と言います。Uber
を利用する人が多いので、街を流して走っていても客も見つけら
れないそうです。しかもUber の方が操業度は高く、ドライバー
にとっては実入りも良いのです。(中略)
Uberが急成長した背景には、配車を可能にする位置情報、デー
タを解析して配車を効率化するビッグデータ、そして代金のやり
取りに関わるFinTech があります。つまり、これからのビジネス
においては、ひとつのテクノロジーを理解しているだけでは駄目
なのです。システム(テクノロジー)がつながって、サービスや
ビジネスを形成しており、テクノロジーがどうつながっているか
を知ることが重要です。 ──大前研一著
『テクノロジー4・0/「つながり」から生まれる新しいビジ
ネスモデル』/KADOKAWA
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「スマートフォン・セントリック」という言葉があります。大
前研一氏がこの言葉を使っています。大前氏は、「スマホはデジ
タルコンチネントを形成している」というのです。考えてみると
スマホは何でもできるマシンであることがわかります。
電話やメールで、いろいろな人と連絡をとることができますし
ラジオやテレビ、動画も見ることができ、音楽を聴いたり、写真
を撮ったり、録音をすることも可能です。GPSを利用して、道
案内をしてもらうこともできます。VRもARもスマホがあれば
体験できます。
それに加えてスマホで買い物をして決済するだけでなく、リア
ルな店舗での買い物の支払いをしたり、電車やバスに乗ったりも
できます。さらに銀行の資金の出し入れや振り込みをしたり、残
高照会をすることもスマホで可能です。
これだけではありません。スマホにおいて最も重要なことがあ
ります。それは、大前研一氏のいう次の指摘です。
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世界中で使われているスマホを動かすシステムは、アップルの
iOSか、グーグルのアンドロイドしかありません。しかもアプ
リは、ほとんど共通に開発されています。したがって、ひとつの
都市で開発された事業が、即、全世界に展開できるのです。
つまり、スマホの中に全世界をカバーする新しい経済圏・デジ
タルコンチネント(大陸)ができたのです。
──大前研一著の前掲書より
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──[次世代テクノロジー論/28]
≪画像および関連情報≫
●注目すべきテクノロジーが1つにつながる
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「位置情報3・0」の周りにはいろいろと注目すべきテク
ノロジーがあります。まずはやはりビッグデータ。それから
IoTやフィンテック(FinTech)、 AI(人工知能)もそ
うです。そして今、位置情報も含め、これらのテクノロジー
が1つにつながってきているというのが私の実感です。
今、これら全てのものが、皆さんが手にしているスマート
フォンに集約されています。こうした状態を「スマートフォ
ン・セントリック(Smartphone Centric)」と言います。ス
マホのエコシステムの中に、様々な機能やサービスが取り込
まれているというわけです。ですから、これらの技術に関す
る事業を1つでも取り上げて見てみると、そこにあらゆる技
術が入ってきていることが分かります。
たとえばセーフィーという会社は、170度モニターでき
るカメラとスマホを連携させるセキュリティサービスを提供
しています。このカメラで捉えた映像を、自分のPCやスマ
ホで見ることができるというものです。このカメラを自宅の
玄関前に取り付けておいて、月々980円払っていれば、誰
か来たときにセンサーがそれを感知し、自分のスマホに、ア
ラートで通知してくれます。さらに、録画されたデータの1
週間分はクラウド上に保存されていますから、もしなにかト
ラブルがあったときには、それを警察に持ち込めば分析して
もらえるのです。 http://bit.ly/2zk6Kmx
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滴滴出行