2017年10月03日

●「常識の大転換が起きる4つの変化」(EJ第4617号)

 9月26日のことです。掃除機メーカーとして世界的に有名な
英国のダイソンが、日本円にして1514億円を投じて電気自動
車(EV)に参入すると発表し、自動車業界に衝撃をもたらして
います。日本経済新聞の報道は次の通りです。
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 【ロンドン=篠崎健太】英家電大手のダイソンは9月26日、
2020年までに、電気自動車(EV)市場に参入すると表明し
た。主力のコードレス掃除機などで培った蓄電池やモーターの技
術を生かし、すべて独自での開発をめざす。世界の自動車大手が
しのぎを削るEVへの新たな異業種参入で、開発や販売競争は一
段と激しくなりそうだ。
 初代モデルの2020年までの投入を目標に、開発チームの増
強を急ぐ。ダイソン氏は、製品の詳細や販売目標などは言及しな
かったが、他社の既存EVとは「根本的に違ったものになる」と
の見通しを示した。英国のほか世界各地での販売をめざすとみら
れる。    ──2017年9月27日付、日本経済新聞より
                http://s.nikkei.com/2xJUFFM
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 日本の自動車業界には、この7月も、英国政府やフランス政府
が2040年までにガソリン車を全廃すると発表し、中国政府も
時期は明らかにしないものの、EVへの完全シフトを宣言し、大
衝撃が走ったばかりです。なぜなら、日本の自動車メーカーは、
EVは製造しているものの、現時点では水素自動車など、正反対
の方向を向いているからです。こういう動きこそデジタルトラン
スフォーメーションであるといえます。
 EVは基本的には「家電」ですから、掃除機メーカーが参入し
てきても何の不思議もないのです。これからも次々といろいろな
企業が参入し、競争はさらに激化するはずです。EVは、ガソリ
ン車ほどの高度な技術は必要がないとされ、最終的には価格競争
になる恐れがあります。トヨタ、日産をはじめとする日本の自動
車メーカーも対応を誤ると、日本の家電メーカーと同じ運命を辿
る可能性があります。それがデジタルトランスフォーメーション
の恐ろしいところです。デジタルトランスフォーメーションは、
既に次の4つの変化を生み出しつつあります。
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          1. サービス化
          2. オープン化
          3.ソーシャル化
          4. スマート化
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 4変化の説明に入る前に、ひとつお断りしておきたいことがあ
ります。生活やビジネスにおいて、人はさまざまな道具を使いま
すが、そういう道具を「機械」とか「システム」とか「マシン」
とかの言葉で表現します。ここではそういうものを「ICT」と
表現することにします。ICTにはもちろん、AI(人工知能)
などの先端技術を含みます。
 第1の変化は「サービス化」です。
 人は何かを造るために、これまで様々な機械や道具を手段とし
て使ってきましたが、近未来のビジネスでは、モノ作りのほとん
どの工程は、ICTが行うようになり、人はそれ以外のことを担
当するようになります。それが「サービス化」です。
 自動車のタイヤメーカーは、タイヤを製造し、そのタイヤを売
ることで稼ぐビジネスです。しかし、ICTが進化すると、走行
している車のパーツから様々な情報が送られてきて、それらを分
析できるようになります。IoTといわれる技術です。
 例えば、走行中の車のタイヤの空気圧や温度、走行距離などが
リアルタイムにわかると、メーカーは事前に異常を検知できるの
で、ドライバー通知して、事故を起こす前に修理できます。それ
ができるようになると、タイヤメーカーは、タイヤという製品を
売って稼ぐのではなく、安全な走行や、燃費向上(経費削減)の
サービスを提供するサービス業に転換するようになります。
 人々が求めているのは、手段ではなく、結果です。手段を所有
しなくても結果が手に入るのであれば、その方へ需要がシフトす
るのは、自然の流れです。これが「サービス化」です。
 第2の変化は「オープン化」です。
 「オープン化」というのは、情報システムの世界の言葉ですが
ここでいうオープン化とは、特定の企業が占有する技術や製品で
はなく、多くの人がフリー(無料)で関与できる技術や製品のこ
とをいうのです。その代表的なものは、インターネットとそれに
付随する様々ななサービスです。
 インターネットの利用自体は、プロバイダの経費を除くと、ほ
とんどフリーであり、だれでも利用できます。ブログ、フェイス
ブック、ツイッター、インスタグラム、LINEなどのSNSも
フリーで使えます。スマホが普及してからは、これらのサービス
の利用者は激増し、そういう環境のなかで、ウ―バーやエアビー
アンドビーなどのシェアリングエコノミーが育っています。時代
がオープン化を求めているといえます。
 既出の斎藤昌義氏は、オープン化について自著において、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 オープンであることが、もはや社会主義に近い感覚になりつつ
あります。自らがオープンなコミュニティの中で貢献し、リーダ
ーシップを示すことが社会的評価を高め、ビジネスを成功させる
原動力となることを多くの人が受け入れはじめています。
          ──斎藤昌義著『未来を味方にする技術/
  これからのビジネスを創るITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 日本のコマツ、ロールスロイスなどにこのような動きが見られ
ます。4の「ソーシャル化」、5の「スマート化」については、
明日のEJで述べます。 ──[次世代テクノロジー論/07]

≪画像および関連情報≫
 ●デジタルトランスフォーメーションをどう定義するか
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   デジタルトランスフォーメーションという言葉をどのよう
  に定義するか、企業の最高情報責任者(CIO)10人に尋
  ねてみたら、恐らく、10通りの答えが返ってくることだろ
  う。包括的なビジネス変革を促進するためのテクノロジープ
  ロジェクトをいくつも並べているところは大枠として共通し
  ているだろうが、それでもやはり、デジタルトランスフォー
  メーションを定義することは簡単ではない。
   確かにデジタルトランスフォーメーションでは、新たな収
  益源やビジネスモデルを追求するためにテクノロジーをどの
  ように使うかという面を、根底から考え直す必要がある。ま
  た、ビジネスに主眼を置いた哲学と、アプリケーションの高
  速開発のモデルとを組み合わせるという点で、部門間にまた
  がったコラボレーションも必要になる。しかし、多くの企業
  が行っている取り組みは、一見デジタルトランスフォーメー
  ションのようでも、実は、デジタルオプティマイゼーション
  (最適化)であり、新たなデジタルイニシアチブで、既存の
  サービスを充実させているにすぎない。結局、デジタルトラ
  ンスフォーメーションの定義に苦労した人の多くは、最終的
  には「見れば判断が付く」という言い方に落ち着く。
                  http://nkbp.jp/2wqu50B
  ───────────────────────────

ダイソン/マックス・コンツCEO.jpg
ダイソン/マックス・コンツCEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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