2017年08月25日

●「豊洲市場の土壌汚染把握は不十分」(EJ第4591号)

 東京都が築地市場から豊洲新市場への移転に関してついたウソ
はたくさんあります。ここまでそのウソのいくつかについては指
摘してきております。一度ついてしまったウソは、そのウソを覆
い隠すために、さらに大きなウソを何回もつかねばならなくなっ
てしまうものです。
 なかでも絶対に許せないウソは、建物が建ったあとでは、どう
することもできないウソです。そういうウソは2つあります。既
に指摘している事実ですが、改めて、新しい観点から考察を加え
ることにします。
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    1.「透水係数」を大幅に改竄していること
    2.「盛り土」をせず、地下空間にしたこと
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 今回は「1」について、少していねいに検証します。
 少しややこしい話になりますが、豊洲新市場が中央卸売市場と
して使えるかどうかの判断の基準になりますので、しばらくお付
き合いください。
 「透水係数」というのは、各地層の水の通しやすさをあらわす
指標です。透水係数の数値が高ければ水を通しやすいし、低けれ
ば、通しにくいのです。さて、土壌汚染を調べるボーリング調査
では、土対法の規定により、地層の試料を次のように採取するこ
とになっています。
 まず、地表から50センチの土壌を採取します。それ以深につ
いては、10メートルまで、1メートルごとに土壌を機械的に採
取していく必要があります。しかし、途中に水がたまっている層
(帯水層)がある場合、その底面が難透水層であるときは、その
底面までの試料を採取すればよいことになっています。しかし、
これは汚染が連続していないことを前提としています。
 ここで「難透水層」とは、既に述べたように、水を通しにくい
粘土質の層のことをいいます。つまり、この難透水層が底になっ
ている帯水層は、それよりも下に汚染は拡散しないので、帯水層
の底面までの試料でよいことになっています。
 それでは、帯水層の底面が難透水層であるかどうかをどのよう
にして調べるのでしょうか。
 それには透水性測定機器を使って調べます。この場合、難透水
層の条件は土対法では、次のように決められています。
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 透水係数が「1.0×10のマイナス6乗センチ/秒」 より
 小さいとき、難透水層とする。
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 東京都はこの調査を行い、採取した31検体の透水係数を次の
ように報告しています。
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     1.08×10のマイナス7乗センチ/秒台
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 数値の意味は難解ですが、東京都はデータを大きく書き換えて
います。専門家会議ではその数値を真正なものとして、地下10
メートル以内の難透水層の存在を認め、土壌汚染対策を決めてい
ます。それは、それだけゆるい対策になっていることを意味しま
す。これについて、一級建築士の水沢和子氏は、次のようにコメ
ントしています。
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 一番危険側の数値を1ケタ安全側に書き換えていたのですから
「データ改ざん」といわれても仕方がないでしょう。仮に転記ミ
スだとしたら、都の管理能力が疑われ、都の提出した資料すべて
の信憑性にかかわります。          ──水谷和子氏
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 難透水層の決定にはもう1つ条件があります。それは、「難透
水層は切れ目なく連続している」という条件です。難透水層が連
続しているかどうかは、豊洲新市場の全域にわたって調べる必要
がありますが、東京都は約40ヘクタールある広大な市場用地内
で、70ヶ所について調べたに過ぎないのです。
 これについて、東京都の担当者に問うと、担当者は次のように
答えています。
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 東京湾の埋立地である豊洲の地層の成り立ちを考えると、難透
水層は一定の連続性を持っていると考えるのが常識。それにボー
リング調査の結果をふまえて総合的に判断しました。専門家会議
も認めています。             ──東京都担当者
                ──永尾俊彦著の前掲書より
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 土対法において定められている上記の土壌汚染調査は「無単元
調査法」といい、この方法では、地層を正確に把握できないとさ
れ、汚染も把握できないといわれます。NPO日本地質汚染審査
機構理事長の楡井久茨木大学名誉教授は、無単元調査法について
次のように述べています。
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 土対法は(無単元調査法によって)骨抜きにされ、むしろ汚染
の拡大に寄与している。     ──楡井久茨木大学名誉教授
                ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 それではどうすればよいかについて楡井教授は、地層を一つの
単元とみて、地層ごとに汚染を確認する「単元調査法」を提唱し
ています。単元調査法は、病巣をレントゲンで撮るように、地層
を透視図で診断する方法です。東京都の調査は問題のある土対法
の無単元調査の数値を改竄し、難透水層の連続性についてもきち
んと調査しておらず、土壌汚染は相当びどい状態で残っていると
思われます。        ──[中央卸売市場論/038]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲市場の土壌汚染対策の問題点/「週刊金曜日ブログ」
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   東京都は、豊洲市場用地(江東区)で、土壌汚染対策法施
  行規則で定められた地下水を通しにくい粘土層の上端(帯水
  層の底面)の土壌の試料採取を211箇所でやっておらず、
  発がん性物質ベンゼンの汚染調査をしていなかった。201
  6年10月15日に築地市場(中央区)内の講堂で開かれた
  豊洲の土壌汚染対策を話し合う専門家会議(座長=平田健正
  ・放送大学和歌山学習センター所長)第1回の審議の中で、
  都が初めて明らかにした。
   都内在住の一級建築士・水谷和子さんが、都に開示させた
  資料から、「ベンゼンによる汚染の可能性が高いのに、都は
  333箇所で帯水層底面の試料採取をしていません」と昨年
  8月に都庁で記者会見を開き、独自に作成した試料未採取箇
  所の分布図も公表、指摘していた。都はこれまで試料を採取
  していない箇所があることは認めていたが、箇所数は明らか
  にしていなかった。
   2010年に土壌汚染対策法が改正され、帯水層の底面の
  試料採取が義務付けられたが、都の調査は08〜09年に行
  なわれたもので、一部を除いて帯水層底面の試料採取をやっ
  ていなかった。          http://bit.ly/2w6xYIK
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楡井久茨城大学名誉教授.jpg
楡井久茨城大学名誉教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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