明後、改めて豊洲市場を視察しています。このとき、市場関係者
からは、知事に対し「安全宣言」を求めましたが、小池知事は、
消極的な姿勢に終始しています。おそらく小池知事は、「安全宣
言」は出さないと思います。それは、あくまで来年の豊洲移転が
一時的な移転であることを示唆しているからです。
9月11日のEJ第4602号で、豊洲市場について東京都発
行の「築地市場の移転整備/疑問解消BOOK」を使ってご紹介
しました。しかし、これは、豊洲移転を促進する東京都が作成し
ているハンドブックなので、明らかに豊洲市場の良い点に重点を
置いて紹介した内容になっています。
そこで、本当のところ実際はどうなのかについて、小松正之氏
の豊洲市場論をご紹介します。小松正之氏は、元水産庁の漁業交
渉官の経験があり、現在、東京財団上席研究員を務めておられま
す。小松正之氏は著書では、あくまで豊洲移転を前提としたうえ
で、豊洲市場の問題点を客観的に指摘しているからです。
小松氏は、豊洲市場の最大の問題点として、建物の配置と交通
アクセスの不便さを指摘し、次のように述べています。
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問題として一番目につくのは、市場機能の根幹をなす建物の配
置と交通アクセスの不便さである。豊洲新市場のメインの建物は
「水産卸売場棟(7街区)」「水産仲卸売場棟(6街区)」「青
果棟(5街区)」の3棟に分かれており、しかも水産の7街区と
6街区の間は都道(補助315号線)が分断している。
両街区をつなぐのは道路下に設けられた約100mの4本の連
絡通路で、通路幅は12〜36m、天井までの有効高さは2・5
〜2・9m。ここをピークの時間帯には何百台ものターレが行き
来するのである。また7街区と5街区の間も都道(環状二号線)
が走っている。今の築地市場の水産仲卸と青果仲卸の店舗間は数
分あれば着く距離であるが、豊洲では6街区の水産仲卸棟と5街
区の青果棟をはしごして買物すると、その間は優に地下鉄一駅分
はある。 ──小松正之著
『「豊洲市場」これからの問題点』/マガジンランド刊
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小松氏に指摘されるまでもなく、築地市場に比べて豊洲市場の
交通アクセスの不便さについては、最初からわかっていたことで
す。築地市場は、最寄りの都営大江戸線・築地市場駅に加え、東
京メトロ日比谷線・築地駅から徒歩5、6分。JR新橋駅からは
徒歩15分であるし、都営バスに乗れば6分で到着します。
これに比べて豊洲市場には、ゆりかもめの市場前駅があるだけ
で、天候悪化でよく止まるので有名です。そうすると、車で行く
しかありませんが、晴海通り一本しかないのです。もし雪が降れ
ば、築地を通り過ぎてから凍結しやすい「橋梁」を3本通らなけ
れば豊洲に着かないのです。ちょっとした台風が来ても、豊洲に
たどり着くのは容易ではないのです。
小松正之氏は、これに加えて、豊洲市場の問題点をさらに4つ
指摘しています。以下、内容を要約します。
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→ 1. 衛生・品質と温度管理
→ 2.情報の広域化とIT化の遅れ
3. 減少する入荷量と集荷力
4 .物流の近代化の大幅な遅れ
──小松正之著の前掲書より
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今回は1と2について、2と3は、明日のEJで解説すること
にします。
「1」について考えます。
豊洲市場は、完全密閉型になっています。温度管理は、3つの
棟でそれぞれ異なります。
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水産卸棟(7街区) ・・・ 10・5℃
水産仲卸棟(6街区) ・・・ 25・0℃
青果棟(5街区) ・・・ 23・0℃
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築地市場に比べると、室温が下がることになりますが、何のた
めの室温低下なのかがはっきりしないのです。おそらくコールド
チェーンを狙ったのでしょうが、働く人の健康には配慮している
のでしょうか。海外市場では、鮮度劣化を防ぐために0〜5℃と
なっています。
オーストラリアのシドニー水産市場では、温度による水産物の
劣化や腐敗を誰でも客観的に判断できる科学的基準で示していま
す。その結果、シドニー市場では次のような鮮度管理指針があり
−1℃から5℃の間の温度で管理することになっています。
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4℃では、0℃の2倍の速度で劣化・腐敗が進行する
10℃では、0℃の4倍の速度で劣化・腐敗が進行する
16℃では、0℃の6倍の速度で劣化・腐敗が進行する
──小松正之著の前掲書より
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「2」について考えます。
豊洲市場における商品に対する情報化と透明化は、先進諸外国
比べて非常に遅れています。日本では、水産物のセリや相対取引
への参加者は買出人に限定されていますが、ノルウェーやアイス
ランドなどの水産物市場では、一定の条件を満たしていれば、セ
リや相対取り引きに、PCを使って誰でも参加できるのです。そ
れほど、開かれた市場になっているのです。
そのためには、ITによる商品に対する情報化と透明化が不可
欠ですが、豊洲市場は、基本的に築地市場をそのまま持ってきた
だけであり、IT化には大きく遅れています。
──[中央卸売市場論/052]
≪画像および関連情報≫
●日本人に築地・豊洲への基本理解が不足/小松正之氏
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水産業の衰退に対し、水産行政が無為のまま時間をだらだ
ら過ごし、漁業者からの不満に対しては補助金で何とかごま
かし、基本的な漁業の法制度の改革をしないことに対して警
鐘を初めて鳴らした書籍「これから食えなくなる魚」(幻冬
舎新書)を出版したのが2007年5月であった。当時はと
てもセンセショナル(衝撃的)な出版物であった。その時の
編集担当者から、次は2年後に「「築地」を取り上げて書い
ていただけませんか」とお願いされた。築地は奥が深そうで
しかし、体系的な書物がないので、書きたい気持ちは大いに
あったが、まだ知識と経験が不足し、時期尚早と判断したが
気持ちの中に引っかかっていた。
その後、「日本の食卓から魚が消える日」(日本経済新聞
社)(2010年)の中で初めて流通や築地市場と豊洲新市
場へ移転に、「東京湾再生計画」(雄山閣)(2010年)
で外国市場との比較に触れた。私は農林水産省の役人時代か
ら、築地市場にはよく通う。今は尚更、足しげく通う。視察
と関係者との意見交換と教えを乞うためである。今は、年に
30回以上も通うし、築地の隅々まで見て漸く質問ができる
ようになったことは、私に築地市場や生鮮食品流通について
知識と経験が蓄積されてきたことを意味する。
ところで、私が水産庁課長や国際交渉担当参事官の時代に
部下とともに築地市場の視察に出かけたが、彼らは築地市場
の視察は一度で結構と言った。私には春夏秋冬そして日々顔
が異なる築地市場がとても魅力的で何度通っても苦ではなく
むしろ多大な至福であった。その思いは今でも変わらない。
http://bit.ly/2gWmSCI
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豊洲市場施設概要


