2017年09月04日

●「使い勝手がすこぶる悪い豊洲市場」(EJ第4597号)

 ここまで豊洲新市場の用地の土壌汚染の劣悪さについて述べて
きましたが、既に完成している市場の建物についてはどうなので
しょうか。
 豊洲新市場の最大の問題点は、市場関係者の意見をほとんど聞
かないで設計され、建てられていることです。そのため、築地市
場ほどの市場を移転させようというときに必要とされる慎重さと
配慮がほとんど感じられない設計になっています。
 これは、豊洲の地形の問題ですが、豊洲新市場は環状2号線と
315号線が直交しており、市場の建物は次のように3分割され
ています。添付ファイルも参照してください。
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     1.    青果棟 ・・・・・ 5街区
     2.水産仲卸売場棟 ・・・・・ 6街区
     3. 水産卸売場棟 ・・・・・ 7街区
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 この場合、卸売と仲卸は、仕事上緊密な連携が必要ですが、豊
洲市場の場合、315号線という幹線道路で隔てられているので
道路の下に3本の「アンダーパス」が設けられています。しかし
これで1日に2000台ものターレー(小型運転車ターレット)
がスムーズに行き来できるかどうか非常に疑問です。築地市場の
ように、流れるような動線は望むべくもないのです。
 これについて、築地市場に詳しい中沢新一氏は、豊洲の卸売棟
と仲卸棟の問題点について、次のように述べています。
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 仲卸棟は4階建ての建物になっている。水産仲卸の仕事場は1
階の部分、買い出しが3階と4階で、そこに駐車場が付属してい
る。卸売棟から仲卸棟までは、1・5キロほどの外周道路によら
なければたどり着けないようになっているので、荷受した荷物は
トラックなどで仲卸棟に運び込まなければならない。仲卸棟1階
で荷分けされた水産物の荷は、ターレに乗せられ、3階と4階の
買い出し人のもとに運ばれる。このときターレは、建物の外に接
してつくられたループ状の渡り廊下を登っていかなければならな
い。築地市場内を自在に動き回っていたターレもこの窮屈な渡り
廊下の中では一方向に流れていくしかなく、多くの仲卸はかえっ
て事故が起きやすくなるのでは、という懸念を抱いている。
       ──中沢新一氏の論文「築地市場の『富』」より
      『現代思想』2017年7月臨時増刊号/青土社刊
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 豊洲新市場の売り場面積は築地の売り場の1・1〜1・2倍で
あり、建物全体では1・7倍という「広さ」が強調されていたの
ですが、実際の豊洲の売り場には仕切りが設けられるなど、非常
に使い勝手はよくないのです。
 中沢新一氏は、「豊洲新市場は広い」という東京都の触れ込み
に疑問を持っています。売り場の設計がそれを使う人の立場に重
点をおいて設計されておらず、自由に広く使える空間が狭くなっ
ているからです。このような豊洲新市場の問題点を中沢氏は、次
の3つにまとめています。なお、読み易くするため、文章は一部
リライトしてあります。
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1.魚市場では、全国から運ばれてきた魚を並べ、選び、店に運
  ぶ、を繰り返す。荷物は移動するだけでなく、広げて仕分け
  する必要があるが、その空間が確保されていない。
2.物流の中心であるターレーの動き回れるスペースについての
  考慮がほとんどなされていない。そのため、集荷と荷分の作
  業の流れが、いちいち寸断され、非効率的である。
3.建物が立体構造になっているため、品物は縦方向に動かす必
  要がある。だが売れた品物を上階に運ぶためのエレベーター
  は7基、スロープは3本と決定的に不足している。
4.店舗のスペースが築地店舗よりも狭い。そのためマグロのよ
  うな大きな魚を切るのが不便であるなど、使い勝手がよくな
  い。使い勝手が悪いと、コストアップにつながる。
       ──中沢新一氏の論文「築地市場の『富』」より
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 考えられないことですが、東京都は何から何まで、ごく一部の
市場関係者を除いて、豊洲関係の情報を徹底的に隠しまくったの
です。市場関係者は、設計図を見せて欲しいと都に要求しますが
東京都は拒否しています。設計図は、2011年6月に日建設計
から東京都に納品されています。
 築地の業界紙「日刊食料新聞」は、都条例に基づいて情報公開
請求を出したのですが、東京都は全面黒塗りの設計図を出し、非
開示を貫いたのです。「日刊食料新聞」はこれを不服とし、裁判
になったのです。おかしな話です。情報公開請求は、内容を知る
ために行うのに、内容が全面わからないようにして返しても、開
示したことになることです。裁判は2年にわたって行われ、東京
都が敗訴し、やっと設計図は公開されたのです。
 豊洲新市場は、土壌汚染対策費を除いても莫大なカネがかかっ
ています。それでいて、その使い勝手は最悪なのです。市場関係
の意見を聞かないで作ったからです。仲卸業務を営む中澤誠氏は
その設計について次のように批判しています。
─────────────────────────────
 極端な話で言えば、お寿司屋さんがサシミのツマを買いに行く
にも、歩いて水産から青果に買いに行けない市場だということで
す。市場内の物流用ルートがまったくつながっていないので、一
度外に出て、車に乗って外周道路を通って行かないと買えない。
こんなことは論外です。買い物しやすい、しづらい、という話以
前に一度外に出てからでないと、買い回りがでない、ということ
です。         ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/044]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲移転問題は「公害紛争」/室伏謙一氏
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   築地市場の豊洲新市場への移転問題は、当初移転を予定し
  ていた2016年11月7日を前に、小池知事が移転延期を
  決定したことを契機に、一気に注目を集めるようになった。
   小池知事は移転延期の理由として、@安全性への懸念、A
  巨額かつ不透明な費用の増大、B情報公開の不足を挙げてい
  る。このうち、@は言うまでもなく生鮮食料品を取り扱う豊
  洲新市場の敷地の土壌が汚染されており、食の安全や健康へ
  の影響が懸念されるということ、Aは整備・移転費用がなぜ
  そんなに大きな規模になったのか精査し、都民に説明する必
  要があるということ。
   延期決定の発表以降、この@とAに関するものを中心にメ
  ディアでは情報が飛び交っている。毎日どころか1日に数度
  新しい情報がもたらされることもあり、その度に東京都をは
  じめ、関係者の発言や説明は二転三転。多くの国民は、一体
  どこに真実があるのか?と思っているのではないだろうか。
   確かに、@及びAを中心に情報が飛び交っているといって
  も、問題の核心に迫るものがあるのかと言えば、まだそこに
  は至っていないというのが実情であろう。どころか、豊洲移
  転問題は一体何が問題なのかさえもみえにくくなっているよ
  うに思われる。筆者には、整備・移転費用の大きさもさるこ
  とながら、一義的には敷地の土壌汚染を巡る問題に思える。
  では、土壌汚染を巡る問題とは?漠然と食の安全、健康への
  影響や風評被害で豊洲市場経由の生鮮食料品が売れなくなる
  といった事柄が想定できそうだが、あいまいさは否めない。
                   http://bit.ly/2esj0oI
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豊洲新市場配置図.jpg
豊洲新市場配置図
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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