が進まず、焦っていたように感じます。国会議員より自治体の首
長の方が、国のトップのようなものだから何でもできるといわれ
ますが、それには議会をコントロールする必要があります。
日本では、憲法93条で、地方自治体の首長と地方議員を住民
が直接選挙で選ぶ「二元代表制」をとるよう定めています。二元
代表制では、議員は法律や予算などを審議・決定する権限を有し
ますが、その執行は行政の長が責任をもつため、立法権と行政権
の分離が徹底化されるといわれます。
石原知事の2期目(1999年4月〜2007年3月)までは
都議会は自公両党が過半数を握っており、なかでも自民党の力が
強く、とくに当時議長の内田茂氏の力が突出しており、知事とい
えども内田氏の了解なしにはことが進まなかったのです。当時野
党第一党の民主党(当時/後の民進党)も、野党というよりも、
与党の自公両党に近いスタンスだったといえます。
そこで石原知事としては、都議会自民党が死守している最大の
利権である福祉関係の利権のひとつを摘発しようとしたのです。
これが東京都社会福祉総合学院をめぐる事件です。石原知事と浜
渦副知事は、この摘発に乗り出そうとします。
2005年1月20日のことです。都庁知事室には、包括外部
監査人の守屋俊晴氏(公認会計士)が、監査結果の事前報告にき
ていました。しかし、監査人からは、社会福祉総合学院について
詳しい説明がなかったので、浜渦副知事は、社会福祉総合学院に
ついて詳しい説明を要求します。
その翌日の21日、再び守屋監査人が補助者の公認会計士を伴
い、浜渦副知事室を訪問し、どのような書類を作成するか知事の
リクエストを浜渦氏に求めたところ、副知事からは「時系列につ
いて報告して欲しい」という要望が出されたといいます。
2月2日になって、包括外部監査人から「監査報告概要版の補
足説明」という書類が届けられます。そこには、次のようなこと
が書かれていたのです。
─────────────────────────────
◎「監査報告概要版の補足説明」
敬心学園(社会福祉事業団から物件を借りている学校法人)の
収益事業に対して都が補助金を出していることにもなる。土地と
建物の財産的価値を考慮に入れた賃貸料で契約できるように交渉
し、それができないならば5年間の賃貸借契約の期間満了をもっ
て、更新せず、全庁的に本件資産の有効活用を図るなど、抜本的
な対策を講じる必要がある。
──「都政新法報」 http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
社会福祉総合学院問題を、補助金の不正疑惑とみるかどうかは
見解の分かれるところですが、知事サイドは不正であると考えた
のです。しかし、不正とする以上は、もっと証拠を揃えるべきで
あり、その根拠とされる書類(上記)を監査人に要求して作らせ
ているところから、都議会自民党はこれを石原知事らによる「疑
惑の捏造」と判断したのです。
しかし、知事サイドとしては、この問題を議会で取り上げるに
は野党に質問してもらう必要があります。石原知事の「けがにん
が出る」発言の直後に浜渦副知事は民主党の富田政調会長を自室
に呼んで次のように質問を要請します。2005年2月25日の
ことです。
─────────────────────────────
予算特別委員会で質問をしてほしい。学院の件について、疑問
点を並べてくれればいい。知事が「けしからん。担当の副知事か
ら答弁させる」と言う。あとはすべて自分が答弁する。
──上掲「都政新法報」より
─────────────────────────────
2005年3月3日、本会議の休憩中に民主党の名取憲彦幹事
長は、議長室に内田議長を訪問し、富田政調会長が浜渦副知事に
しつこく質問するよう頼まれ、困っていると相談しています。そ
のとき、内田議長もその件について多くの情報を握っており、名
取幹事長に次のようにアドバイスしています。
─────────────────────────────
そんなことを民主党の会派として受けたら大問題にもなるし、
議会の中でも孤立する。あなたの会派もバラバラになってしまう
のではないか。議会の立場としても見過ごすことはできない。こ
の問題で私は、一切関与していないのだから、議会に手を突っ込
むようなことはやめさせた方がいい。質問はやらせない方がいい
んじゃないか。 ──上掲「都政新法報」より
─────────────────────────────
結局、民主党は、知事サイドの要請を受けて、2005年3月
14日、予算特別委員会において、東京都社会福祉総合学院問題
について質問しています。このときの浜渦副知事の答弁が後の百
条委員会の設置に繋がるのです。
この民主党の質問と浜渦副知事の答弁について、都議会自民党
と公明党は、内容に重大な疑義があるとして、これまで35年間
一度も開催されたことのない百条委員会の開催を決めます。35
年間開催されなかったのは、都議会と都庁との癒着が原因である
ことは明らかです。
そして、2005年5月12日に百条委員会が開催されたので
す。しかし、そこで審議されたのは、百条委員会のメインの議題
であるべき社会福祉総合学院問題の内容ではなく、浜渦副知事が
民主党に対して議会での質問を働きかけた「やらせ質問」を重大
視し、浜渦氏の答弁を偽証と認定したのです。百条委員会が多数
を持つ与党ペースで、進んだからです。
百条委員会の結果、浜渦副知事、福永副知事、横山教育長、櫻
井出納長が辞職する騒ぎになったのですが、これは与党勢力が浜
渦副知事を追い落とすための委員会であったことは明らかです。
──[中央卸売市場論/025]
≪画像および関連情報≫
●浜渦副知事更迭で何が見えたか/世田谷区長保坂展人氏
───────────────────────────
東京都政で前代未聞の「副知事VS自公」の睨み合いは、
石原知事の側近である浜渦副知事更迭で、いちおうの決着を
見たかに見える。いかにも伏魔殿と呼ばれる東京都庁と都議
会を象徴するような話じゃないか。税金の使い道をチェック
するために議会があるのだとしたら、3月に民主党都議が、
(浜渦副知事に依頼されたという社会福祉総合学院の運営を
めぐる問題点)の徹底的な審議するべきだ。
都議会民主党の対応が、いっそう事態を把握することを阻
んではいないだろうか。浜渦氏に質問を依頼されたかどうか
――これが都議会の自民・公明側が問題にした点だが、「依
頼されていない」と主張しながら百条委員会に出席しないと
いう姿勢には疑問が残る。事実、民主党会派内からも批判の
声もあがっている。
橋梁をめぐる談合事件では都の発注する工事を請け負って
きた建設会社に都のOBが天下り、都側の発注情報を得て談
合調整を進めていたとの報道(5月29日朝日新聞)もあり
石原都政下の「改革」なるものが官僚利権の撤廃にはほど遠
いうわべだけのものだったことを示している。
やがて来月、都議会議員選挙がある。本来なら、都庁・都
議会を含めた大騒動の顛末が有権者の大きな注目・関心を集
めてもおかしくないが、現実は正反対だという。「構図が複
雑」すぎて、いったい何が問題で、誰と誰が衝突して、人事
紛争となっているのか判らないので関心が持てないというの
だ。 http://bit.ly/2ufwkXP
───────────────────────────
世田谷区長/保坂展人氏


