2017年10月12日

●「イメルトが目指したGEの大変革」(EJ第4623号)

 大前研一氏によると、大企業はIoTに対応できないといって
います。自動車の所有者と自動車に乗りたい人がつながることで
実現した配車サービスのウーバー(Uber)──このアイデアを大
企業で実現させることはきわめて困難であるとして、大前研一氏
は次のように述べています。
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 もし、三菱自動車がこのウーバーのアイデアを思いつき、事業
化を試みても、関係者に説明するだけで5年、実現するには一世
紀かかるのではないだろうか。会社というのは、ストレッチでき
ないと思った方がよい。大企業でIoTに取り組むのであれば、
柔軟な頭をもった3人をピックアップし、半年に一回だけ報告す
るという条件で、あとは自由にさせるといった方法くらいしかな
いのである。──大前研一著『IoT革命/あらゆるものがイン
  ターネットにつながる時代の戦略的発想』/プレジデント社
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 大前研一氏のこうした厳しい主張にもかかわらず、唯一の例外
があります。世界に冠たる米国の製造業の巨人、ジェネラル・エ
レクトリック(GE)です。その立役者は、この8月1日付で退
任したCEOのジェフリー・イメルト氏です。
 イメルト氏は、2001年から2017年までGEのCEOを
務め、世界で一番激しい変革を断行した経営者です。2014年
10月にイメルトCEOは、次の発言をしています。
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 前夜、工業会社として眠りに就き、翌朝起きると、ソフトウェ
ア解析の会社になっているかもしれない。全ての工業会社は、ソ
フトウェア会社への劇的な転身を図らないと生き残れない。
           ──ジェフリー・イメルトGM/CEO
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 GEという企業は、ジェネラル・エレクトリックという名前か
らもわかるように製造業として発展してきた企業です。しかし、
イメルト氏の先代CEOであるジャック・ウェルチ氏の時代には
単なる製造業を脱却し、金融やメディア事業なども抱える超コン
グロマリットとして大きく成長してきたのです。つまり、製造業
からの変身に成功し、GEは大きく発展しています。
 ところがイメルトCEOはこの路線を大胆に変更し、2015
年4月に重大な発表を行っています。それは、金融事業からの実
質撤退と製造業への回帰です。だが、「製造業への回帰」といっ
ても過去のようなアナログな工場へ戻るのではなく、ソフトウェ
アに徹底的に注力することで、製造業を次のレベルに進化させる
ことをGEは狙っているのです。その具体的な目標として、イメ
ルトCEOは次の目標を掲げています。
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 2020年までにGEは、世界トップ10のソフトウェア会
 社を目指している。         ──イメルトCEO
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 具体的にいうと、2015年10月に設立してわずか4年のソ
フトウェア部門を「GEデジタル」として統括部門に昇格させ、
上記のように2020年までに世界トップ10入りを目指すと宣
言したのです。
 GEといえば、米国東海岸出身の伝統的企業ですが、2011
年にサンフランシスコ国際空港から車で約40分のところにある
ICT企業の聖地、シリコンバレーにソフトウェア部門をゼロか
ら立ち上げ、わずか4年間で、社員を1200人以上に増やした
のです。つまり、ICTに強い人材を求めて、シリコンバレーを
本拠地にし、実際にグーグルやフェイスブックなどからも多くの
人材を採用して技術陣を固めています。
 イメルトCEOは、どうしてこのような大転換を決断したので
しょうか。
 それは2009年のちょっとした会話でヒントを得たといわれ
ています。イメルト氏は、ニューヨーク州ニスカユナにあるGE
のグローバル・リサーチセンター本部で、科学者たちと会話をし
たとき、航空エンジンへのセンサー埋め込みの効果についての話
を聞いたのです。ある科学者は、イメルトCEOに、次のように
力説したといいます。
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 航空機エンジンは単に飛行機を飛ばすだけではありません。ひ
とたび回転をはじめると数兆バイトものデータを生成し、信じら
れないほど価値のある、エンジン内部の動作状態を覗き見られる
「窓」を与えてくれるのです。そこから得るインサイトを活用す
れば、エンジンのオペレーションを最適化したり、将来のより優
れたエンジンの開発につなげることも可能なのです。
                   http://bit.ly/2kF5ELA
─────────────────────────────
 この会話がヒントになって、イメルトCEOは、GEをまった
く新種の企業に変革させようと考えます。目指したのは、デジタ
ル・インダストリアル・カンパニーです。GEの専門分野である
産業分野の機器設備をネットワークにつなげることによって、生
産性の天井を解き放そうというのです。ハードとソフト──この
一見正反対に見える両者を融合させようというわけです。
 このときから8年間、イメルトCEOは、この一大テーマに取
り組み、GEをソフトウェア会社に転換させつつあります。しか
し、2017年8月1日をもって、イメルト氏は、CEOをジョ
ン・フラナリー氏に引き継ぐと宣言し、自身は会長に退いたので
すが、その会長職も10月2日には退任しています。この原因は
どうやら株価の低迷にあるといわれます。イメルトCEOの就任
時には40ドルであった株価は、最近は30ドル前後に低迷して
います。
 しかし、変革の方向性は間違っておらず、明日のEJでは、G
Eの変革の具体的内容について述べることにします。
            ──[次世代テクノロジー論/13]

≪画像および関連情報≫
 ●「GEになれなかった東芝」
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   GEになれなかった東芝という記事が日経ニュースメール
  で配信されたので開いてみると有料の講演なので興ざめした
  が、あまりにも分かりやすい話なので興味がわいた。私は東
  芝の仕事を何回かしたことがあった。その頃はまだ、東芝は
  元気な頃で昨今のような状態になるなど誰しも想像が出来な
  い時代であった。
   いくつかの事業部の仕事をした記憶があるが、一番スマー
  トだったのは医療チームからの仕事であった。CTスキャナ
  のネーミングシステムの依頼でネーミングとシステムを提案
  した。担当者はアウトプットのイメージとゴールを持ってい
  たようだったのでわれわれを上手くハンドリングして双方満
  足いく結果を出してプロジェクトは終了した。そのプロジェ
  クトは海外の市場向けのブランド開発だったので、厳しい商
  標チェツクをクリアした結果、大きな売上結びついた。今回
  の東芝の問題でいまでも医療部門は黒字を出している部門と
  聞いたが、当時の印象からすると当然のような気がした。
  その反対だったのはパソコン関連のプロジェクトであった。
  どんな内容だったか詳細は忘れてしまったが、スタッフの一
  人はわれわれのような外部のコンサルが入るのが気にいらな
  かったようで、提案するものに何かとケチを付けられた。挙
  句の果ては同じ課題を自分もやってのけて、自分の方がいい
  提案だというようなことをプロジェクト進行中に、やり始め
  た。考えてみれば随分と無駄なことをやっているプロジェク
  トであった。           http://bit.ly/2gu1p0Z
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ジェフ・イメルト氏/ジョン・フラナリ氏.jpg
ジェフ・イメルト氏/ジョン・フラナリ氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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