2017年10月18日

●「現代はトリリオンセンサーの時代」(EJ第4627号)

 昨日のEJでご紹介した「マビー/MaBeee」には、面白い機能
があります。例えば、プラモデルのミニ四駆にマビーをセットし
専用アプリをスマホにダウンロードしてスタートさせるとき、ス
マホを上下に振るだけでよいのです。この振りを強くすると、ミ
ニ四駆はスピードアップし、ゆっくり振るとスピートダウンしま
す。しかも、スマホ一台でミニ四駆を10台まで同時発車できる
ので、カーレースを楽しむことができます。
 問題は、どうしてこんなことができるかです。それは、スマホ
には「加速度センサー」が付いているからです。マビーはそれを
利用しているのです。
 加速度センサーとは、モーションセンサーともいわれますが、
スマホにかかる動きの検知に使われます。スマホが机の上に置か
れているのか、手に持っている状態なのか、それともポケットに
入れて歩いているのかなどをつねに検知しています。
 スマホの状態に合わせた画面の回転、振り回すシェイク機能や
歩数計、睡眠時の寝返り判定などは、この加速度センサーがある
からできるのです。手にスマートフォンを持って振り回したとき
振りはじめたときにはプラスの加速度、止めたときはマイナスの
加速度がかかるようになっています。
 加速度センサーを利用したゲーム機に、任天堂の「Wii」 やマ
イクロソフトの「Kinect」がありますが、スマホには加速度セン
サーが装備されているので、このセンサーを利用して、同じよう
なアプリを作ることが可能です。
 もうひとつスマホには「気圧センサー」というものが装備され
ています。ハードウェアにしては、一辺3ミリにも満たない小さ
いセンサーです。これは、アイフォーン6から付いているのです
が、どのようなときに使えるのでしょうか。実際に、アップスト
アで調べてみると、このセンサーを使ったさまざまなアプリが用
意されていることがわかります。これに関する「産経ニュース」
の記事を次に示します。
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 スマホはいつも持ち歩くため、健康を管理する機能も期待され
ているが、気圧計があれば、従来の歩数計測に加えて階段や坂道
での上下動も分かるため、よりカロリー計算などのデータが正確
に計測できる。ネット上では「低気圧のときは頭痛がひどい」な
ど、気圧と頭痛の相関性についての記述が多く見られる。そして
頭痛の到来を予想する「頭痛−る」なるアプリもあった。
 2015年の「シーテックジャパン」のあるブースでは、急激
に気圧が低下する「爆弾低気圧」や竜巻などの異常気象の察知が
できるようになれば、キーアプリになるのではないかという声が
聞かれた。確かに昨今、こうした異常気象による災害が目立つ。
思わぬ災害を避けられるかもしれない。 http://bit.ly/2ywyRxL
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 「トリリオン・センサー・ユニバース」──こういう構想があ
ります。トリリオン(Trillion)とは「1兆」という意味です。
したがって、トリリオン・センサーは、1兆個のセンサーという
ことになります。「トリリオン・センサー・ユニバース」という
のは、1兆個を上回るセンサーを活用し、社会に膨大なセンサー
・ネットワークを張り巡らすことにより、地球規模で社会問題の
解決に活用しようとする壮大な構想です。
 現在、世界の人口は、約72億人と推計されているので、毎年
1兆個以上というのは、一人当たりおよそ150個という数にな
ります。1年間に使われるセンサーは約1000億個なので、1
兆個のセンサーは年間需要の100倍ということになります。
 このトリリオン・センサー・ユニバースに似ている試みがあり
ます。「スマート・ダスト」(賢い塵)です。これは、カルフォ
ルニア大学・バークレー校のクリストファー・ピスター教授が、
1998年に発表した構想です。「賢い塵」の構想は、次のよう
なものです。
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 プロセッサ1基と、わずかなコンピュータメモリ、そして低電
力の無線トランシーバー、電源などが納められた「mote」(塵)
と呼ばれる小型センサを大量にばらまくことで、自然環境を観察
したり、ビルや工場などを監視したりして得た情報を、防災、環
境の観察、軍事目的などに利用しようというものです。この考え
は1990年代の末に提唱されたものですが、「mote」のコスト
やサイズ、エネルギー効率などの問題、通信の標準化の問題、セ
ンサから送られてくる膨大なデータをフィルタリング・解析する
ツールの開発の問題などもあり、現在のところ、コンセプトの一
部がセンサーネットワークとして、農場や工場などの監視用途で
使われているにすぎません。スマート・ダストではビルのコンク
リートや道路のアスファルトの中にも混ぜたりして、遠方の道路
の状態や建物の中の状態を把握するとか、空中に散布するという
アイデアなどもだされていたようです。 http://bit.ly/2xKnT3p
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 センサーを利用する研究は、さらに意外な方向に発展しつつあ
ります。「センサーを内蔵した錠剤」です。抗精神病薬に使われ
ています。錠剤に埋め込んだ1ミリ角大のセンサーには、微量の
マグネシウムと銅が含まれており、服用すると胃液と反応して電
流が発生し、センサーから信号が医師に発信されるようになって
います。患者が薬を飲んだかどうかをチェックするのです。
 グーグルは、涙に含まれる糖の値を測り、糖尿病患者の血糖値
を常時記録できるセンサー付きコンタクトレンズを開発していま
す。レンズはシリコーン製の樹脂でセンサーを組み込んだリング
状のアンテナが挟まれた構造になっています。これによって測定
した血糖値はスマホやPCに送られ、そこで管理をしたり、外部
に転送したりしています。
 この他、人の身体につけて使うシート型スキャナや触角を持つ
人工皮膚なども開発されており、健康状態をモニタリングできる
ようにもなっています。 ──[次世代テクノロジー論/17]

≪画像および関連情報≫
 ●トリリオン・センサー時代に日本は巻き返し可能か
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   VLSIシンポジウムは、LSIに関する最先端の成果が
  毎年報告される世界最高峰の国際会議。「半導体のオリンピ
  ック」と呼ばれる国際固体素子回路会議(ISSCC)は回
  路技術のみ、国際電子デバイス会議(IEDM)はデバイス
  技術のみを扱う。一方、VLSIは回路とデバイス技術の両
  面から議論するのが特徴だ。
   2016年の会議のテーマは「スマート社会への変革の兆
  し」。半導体の微細化のスピードが鈍化する中で、システム
  レベルのイノベーションが産業の変革を促すと見通す。従来
  のように、汎用の半導体を量産するだけでは顧客のニーズを
  十分に満たせない。会議では、システムを明確に志向した先
  端半導体の論文が発表される。
   なかでも、VLSI回路シンポジウムのジェフリー・ギー
  ロウ実行委員長が「IoTによる産業エレクトロニクスの変
  化が一つの焦点になる」と表明するように、スマート社会を
  実現する大前提にIoT技術がある。
   IoT分野の注目論文の一つが米インテルが発表する自己
  給電可能な無線のセンサー端末だ。太陽電池で給電し、10
  00ルクスと暗い室内の照明でも連続的に動作する。周囲の
  環境から採取した微小なエネルギーを利用する環境発電(エ
  ネルギーハーベスティング)技術を使って、完全無線による
  自己駆動を実現した。       http://bit.ly/2yugRUv
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加速度センサー.jpg
加速度センサー
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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