2017年08月31日

●「9回目地下水汚染調査が悪い理由」(EJ第4595号)

 そもそも東京都は、改正土壌汚染対策法で「形質変更時要届出
区域」に指定されるような土地を築地市場の移転用地として購入
すべきではなかったのです。この決断をした石原慎太郎都知事と
それを後押しした都議会与党の責任はきわめて重大です。
 なぜなら、中央卸売市場が形質変更時要届出区域であることは
生鮮食料品の安全・安心のうえで、きわめて問題があり、かつ対
外的にマイナスです。そこで東京都は、形質変更時要届出区域の
指定を外すため、改正土対法に基づき、土壌汚染対策を行い、そ
れに加えて、2年間にわたる地下水の水質モニタリング調査を実
施しています。2年間の調査で測定値が環境基準以下であれば、
形質変更時要届出区域の指定が外されるからです。
 問題はその地下水のモニタリング調査です。2年間の地下水モ
ニタリング調査が開始されたのは、2014年11月からです。
同じ月に第18回の技術会議で汚染対策工事完了の確認が行われ
ています。ちなみに同年2月に舛添都政がはじまっています。
 この地下水モニタリング調査は、全部で9回が行われています
が、その8回目が終了し、9回目の調査結果が出る前の2016
年11月7日に舛添知事は、豊洲新市場開場を決めています。し
かし舛添知事の突然の辞任で2016年8月に小池百合子氏が都
知事に当選し、小池都政がスタートしています。そして、小池知
事により、築地市場移転の延期が決断されます。これら9回にわ
たる地下水モニタリング調査は次の企業に発注されています。
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  ◎第1回〜第3回
   環境計量:株式会社日立プラントサービス
   試料採取:株式会社日水コン
  ◎第4回〜第8回
   環境計量:ユーロフィン日本環境株式会社
   計量証明:IASジャパン株式会社産業分析センター
  ◎第9回
   環境計量:湘南分析センター
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 地下水モニタリング調査結果は、第1回〜第8回までの調査で
は、汚染濃度はすべて環境基準以下に収まっています。だからこ
そ、当時の舛添知事は、東京五輪用の道路のこともあるので、ど
うせ第9回目の調査結果も環境基準以下に収まると判断し、その
結果の出る2017年1月まで待たず、豊洲移転の時期を11月
7日に決めたと考えられます。
 しかし第9回の調査結果は衝撃なものでした。調査地点201
ヶ所のうち、72ヶ所という広範囲で。環境基準値を超えるベン
ゼンやシアンが検出されたからです。とくにベンゼンにいたって
は、基準値の79倍とこれまでにない濃度を検出したのです。
 事態を重く見た小池知事は、平田健正氏を座長とする専門家会
議を再招集し、原因究明を命じたのです。
 専門家会議は、急に数値の跳ね上がった第9回の調査結果は暫
定値として、メンバーが立ち会いの下で、地下水の採取、環境計
量などの調査を行い、2017年3月19日に第10回目の地下
水モニタリング調査の結果を発表しています。3月19日付の日
本経済新聞は、次のように報道しています。
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 東京都の豊洲市場(江東区)の土壌汚染対策に関する専門家会
議が、19日開かれ、地下水モニタリングの再調査結果を公表し
た。再調査の対象となった29地点のうち、ベンゼンは最大で飲
み水の環境基準の100倍を、ヒ素は同3・6倍を検出した。シ
アンは18地点で検出した。(中略)
 再調査は2回に分けて実施。数値の精度を確保するため、4つ
の検査機関で分析した。再調査結果を9回目結果と比べると、検
出濃度が高まった地点と低くなった地点がまざっており、同会議
の平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は「(地下
水の汚染状況は)上がったり下がったりなので、どちらの傾向と
も言えない」との見方を示した。 http://s.nikkei.com/2vuZqPs
    ──2017年3月19日付、日本経済新聞(電子版)
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 9回目の暫定値とその再調査の数値が跳ね上がった原因として
は、次の2つが考えられます。
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 1.1〜8回までの調査と9回、10回の調査に調査手法の
   違いが考えられること
 2.9回以降の調査は地下水管理システムが作動し、地下水
   の流れが変わったこと
─────────────────────────────
 結論からいうと、「1」は原因としては考えられないといわれ
ます。地下水の採取や環境計量の方法については、改正土対法に
定められており、調査会社による多少の違いがあったとしても、
そういう人為的な誤差は、出てもせいぜい数倍程度であり、環境
基準値79倍もの汚染が誤差として出るはずがないからです。
 そこで考えらせれるのは「2」です。地下水管理システムは、
2016年10月14日にはじめて稼働しています。9回目の地
下水の採取は、その後の11月24日と30日に実施されている
からです。汚染処理の専門家は次のように述べています。
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 観測用の井戸は筒状で、スクリーン(網)を通して土壌中の水
が浸み込んでくる構造になっている。地下水管理システムは水を
汲み上げると、地中の水が井戸に向って移動する。水に溶けた状
態で残っていた汚染物質が井戸に吸い寄せられ、あちこちの井戸
で観測された可能性が高い。基準値79倍のベンゼンは、土壌汚
染対策で取り切れていなかった汚染と見られる。
                  http://nkbp.jp/2wV4bW8
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              ──[中央卸売市場論/042]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲市場の9回目の地下水モニタリング調査
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   豊洲市場の「地下水モニタリング調査」をめぐり、環境基
  準の79倍となるベンゼンなどが検出された、9回目の調査
  を担当した業者が都の指示により、過去8回とは違う手順で
  調査していたことを4日の都議会の委員会で明らかにしまし
  た。都は業者に対し、過去とは違う手順で行うよう伝えたこ
  とを認めました。豊洲市場の問題を審議する都議会の特別委
  員会は、平成26年から2年間にわたって、合わせて9回行
  われた「地下水モニタリング調査」を担当した業者を参考人
  として呼んで、質疑を行いました。
   この調査では、検出された有害物質が7回目までは環境基
  準を下回ったのに対して、8回目はわずかに上回り、さらに
  9回目では環境基準の79倍となるベンゼンなどが検出され
  ました。このため、4日の参考人の質疑は、一連の調査が適
  正だったかを焦点に進められ、9回目の調査については、担
  当した業者の統括部長が出席しました。
   モニタリング調査では、まず井戸に溜まっていた地下水を
  取り除く、「パージ」と呼ばれる作業を行ったあと、新たに
  井戸に溜まった地下水を採って分析することになっています
  が、統括部長は都の指示により、パージで取り除いた地下水
  そのものを分析に回していたことを明らかにしました。
                   http://bit.ly/2wbcagZ
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地下水モニタリング調査の結果を説明する平田座長.jpg
地下水モニタリング調査の結果を説明する平田座長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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