ことがあります。卸売市場の近代化を進めれば進めるほど、仲卸
業者が消えるという事実です。実際に海外の卸売市場には仲卸と
いう役割は存在しないのです。
現在、日本の「和食ブーム」を担っているのは、築地市場にお
ける500社を超える仲卸業者の存在であるといわれています。
思想家にして人類学者でもある中沢新一教授は、仲卸の存在につ
いて、次のように述べています。
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築地市場のユニークさは物流センターとしての機能だけに限定
されない。仲卸を中心にしてかたちづくられてきた「中間機構」
の中に、味覚をめぐる莫大量の身体的暗黙知が蓄積され、それが
いまも健全な活動を続けている。
食材にたいする「目利き」、魚体を扱う驚くべき職人技、料理
文化への繊細な配慮などによって築地市場は日本の食文化を根底
で支える存在になっている。築地市場は我々の宝物である。そし
てなによりも築地市場には未来がある。この未来を絶ってしまっ
てはならない。──中沢新一氏論文「築地アースダイバー」より
『現代思想』2017年7月臨時増刊号/青土社刊
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既に述べたように、諸外国の生鮮食料品を扱う卸売市場には、
仲卸業者はほとんど存在しておらず、日本のような中央卸売市場
は韓国と台湾にしかない独自のものです。これをもって、豊洲市
場移転推進派の人たちは、日本の卸売市場は遅れているという議
論をする人がいますが、この考え方は間違っていると思います。
なぜなら、日本が世界のなかで最も魚をよく食べる国のひとつで
あるからです。
世界176ヶ国で1人当たりの1日の魚介類消費量ランキング
というものがあります。FAO(国連食糧農業機関)の2012
年のデータにおける順位は次のようになっています。
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国名 消費量
第 1位:モルディブ 381グラム
第 2位:アイスランド 242グラム
第 3位:キリバス 198グラム
第 6位:日本 155グラム
第 7位:韓国 154グラム
第18位:フィンランド 101グラム
第27位:ベトナム 89グラム
第31位:中国 85グラム
FAO Statistics Division
http://bit.ly/2fBTMVE
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この順位を見ると、日本は、魚をよく食べる国において、先進
国のトップに立っています。ダントツ第1位のモルディブは、イ
ンドの南西に浮かぶ島国で、約1200もの島々から成り立って
います。もっとも食べる魚はカツオで、3食カツオということも
珍しくないといわれます。
それに比べると、日本は多種類の魚介類をさまざまな料理にし
て食べる国であり、魚介料理の豊富さに関しては世界に冠たる国
であるといえます。だから、いま世界で「和食ブーム」が起きて
いるのです。
したがって、日本の中央卸売市場は仲卸を大事にする市場であ
るべきです。既出の東京財団上席研究員の小松正之氏は、著書で
築地市場や豊洲市場をオランダのイムイデン漁港市場、オースト
ラリアのシドニー水産物市場、ニュージーランドなどのオークラ
ンド水産物市場と比較して、大きく遅れていることを指摘してい
ますが、それらの国よりも、多くの魚を食べる国である日本は、
もっと独自の市場でもよいと思っています。しかし、先端のAI
やIT技術は積極的に取り入れる必要はあると考えます。
豊洲と築地の2市場併用案について、築地市場協会の伊藤裕康
会長は、次のようにコメントしています。
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知事の発言は、比較的バランスの取れたものであったことは評
価したい。ただ、大づかみの方針が示されただけで中身はこれか
ら。都と話を詰め、理想的な市場に近づけたい。しかし、市場は
卸業者や仲卸業者などが一堂に会するものであって、2つの市場
は成り立たない。 ──築地市場協会の伊藤裕康会長
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伊藤会長は、市場というものは、大卸、仲卸、買出人が一同に
会さなければ機能しないといいますが、豊洲市場は、水産卸棟と
水産仲卸棟は315号線という道路で分断され、1・5キロも離
れています。その行き来は、道路地下のアンダーパスをターレー
で行うことになり、相当時間がかかります。
しかも、仲卸棟は4階建ての建物で、仲卸は1階、買出人は3
階と4階になっており、築地市場のように、とても「一同に会し
ている」とはいえないのです。大卸、仲卸、買出人が一同に会し
ている築地市場に比べて非常に不便です。
そのため、築地市場が再整備された後は、豊洲市場は、高度に
自動化された全館冷房の物流センターに改造して使い、整備後の
築地市場は、セリなどを行う一部の市場機能を移転し、買出人の
店舗を築地市場に戻して食のテーマパーク化するというのが、小
池知事のいう「築地は守る、豊洲は活かす」の考え方なのです。
東京五輪が終り、築地整備の終了する2025年までの約8年
間、その間の技術革新はきっと目をみはるものになるはずです。
この間の技術革新は、AI(人工知能)の力が加わるので、これ
までとは比べ物にならないほど、高速に進化します。そうなれば
豊洲と築地の距離の問題は解決しているはずです。7月3日から
書いてきた今回のテーマは本号が最終回です。長い間のご愛読を
感謝いたします。 ──[中央卸売市場論/最終回/057]
≪画像および関連情報≫
●豊洲へ市場は移転、築地は「食のテーマパーク」に!
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懸案の築地市場移転問題で昨日20日(2017年6月)
小池都知事が会見して、「豊洲への移転」「五輪後に築地を
再開発」という基本プランを明らかにした。ただ、具体的な
活用案は今後詰めるとしている。知事は、この問題を都議選
のテーマにしたいようだが、果たしてこれで票になるのかど
うか。知事が示したプランは、1)豊洲は総合物流拠点とす
る、2)築地は5年後をめどに「食のテーマパーク」など再
開発する、3)具体的な活用案は今後、事業者・都民と広く
検討する、というものだ。
つまり、「築地は守る。豊洲を活かす」。築地は五輪まで
に更地にし、2号線道路を通す。その後、築地は再開発──
だが知事は、「豊洲移転」とは言わなかった。実際は豊洲へ
市場機能を移すにしても、築地の当事者が依然、賛成・反対
に分かれている。
確かに築地の人気は高く、ブランド化もしている。日の入
場者4万2000人、CNNが選ぶ「世界の生鮮市場ベスト
10」の2位(1位はどこだ?)。観光客のスポットでもあ
る。ここから動きたくないという人たちもいる。さらに費用
の問題がある。豊洲移転に6000億円かかる。うち、44
00億円は、築地の跡地を売却して捻出する予定だったのだ
が、これを売らないとなると、どこかで捻出しないといけな
い。 http://bit.ly/2yeOlTt
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築地市場からの移転を待つ豊洲市場


