2017年06月29日

●「米の先制攻撃は本当に行われるか」(EJ第4552号)

 北朝鮮有事は、米軍が深く関与することになるので、米中戦争
の前哨戦になる可能性があります。北朝鮮との戦いに腕をこまね
いているようでは、米国は中国との戦争に勝つことなどとうてい
不可能です。今後の米国の対応について考えます。
 昨日のEJで「もはや米国による北朝鮮への先制攻撃はない」
とする理由を4つ上げましたが、4番目の理由を再現します。
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 4.米国が先制攻撃を行えば、同盟国である韓国や日本に被
   害がおよぶこと。
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 この4番目の理由──トランプ政権のマティス国防長官とティ
ラーソン国務長官は、この理由を上げて米国による先制攻撃は困
難であるとのメッセージを世界に発信しています。これによって
北朝鮮を含めて関係国に「米軍による先制攻撃はない」と思わせ
ています。果たしてこれは米国の本心なのでしょうか。
 5月のある日、香田洋二元自衛艦隊司令官がテレビ番組で「韓
国在住の米軍家族や米国人への避難の呼びかけはまだしていない
ようですが、米軍の北朝鮮への先制攻撃はあるでしょうか」と聞
かれ、次の趣旨のことを答えています。
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 先制攻撃というものは、誰もがそれを予想しないときに起きる
ものであり、一般人がそれを知るのは終わってからです。戦争と
いうのはそうしたものなのです。──香田洋二元自衛艦隊司令官
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 この北朝鮮問題ですが、将棋に例えると、局面は詰んでおり、
この問題の解決に米国のやるべきことはひとつしかないのです。
なぜ、詰んでいるのかというと、次の3つの事実があります。
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 1.北朝鮮は、どのような条件を出されても核兵器の開発を
   やめることはない。
 2.習近平政権には、北朝鮮に制裁などのコントロールする
   力を持っていない。
 3.北朝鮮が求める対話とは、北朝鮮を核保有国として認め
   させることにある。
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 「1」については、これまでの北朝鮮の核開発の歴史をみると
核放棄などあり得ないし、仮に北朝鮮が「核凍結」を約束したと
しても、絶対にそれを守らないことはわかっています。
 「2」については、ここまで述べてきた通り、北部戦区の北朝
鮮と国境を接する瀋陽地区は完全な親北朝鮮であり、中央の習近
平政権といえどもコントロールできないのです。したがって、ト
ランプ政権の要求には対応したくても実現困難です。米国はこの
事情を承知したうえで、中国に強くて効果的な制裁を迫っている
フシがあります。
 「3」については、米国は絶対に認めないと思います。もし、
これをやると、日本や韓国まで核兵器を保有する流れになり、日
米安保条約も機能しなくなり、アジアの安全保障に重大な影響を
もたらすことになるからです。
 そうであるとすると、米国は北朝鮮に何らかの直接的な攻撃を
加えて、核兵器開発ができないようにする──これしか有効な方
策はないことになります。問題は、米国が果して攻撃できるかど
うかです。現在、米軍は、先制攻撃に当たって、次の3つの前提
に立っているものと考えられます。
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 1.北朝鮮はミサイルは使えるが、核・ミサイルはまだ使え
   ない状況にあると米軍は考えている。
 2.米軍は約1時間の第1次攻撃で、ソウルへの若干の反撃
   に抑え込むことが可能と考えている。
 3.先制攻撃が始まると、北朝鮮はソウルへの反撃が精一杯
   で、日本攻撃の余裕はないと考える。
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 現在、北朝鮮は航空機に搭載できる核爆弾は所有していますが
ミサイルに搭載できる核弾頭は持っていないのです。もし、航空
機に核を搭載して出撃できても、米空軍はそれを確実に撃墜でき
る体制を敷いています。米軍の攻撃しだいでは、航空機が発進で
きるかも疑問です。
 それでは、いつ攻撃するかです。米国はレッドゾーンを設けて
いませんが、事実上次の2つがレッドゾーンです。
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      1.北朝鮮がICBMを発射したとき
      2.北朝鮮が6回目核実験実施のとき
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 実は、米軍は5月の時点で先制攻撃の手順をすべて詰め終わっ
ているといわれます。どのようにして米軍は北朝鮮を攻撃するの
でしょうか。
 そのヒントがあります。2017年5月18日付、日本経済新
聞にそれは出ています。
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  米、ミサイル300発で圧力/北朝鮮包囲網 ほぼ完成か
   ──2017年5月18日付、日本経済新聞/真相深層
                   編集委員/高坂哲郎
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 日本経済新聞といえば経済紙です。なかでも「真相深層」のコ
ラムは気鋭の編集者が書くコラムであり、読み応えがあります。
筆者は、編集委員の高坂哲郎氏です。高坂哲郎氏は、政治部時代
に防衛庁、外務省を担当したのち、防衛省の防衛研究所で安全保
障を学んだいわばその道のプロです。記事はその高坂哲郎氏の筆
によるものです。記事は内容豊富です。明日のEJはこのテーマ
の最終回ですが、高坂哲郎氏による米軍の先制攻撃についてご紹
介します。        ──[米中戦争の可能性/122]

≪画像および関連情報≫
 ●米国が北朝鮮を攻撃する「Xデー」はいつか
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   米政府が今後さらに一歩踏み込むことを選ぶとしたら、最
  も可能性が高いのは、突然の、そして願わくは圧倒的な、北
  朝鮮の疑わしいミサイル・核兵器開発施設の爆撃である。し
  かし、これをもってしても北朝鮮が核兵器開発から完全に手
  を引くとは考えにくい。影響を与えられるとすれば、北朝鮮
  がディーゼル電気潜水艦に弾道ミサイルを搭載するというよ
  うな、より野心的な兵器開発に乗り出すことをとどまらせる
  くらいだ。
   米空軍兵が擁する最大と考えられている通常爆弾(3万ポ
  ンドのGBU−57「大型貫通爆弾」)は、こうした標的を
  念頭に置いて設計された。ジョージ・W・ブッシュ政権で主
  にイランの核開発施設を破壊するために開発され、その近辺
  にある米軍基地か、米国本土から出撃したB2ステルス爆撃
  機から投下される。
   通常のジェット航空機と異なり、B2は、おそらく極東ア
  ジア地域に配備されているより新型のF−22ラプター、ま
  た、より新型のF−35統合打撃戦闘機とともに、北朝鮮の
  空域に探知されずに侵入できる。今のところ、米国が北朝鮮
  を攻撃していない理由は、米国がイランを攻撃しなかった理
  由と同じだ。すべての施設を破壊できるかどうかがわからな
  い一方、考えられる報復は破壊的なものになると多くの専門
  家は考えている。         http://bit.ly/2rSDBHx
  ───────────────────────────

北朝鮮はミサイル攻撃できるか.jpg
北朝鮮はミサイル攻撃できるか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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