2017年08月29日

●「なぜ都は盛り土なしを隠したのか」(EJ第4593号)

 豊洲新市場の建物の地下に盛り土がなく、広大な地下空間が存
在していたという事実──小池都政がはじまってこのことが明ら
かになると、「盛り土か、地下空間か」の議論がはじまり、都政
ににわかに注目が集まります。テレビのワイドショーに連日取上
げられ、さまざまな議論が展開されたのです。
 しかし、この問題の本質は、専門家会議提言の盛り土が地下空
間に変更され、工事が行われたことを東京都が市場関係者や一般
都民に隠していたことにあります。たとえ「盛り土」が専門家会
議の提言であっても、都が諸般の事情から変更することは十分あ
り得ることです。盛り土をやめて地下空間に変更したのであれば
なぜそうする方がよいのかについて市場関係者と一般都民に説明
し、納得してもらえばよかっただけのことです。
 ところが東京都はそうしていない。それどころか設計図を盛り
土があるものと地下空間になっているものと2種類用意し、巧妙
に使い分けています。すなわち、建築関係者には地下空間のある
正規のものを示し、市場関係者に対しては盛り土のあるもの、そ
して一般都民には、ホームページなどで盛り土のある設計図を公
開しています。つまり、東京都はこのことで、市場関係者と一般
都民を騙したことになります。
 東京都はなぜそのようなことをしたのでしょうか。ネットなど
では、多くの人がこれについて書いていますが、ひとつだけ真実
に迫っているレポートを発見しました。それが、ジャーナリスト
/藤野光太郎氏の次のレポートです。
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  議事録で判明!豊洲「盛り土」が「空間」に化けた理由
             ジャーナリスト/藤野光太郎氏
                 http://bit.ly/2wPyUDK
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 以下、藤野光太郎氏のレポートをベースにして、EJが収集し
た情報も加えて、この問題を推理することにします。
 築地新市場の問題には、次の2つの土壌汚染関係の条例と法律
が絡んでいます。
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   1. 環境確保条例/2001年10月 1日施行
   2.土壌汚染対策法/2003年 2月15日施行
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 東京都の「環境確保条例」については、7月28日付のEJ第
4572号と7月31日付のEJ第4573号で詳しく書いてい
ますが、東京都が東京ガスから豊洲の土地を手に入れるために、
この条例は重要な役割を果たしています。
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 ◎7月28日付のEJ第4572号/「東京ガスを不当に儲
  けさせる内容」         http://bit.ly/2v1XbGr
 ◎7月31日付のEJ第4573号/「東ガスのシナリオに
  屈した東京都」         http://bit.ly/2v9wG1x
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 東京ガスは、当初ブラウンフィールドになることが確実な豊洲
ガス工場の跡地は売却するつもりはなかったし、売れるはずがな
いと考えていました。なぜなら、売却後に必ず生ずると思われる
土壌汚染の対策費用負担が耐えられないと判断したからです。そ
のため、東京ガス独自の土地の利用計画を策定していたのです。
 そこに東京都から豊洲の土地を買いたいという話があり、最初
は真剣に取り合わなかった東京ガスでしたが、石原都政になって
浜渦副知事から水面下での折衝を求められると、それに応ずるよ
うになります。
 2000年の暮れに浜渦氏から密かに持ちかけられた話は、東
京ガスにとって衝撃的なものでした。それは環境省が「土壌汚染
対策法」という法律の制定を準備しているという情報です。そし
て、東京都はそれに先駆けて土壌汚染対策に関わる条例を作るこ
とになっているが、いま売却を決断すればその条例に基づいて土
壌汚染対策を行うことになり、それは、国の土壌汚染対策法より
もはるかにゆるい基準で汚染処理が可能であるという話です。ま
さにこの条例が「環境確保条例」です。
 確証はないのですが、後で問題になる瑕疵担保条項の免除につ
いての密約もこの水面下の交渉で約束されていたと思われます。
これによって東京ガスは、豊洲の土地の売却に当たっての土壌汚
染対策は、土対法ではなく、東京都の環境確保条例で実施し、そ
の総額はたったの108億円で済んでいるのです。東京ガスは後
から78億円を追加支出し、土壌汚染対策費は合わせて180億
円負担しています。その代り、東京都は用地取得後の土壌汚染対
策費として858億円を支出していますが、それでも汚染は除去
できず、さらなる支出が必要になっています。これは本来東京ガ
スも負担すべき性格のコストですが、東京ガスとの売買契約には
瑕疵担保条項がないのです。
 さて、土壌汚染対策法は、2003年2月15日に施行されて
います。皮肉な話ですが、東京ガスはゆるい基準の環境確保条例
に基づき汚染処理を済ましているのに、豊洲の土地を購入した東
京都は、条例よりもはるかに厳しい基準の土対法で土壌汚染を処
理しなければならなくなっています。
 さらに土対法は、2010年4月1日に大幅に改正され、その
基準はさらに厳しくなっています。実は、このことと盛り土をや
めて地下空間を作ったこととは関係があるのです。
 土対法は、環境確保条例に比べれば、きわめて厳しい基準です
が、改正土壌汚染対策法(改正土対法)から見ると、ゆるゆるの
基準なのです。これについては明日のEJで述べます。
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     土壌汚染対策法/2003年 2月15日施行
   改正土壌汚染対策法/2010年 4月 1日施行
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              ──[中央卸売市場論/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「豊洲の地下空間の謎」/小笠原誠治の経済ニュースゼミ
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   豊洲の主要建物の地下が空間になっていることが謎となっ
  ています。何故こんなところに特別な用途もない空間を設け
  たのか、と。
   それに対し、東京都は、配管のためだなどと説明していま
  すが・・・どうにも腑に落ちません。仮にそれがそうだとし
  ても、では、何故配管のため地下空間を作ったことを隠して
  いたのか、と。
   対外的には、主要建物の下も4・5メートルの盛り土がな
  されたことになっていたからです。おかしいでしょう?費用
  を浮かすためだったのか、なんて声も上がっていますが、私
  はそれは違うと思います。
   では、何故地下空間を作ったかというと・・・
  新しい市場が稼働し始めた後、万が一、新たに環境基準を超
  える汚染物質が計測された場合に備えたのではないかと、私
  は想像します。
   どういうことかと言えば、東京都の担当者たちは、地下2
  メートルまでの汚染された土壌を掘り出し、そして、その上
  に4・5メートルのきれいな土を埋めることによって汚染対
  策は万全を期すことができると対外的に説明していたものの
  仮に新市場が稼働した後、基準値を超える汚染物質が計測さ
  れたような場合、主要建物の地下を掘り返す必要などが生じ
  る訳ですが、そうなると市場を通常どおり稼働させることが
  物理的に不可能になり、生鮮食品の取引に重大な影響を及ぼ
  し兼ねないことを懸念してのことだと思うのです。
                   http://bit.ly/2wGGhyb
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豊洲新市場の地下空間.jpg
豊洲新市場の地下空間
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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