2017年09月07日

●「豊洲は築地市場の一時的な移転先」(EJ第4600号)

 2017年9月5日、都議会では築地市場の豊洲市場への移転
関連事業費約55億円を盛り込んだ補正予算案が可決されていま
す。これには、共産党、日本維新の会、東京・生活者ネットワー
クが反対しています。
 これによって、東京都は豊洲市場で追加の土壌汚染対策工事を
行い、来年秋に築地市場を豊洲市場に移転させる予定です。これ
には、小池知事に反対姿勢をとる都議会自民党も反対はできず、
補正予算案に賛成しています。しかし、これは必ずしも築地市場
そのものの移転とは限らないのです。
 現在、豊洲市場の建物の下は地下空間になっています。その床
は砕石層であり、そこに水が溜まっています。これから都が行う
土壌汚染対策追加工事の目的は、その水を完全に抜いたうえで、
ここにコンクリートを敷き、下から土壌汚染物質が上がってこな
いようにすることです。
 しかし、この追加工事で土壌汚染が止まるほど、豊洲市場の土
壌汚染拡散の状況は生易しいものではありません。何しろ豊洲市
場の土地は「形質変更時要届出区域」という汚染地域のレッテル
が貼られたままです。こんなところを首都東京の中央卸売市場に
すれば、国際的信用を失ってしまうことになります。
 したがって、小池知事は表面上は「中央卸売市場は豊洲市場で
ある」といっていますが、これは本音ではないはずです。その根
拠は、小池知事が3年9ヶ月もの長期にわたって環境大臣を務め
ていたことと関係があります。
 しかも、小池知事は、土壌汚染対策法(土対法)が施行された
6ヶ月後に環境大臣になっているのです。
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      土壌汚染対策法施行:2003年2月15日
   小池百合子氏都知事に就任:2003年9月22日
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 そのため小池知事は、当然のことながら、土対法に詳しいし、
熟知しています。小池氏にしてみれば、環境大臣を務めた東京都
知事として、石原都政でやったこととはいえ、汚染区域のレッテ
ルが貼られている豊洲市場に生鮮食品を扱う中央卸売市場は作り
たくはないはずです。さらに、小池知事は、豊洲市場は今後いく
ら土壌汚染対策を施しても、いわゆる「無害化」は困難であると
考えています。これについては、平田健正専門家会議座長もその
ことに言及しています。
 しかし、築地市場を再整備するには、現在の築地市場を一時的
にどこかに移転させる必要があります。これまで築地市場の再整
備がうまく進まなかったのは、代替地がなかったことが原因であ
るといわれています。
 ところが今回は、土壌の無害化こそ達成されてはいないものの
豊洲市場が完成しています。そこで最小限度の追加的汚染防止対
策を施したうえで、一時的に築地市場を豊洲市場に移転させ、東
京五輪が終了すると同時に、豊洲市場も含めたかたちでの新しい
スタイルの中央卸売市場を作るという構想を立てているのではな
いかと考えられるのです。したがって、「豊洲市場=中央卸売市
場」であるとは限らないのです。
 まさかと考える人もいると思います。しかし、この説を支持す
る人は少なくないのです。ニューホライズンキャピタル取締役兼
社長の安東泰志氏は、小池知事のいう「築地は守る、豊洲は活か
す」に関して、次のように述べています。
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 小池都知事は20日の記者会見で、市場移転問題について「築
地は守る、豊洲は活かす」と述べ、事実上、築地再開発・再整備
を軸とする方向性を打ち出した。
 豊洲市場は、築地市場の一時移転先として利用した後、冷凍冷
蔵・物流・加工等の総合拠点として用途転用することで湾岸地域
の物流センターとして発展させていくという。メディアの中には
豊洲に一時移転することをもって「豊洲への市場移転」と報じる
向きもあるようだが、そうではない。
 現時点で、「白紙の状態から市場機能をどうするか」と問われ
れば、市場環境の変化を踏まえるならば豊洲市場のような巨大な
設備を、しかも東京ガスの工場跡地という、市場に最も不向きな
場所に整備することなどあり得ない判断であろう。しかし、現実
には既に土地建物を手当てし、整備してしまった以上、次善の策
を考えなければならない。その観点からすると、筆者は今回の案
は非常に理に適ったものであると考える。
         ──安東泰志氏/  http://bit.ly/2wwXDMR
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 小池都政の市場問題PTの委員の一人である東北芸術工科大学
の竹内昌義教授は、築地市場関連雑誌によく論文を寄稿されてい
る人です。EJがよく取上げる『現代思想』の「築地市場」特集
にも「築地市場改修案」という論文が掲載されています。竹内教
授の「築地は守る、豊洲は活かす」についての論評です。
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 私は市場問題PTの委員として市場のあり方を検討してきた。
その上で、小池都知事の今回の築地、豊洲両方を活かすという案
を支持する。これはこれでよく考えられた案だ。この市場の問題
は、長きにわたって議論され、検討されてきた。その過程で多く
の誤解や思い込みが存在する。(中略)
 小池知事の発表は具体的ではないと言われる。確かに現時点で
見えていないことは多い。また、市場を2市場、並存できないの
も事実である。ここへきての、逆の誤解もある。築地が更地にな
るかのような印象を話す人もいる。誰もそんなことは言っていな
い。築地を食のワンダーランド化するにあたり、築地自体の建物
の資源も必要と私は考える。確かに具体的にはまだなっていない
部分が多くある。           http://bit.ly/2eJDHjx
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              ──[中央卸売市場論/047]

≪画像および関連情報≫
 ●具体策なし 小池知事「築地は守る&豊洲は生かす」は裏目
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   「知事が逃げた」――。20日行われた小池百合子都知事
  の会見で、記者の間からこんな失笑が漏れた。小池知事が満
  を持して発表した「築地市場移転」の最終案。表明したプラ
  ンは築地を豊洲に移転させる一方、さらに将来的に築地にも
  市場機能を持たせるというもの。「5年後をめどに築地を食
  のテーマパーク機能を持つ一大拠点に再開発する」というの
  だ。豊洲と築地の両市場が併存することを視野に入れている
  という。なんとも壮大な構想だ。
   ところが会見時間はわずか30分。しかも質疑応答は2人
  に限定し、時間もたったの4分だった。記者から「大事な問
  題だから、もうちょっとやりませんか?」との声が上がった
  が、小池知事は無視して会場を出て行った。
   「まさに“言語明瞭・意味不明”の会見でした。豊洲にい
  つ移転するのか、5年後に築地に市場機能を戻した場合、豊
  洲はどうなるのか、豊洲に業者の一部が残り、市場が2つに
  なっても弊害はないのかなど疑問は山ほどある。築地をどう
  つくり変えるのかも知りたいのに、十分答えないまま打ち切
  りになった。普段、オープンとか情報公開などと主張してい
  るのに、この日の小池知事は異常でした」(全国紙記者)
    「日刊ゲンダイデジタル」   http://bit.ly/2eDAi2d
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築地市場における「せり」の風景.jpg
築地市場における「せり」の風景
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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