があります。例えば、プラモデルのミニ四駆にマビーをセットし
専用アプリをスマホにダウンロードしてスタートさせるとき、ス
マホを上下に振るだけでよいのです。この振りを強くすると、ミ
ニ四駆はスピードアップし、ゆっくり振るとスピートダウンしま
す。しかも、スマホ一台でミニ四駆を10台まで同時発車できる
ので、カーレースを楽しむことができます。
問題は、どうしてこんなことができるかです。それは、スマホ
には「加速度センサー」が付いているからです。マビーはそれを
利用しているのです。
加速度センサーとは、モーションセンサーともいわれますが、
スマホにかかる動きの検知に使われます。スマホが机の上に置か
れているのか、手に持っている状態なのか、それともポケットに
入れて歩いているのかなどをつねに検知しています。
スマホの状態に合わせた画面の回転、振り回すシェイク機能や
歩数計、睡眠時の寝返り判定などは、この加速度センサーがある
からできるのです。手にスマートフォンを持って振り回したとき
振りはじめたときにはプラスの加速度、止めたときはマイナスの
加速度がかかるようになっています。
加速度センサーを利用したゲーム機に、任天堂の「Wii」 やマ
イクロソフトの「Kinect」がありますが、スマホには加速度セン
サーが装備されているので、このセンサーを利用して、同じよう
なアプリを作ることが可能です。
もうひとつスマホには「気圧センサー」というものが装備され
ています。ハードウェアにしては、一辺3ミリにも満たない小さ
いセンサーです。これは、アイフォーン6から付いているのです
が、どのようなときに使えるのでしょうか。実際に、アップスト
アで調べてみると、このセンサーを使ったさまざまなアプリが用
意されていることがわかります。これに関する「産経ニュース」
の記事を次に示します。
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スマホはいつも持ち歩くため、健康を管理する機能も期待され
ているが、気圧計があれば、従来の歩数計測に加えて階段や坂道
での上下動も分かるため、よりカロリー計算などのデータが正確
に計測できる。ネット上では「低気圧のときは頭痛がひどい」な
ど、気圧と頭痛の相関性についての記述が多く見られる。そして
頭痛の到来を予想する「頭痛−る」なるアプリもあった。
2015年の「シーテックジャパン」のあるブースでは、急激
に気圧が低下する「爆弾低気圧」や竜巻などの異常気象の察知が
できるようになれば、キーアプリになるのではないかという声が
聞かれた。確かに昨今、こうした異常気象による災害が目立つ。
思わぬ災害を避けられるかもしれない。 http://bit.ly/2ywyRxL
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「トリリオン・センサー・ユニバース」──こういう構想があ
ります。トリリオン(Trillion)とは「1兆」という意味です。
したがって、トリリオン・センサーは、1兆個のセンサーという
ことになります。「トリリオン・センサー・ユニバース」という
のは、1兆個を上回るセンサーを活用し、社会に膨大なセンサー
・ネットワークを張り巡らすことにより、地球規模で社会問題の
解決に活用しようとする壮大な構想です。
現在、世界の人口は、約72億人と推計されているので、毎年
1兆個以上というのは、一人当たりおよそ150個という数にな
ります。1年間に使われるセンサーは約1000億個なので、1
兆個のセンサーは年間需要の100倍ということになります。
このトリリオン・センサー・ユニバースに似ている試みがあり
ます。「スマート・ダスト」(賢い塵)です。これは、カルフォ
ルニア大学・バークレー校のクリストファー・ピスター教授が、
1998年に発表した構想です。「賢い塵」の構想は、次のよう
なものです。
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プロセッサ1基と、わずかなコンピュータメモリ、そして低電
力の無線トランシーバー、電源などが納められた「mote」(塵)
と呼ばれる小型センサを大量にばらまくことで、自然環境を観察
したり、ビルや工場などを監視したりして得た情報を、防災、環
境の観察、軍事目的などに利用しようというものです。この考え
は1990年代の末に提唱されたものですが、「mote」のコスト
やサイズ、エネルギー効率などの問題、通信の標準化の問題、セ
ンサから送られてくる膨大なデータをフィルタリング・解析する
ツールの開発の問題などもあり、現在のところ、コンセプトの一
部がセンサーネットワークとして、農場や工場などの監視用途で
使われているにすぎません。スマート・ダストではビルのコンク
リートや道路のアスファルトの中にも混ぜたりして、遠方の道路
の状態や建物の中の状態を把握するとか、空中に散布するという
アイデアなどもだされていたようです。 http://bit.ly/2xKnT3p
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センサーを利用する研究は、さらに意外な方向に発展しつつあ
ります。「センサーを内蔵した錠剤」です。抗精神病薬に使われ
ています。錠剤に埋め込んだ1ミリ角大のセンサーには、微量の
マグネシウムと銅が含まれており、服用すると胃液と反応して電
流が発生し、センサーから信号が医師に発信されるようになって
います。患者が薬を飲んだかどうかをチェックするのです。
グーグルは、涙に含まれる糖の値を測り、糖尿病患者の血糖値
を常時記録できるセンサー付きコンタクトレンズを開発していま
す。レンズはシリコーン製の樹脂でセンサーを組み込んだリング
状のアンテナが挟まれた構造になっています。これによって測定
した血糖値はスマホやPCに送られ、そこで管理をしたり、外部
に転送したりしています。
この他、人の身体につけて使うシート型スキャナや触角を持つ
人工皮膚なども開発されており、健康状態をモニタリングできる
ようにもなっています。 ──[次世代テクノロジー論/17]
≪画像および関連情報≫
●トリリオン・センサー時代に日本は巻き返し可能か
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VLSIシンポジウムは、LSIに関する最先端の成果が
毎年報告される世界最高峰の国際会議。「半導体のオリンピ
ック」と呼ばれる国際固体素子回路会議(ISSCC)は回
路技術のみ、国際電子デバイス会議(IEDM)はデバイス
技術のみを扱う。一方、VLSIは回路とデバイス技術の両
面から議論するのが特徴だ。
2016年の会議のテーマは「スマート社会への変革の兆
し」。半導体の微細化のスピードが鈍化する中で、システム
レベルのイノベーションが産業の変革を促すと見通す。従来
のように、汎用の半導体を量産するだけでは顧客のニーズを
十分に満たせない。会議では、システムを明確に志向した先
端半導体の論文が発表される。
なかでも、VLSI回路シンポジウムのジェフリー・ギー
ロウ実行委員長が「IoTによる産業エレクトロニクスの変
化が一つの焦点になる」と表明するように、スマート社会を
実現する大前提にIoT技術がある。
IoT分野の注目論文の一つが米インテルが発表する自己
給電可能な無線のセンサー端末だ。太陽電池で給電し、10
00ルクスと暗い室内の照明でも連続的に動作する。周囲の
環境から採取した微小なエネルギーを利用する環境発電(エ
ネルギーハーベスティング)技術を使って、完全無線による
自己駆動を実現した。 http://bit.ly/2yugRUv
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加速度センサー