2017年07月10日

●「築地ブランドを失ってもいいのか」(EJ第4559号)

 現在は世界中で「日本食ブーム」が起きています。日本への観
光客も急増しています。日本中に外国人が溢れている感じです。
それらの訪日外国人の声を聞くと、多くの日本食のなかでも、新
鮮な生のネタを使う寿司は、日本で食べるものがいちばんおいし
いといいます。今や寿司店は世界中にありますが、日本で食べる
寿司はまるで別物のように感じられるようです。
 それは、水産物の「目利なのです。それが「築地ブランド」な
のです。築地市場がものをいっているのです。市場が日本食の味
に深く絡んでいるのです。
 世界の卸売市場は物流センター化が進んでいます。築地市場の
ように床にマグロがゴロゴロしている市場は今どきなくなってい
るのです。しかし、それと引き換えに物流センター化した市場で
は、総じて味覚文化の水準が低下したといわれています。
 かつての話ですが、スーパーの魚が二級品だった時代が長く続
いたことがあります。それは仕入れの失敗です。魚を相対取引で
購入していたからです。築地市場では、元卸の持ち込んだ魚から
仲卸が良い魚をセリで競り落としてしまいます。これらの魚の目
利きが選んだ飛び切りの魚は、その時点でなくなってしまうこと
になります。
 築地市場では、セリが終わるとベルが鳴り、競り残った魚が相
対取引で販売されます。それをスーパーは資本力を生かして仕入
れていたのです。だから二級品の魚になってしまいます。現在で
は、卸売市場法の規制緩和により、セリよりも先に相対取引が行
われるようになっています。そのため、セリそのものもなくなり
つつあるといえます。つまり、卸売市場を近代化すればするほど
セリのような中間機構、つまり仲卸の仕事はなくなっていくので
す。このことについて既出の中沢新一氏は、次のように日本の魚
河岸の伝統である「仲卸」の役割の重要性を説いています。小池
知事にも耳を傾けて欲しい言葉です。
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 いまいろいろなところで、市場の物流センター化が進んでいま
す。日本の地方市場でもそういうことが起きています。物流セン
ターには仲卸という存在がいません。セリもなくされていく傾向
にあります。僕はそれをあらゆる種類の「中間機構」を廃止して
いこうとする、現代の資本主義の全体的傾向に対応した変化と見
ています。食文化のようなデリケートな領域では、それがどうい
う状況を作り出していくかは、いまからでも予想がつきます。
 その先には当然、電子取引の世界が待っています。「種」とい
う「中間機構」を排除してしまうそういう世界では、「個」は直
接剥きだしの状態で「普遍」に向かい合うことになります。(中
略)築地市場なんて古めかしい汚いもの潰してしまえと、乱暴な
ことを言っている人たちがいます。それを聞くと、なんて時代遅
れの人たちなんだろうと感じます。
 市場を物流センターに作りかえる。これは何を言っているかと
いうと、生命と自然を結ぶ活動をしている「中間機構」である仲
卸たちを、市場から排除することにほかなりません。それはある
種のモダニズムの極限ではありますが、そういう近代型の資本主
義はもう終末に向かっているのではないでしょうか。
           ──伊東豊雄氏×中沢新一(徹底討論)
               「『みんなの市場』をめざす」
           『現代思想』2017年7月臨時増刊号
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 伊東豊雄氏という建築家がいます。高松宮殿下記念世界文化賞
やRIBAゴールドメダル、日本建築学会賞作品賞2度、グッド
デザイン大賞、2013年度プリツカー賞などを受賞している一
流の建築家です。
 伊東豊雄氏は、新国立競技場のコンクールに参加し、最終選考
11作品に残っていますが、もともと旧国立競技場を改修して再
生させるというプランを提案していたのです。それは明治神宮を
包み込んでいる森に建てられるべき建物はどうあるべきかという
観点を踏まえての提案だったのです。
 実は、築地市場移転問題は、国立競技場問題に酷似しているの
です。東京五輪をビジネスとして考えている人たちは、あくまで
旧国立競技場を壊して新しく作ることを前提にしているのです。
そういう人たちは、国立競技場を神宮の森のなかに建つ建築物の
ひとつとしては考えていないのです。
 したがって、伊東豊雄氏のプランは余計なお世話とばかり、完
全に無視され、旧国立競技場は解体されてしまったのです。そし
てザハ案が一度は採用されたのですが、安倍首相によって撤回さ
れ、再度コンペティションが行われたのです。伊東豊雄氏は、採
択はされなかったものの、このコンペティションにも参加し、B
案とと呼ばれる設計案を提出しています。
 中沢新一氏は伊東豊雄氏と一緒に築地市場を見学に行ったとき
のことです。最後に築地市場の全体を見渡せる屋上の駐車場に上
がり、市場全体を見渡したとき、伊東氏はポツリとこういったそ
うです。「ここは聖地なのですね・・・」と。中沢氏は「聖地」
とはどういう意味かと尋ねると、伊東氏は次のように話してくれ
たそうです。
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 僕が「聖地」という意味は、その場所が特別な力を持っている
ということです。明治神宮の内苑・外苑も上から見たらあそこだ
けが森としてぽっかりと残っていて他は開発の手が余すところな
く入り込んでいる。それは何か特別な謂れがないと残されない空
間です。最初のザハ案があの場所に実現されてしまったら、外苑
はグローバルな経済によって犯された風景になってしまう。だか
ら、僕はコンペティションに参加する前には、改修で十分ではな
いかと話していました。──伊東豊雄氏×中沢新一(徹底討論)
           『現代思想』2017年7月臨時増刊号
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              ──[中央卸売市場論/006]

≪画像および関連情報≫
 ●汚される“聖地”「国立競技場」解体工事の官製談合疑惑
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   2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアム
  として立て替えられる国立競技場(東京都新宿区)の解体工
  事入札が、異例の事態に陥っている。発注元の職員が参加業
  者の入札関連書類を提出期限前に一方的に順次開封し、その
  上で予定価格を操作したのでは−との官製談合疑惑が浮上、
  国会でも追及されたのだ。12月には3回目の入札が行われ
  るが、一連の騒動の波紋は収束しておらず、「五輪の聖地」
  が紡いだ栄光の歴史に汚点を残しかねない情勢だ。
   10月7日の臨時国会参院予算委員会は、緊迫した空気に
  包まれていた。「手続きが不公正で官製談合の疑いがある」
  7月に行われた国立競技場の解体工事の入札をめぐり、参加
  業者から内閣府に官製談合を疑う苦情申し立てがあったこと
  について、民主党の蓮舫氏が疑惑を追及した。それに対し、
  工事発注元で、参考人として出席した独立行政法人「日本ス
  ポーツ振興センター」(JSC、東京都港区)の河野一郎理
  事長は「第三者を入れた部会の調査で、談合なしと決定して
  いる」と、疑惑の払拭に努めた。ただ、河野理事長は蓮舫氏
  の別の質問に、弁護士や公認会計士らによるJSCの調査部
  会が入札担当職員に直接聞き取りをしないまま「談合の事実
  はなかった」と判断していたことも明らかにし、調査手法に
  も懐疑的な視線が注がれた。    http://bit.ly/2uIRN74
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中沢新一氏.jpg
中沢 新一氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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