2についての説明は終わっています。今回は、3について考える
ことにします。
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1.利便性の向上と多様性を支える「道具としてのIT」
2. 効率や品質を高める「仕組みとしてのIT」
→3. 変革や創出を促す「思想としてのIT」
4.収益を拡大させ、成長を支える「商品としてのIT」
──斎藤昌義著
『未来を味方にする技術/これからのビジネスを創る
ITの基礎の基礎』/技術評論社
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第3は「思想としてのIT」です。
思想としてのIT──これはどういう意味でしょうか。
実は「思想としての〇〇」という表現は、実はよくあることな
のです。一番印象に残っているのは次の本です。
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西垣通著/1997年5月
『思想としてのパソコン』/NTT出版
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この本が出版されたのは1997年5月です。日本では、マイ
クロソフトから「ウインドウズ95」が発売されたのが1995
年11月であり、これを契機に一般家庭にPCが、いささかオー
バーな表現ながら、怒涛のように普及し、一大PCブームが盛り
上がっていたときです。これと並行して、インターネットも利用
者が急増していたのです。
『思想としてのパソコン』は、人とコンピュータの関係を研究
するキーマンであり、現代のICT社会を予告するような7人の
学者の先駆的な論文を紹介しています。「メメックス」というマ
シンを提唱したヴァネヴァー・ブッシュ、マウスの開発者として
知られ、現代のウインドウズのようなGUI──グラフィカル・
ユーザー・インターフェイスを実現したダグラス・エンゲルバー
ト、電子マネーや暗号通貨につながる概念に言及したフィリップ
・ケオーなど、錚々たる学者の論文が7つ紹介されています。論
文そのものなので、いささか堅いですが、きわめて興味深い内容
の本であるといえます。
最初に紹介されているヴァネヴァー・ブッシュの提唱する「メ
メックス」の構想は次のようなものです。
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ブッシュが描いた連想の航跡は、リンクによって鎖のようにつ
ながれた一連のマイクロフィルムのコマであり、これは格納され
ている順番とは全く関係ない。そこに個人的なコメントや枝分か
れした航跡を付属させることもできる。当時ブッシュは情報の索
引付けの方法を制限と考えており、人間の脳内で行われている連
想と似たような情報蓄積方法を提案したのである。
http://bit.ly/2xfRcuH
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このヴァネヴァー・ブッシュの構想は、後のハイパーテキスト
という概念の先駆けであり、これがベースになってウェブサイト
が実現しています。また、インプットした文書の検索やタグ付け
などの機能をひとつの装置が持つというイメージは、現代の「エ
ヴァノート」のアプリを連想させます。驚くべきことはブッシュ
がこの論文を発表したのが1945年(昭和20年)であること
です。その頃からこんな凄い思想があったのです。
この本で紹介されているひとりであるダグラス・エンゲルバー
トは、まさに現代のPCの使い方を1968年に次のようなプレ
ゼンをしています。これは大変有名なプレゼンです。
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コンピュータの画面の前に座った人間が、画面上の複数のグラ
フィカルな「ウィンドウ」を見比べながら、マウスやキーボード
を使って文章をリアルタイムに編集する。そして作成した文書を
遠隔地のコンピュータに送る。いまではごく当たり前の操作方法
だが、そのルーツはこのときのプレゼンにある。エンゲルバート
のプレゼンが、その後のコンピュータ開発に与えた影響は計り知
れない。現代を生きる私たちにとってなじみ深い「パソコン(パ
ーソナル・コンピュータ)」も、エンゲルバートなくしては考え
られない。 ──鈴木幸一著
『日本インターネット書記』/講談社
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世の中を一変させるようなある画期的なマシンや技術が発表さ
れたとき、それらの本質を見抜いて、将来それが人々の生活にど
のような影響を与えるのかについて考える必要があります。どの
ような時代でもそういうことを研究する人はいるものです。こう
いう視点が斎藤昌義氏のいう「思想としてのIT」の視点ではな
いでしょうか。ICTこそ、確実に未来を変えるテクノロジーで
あると考えるからです。
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ITは既存の常識を破壊し、「以前はまったく夢物語だったけ
ど、いまではかんたんにできること」を増やし続けています。そ
の新しい常識でものごとを考えるとき、これまでとは違う解釈や
発想が生まれてきます。そんな「思想」という役割をITは担っ
ているのです。「思想としてのIT」は、ビジネスを変革させ、
新たなビジネスを創出する原動力となります。
──斎藤昌義著の前掲書より
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すべてのビジネスプロセスをICTが行うことを前提としても
のごとを考えると、今までの常識が覆ります。その非常識な発想
をベースにものごとを考えると、新しいアイデアが生まれてくる
のです。それが「思想としてのIT」です。4は10日のEJで
取り上げます。 ──[次世代テクノロジー論/10]
≪画像および関連情報≫
●マウスを発明した男、ダグラス・エンゲルバート
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エンゲルバートが抱いていた思いは、人間と技術の進歩の
調和がずれ始めているということだった。電話やテレックス
のネットワークは世界中に広がり、情報は瞬時にやりとりが
できるようになっている。印刷のコストは下がり、大量に情
報を印刷して配布することも可能になった。そして、電子計
算機が登場し、複雑な計算も瞬時に行えるようになった。し
かし、一方で人間はどうだろうか。テクノロジーは急速に進
化しているのに、人間はまったく進化していない。これでは
いずれ、人間がテクノロジーの進化に置いて行かれてしまう
のではないか。
そうならないためには、人間が進化しなければならない。
しかし、生物としての進化は、簡単なことではないので、情
報機器を使いこなすようにして、情報武装しなければならな
い。そのためには、電子計算機を利用するのが最も適してい
る。紙とペン、電話は確かに人類が発明した素晴らしい道具
ではあるが、それでだけでは情報化社会は実現できない。エ
ンゲルバートはそう感じていた。だが、その電子計算機にも
問題がないわけではない。複雑な計算ができる計算機として
は優秀だったが、人間が使う道具として見るとまだまだ至ら
ないところが多かった。エンゲルバートが特に問題にしたの
が、リアルタイムと協働作業だ。 http://bit.ly/2xgko9L
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ダグラス・エンゲルバート