2017年06月13日

●「中国は自分の国をどう見ているか」(EJ第4540号)

 数ある中国崩壊論に関する書籍のなかで、最新刊で内容のある
次の本を発見し、読んでいます。在米中国人経済学者2名による
精緻な中国分析ですが、なかなか読み応えがあります。
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 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
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 「米中戦争はあるのか」について考えるとき、今後中国がどう
なるのかについて判断することが不可欠になります。とくに米国
の大統領は、アジア情勢に米国としてどう向き合うべきかを決め
るとき、この判断が必要です。
 オバマ大統領は、大統領に就任したときは、アジアにはほとん
ど関心がなく、同盟国である日本の首相にさえ、早く会おうとし
なかったのです。しかし、大統領就任後7年が経過した第2期政
権の終わり頃になって、中国についての次の見解を発表していま
す。あまりにも遅すぎるし、その間に南シナ海に中国にやすやす
と人工島を造られてしまっています。
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 弱体化しおびえた中国は、成功に満ち興隆する中国よりさら
 に脅威である。           ──オバマ前大統領
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 オバマ大統領のいう「弱体化しおびえた中国」とは、現在の中
国のことですが、その中国の方が国際社会にとって脅威であると
して、その理由を次のように述べています。
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 かりに中国が失敗した場合、国民を満足させられるような成長
軌道を維持できず、そのため国民の結束を図る原理として民族主
義に訴えるとしたら、もし中国が国際秩序の維持、構築という大
国に見合う責任をとても担えきれそうにないと感じたなら、もし
中国がこの世界を勢力圏の視点からしかとらえないなら、我々は
将来的に中国と衝突することになる可能性ばかりか、これから訪
れる多くの問題の対処にはさらなる困難がともなうことを覚悟す
べきだろう。               ──オバマ大統領
               何清蓮×程暁農著の前掲書より
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 冒頭の中国を分析した書籍の著者(何清蓮/程暁農両氏)につ
いて簡単にご紹介しておく必要があります。
 何清蓮(か・せいれん)氏は、1956年に湖南省生まれの中
国人で、上海復旦大学を卒業。その後記者生活を送り、中国社会
科学院の特約研究員を経て2001年に米国へ脱出。現在、ボイ
ス・オブ・アメリカのコラムニストとして活躍しています。
 程暁農(てい・ぎょうのう)氏は、1952年に上海市生まれ
の中国人で、中国経済体制改革研究所の総合研究所の元主任。独
仏に留学後に米プリンストン大学で博士号を取得し、現在は同大
学の当代中国研究センターCEOを務めています。
 中国は、当時のクリントン米大統領の支援を受けてWTOに加
盟するや急速に経済成長を始めます。そして、2003年頃から
「中国の平和的台頭」を対外宣伝のポイントに据えるのです。こ
れは、中国共産党の理論界の重鎮である鄭必堅氏の次の論文の発
表がきっかけになっています。
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              鄭必堅著「中国の平和的台頭」
 「フォーリン・アフェアーズ誌」/2005年9月10日号
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 ところが、2006年になると、中国の対外宣伝ポイントは次
のように変更されるのです。
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 北京コンセンサスがワシントン・コンセンサスに取って代わ
 り、世界に向けて「中国モデル」を輸出する。
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 いま考えると、この頃が中国の絶頂期であったといえます。こ
こでいう中国モデルとは次の発展方式のことです。
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     1.共産党独裁体制下での公有制を土台に
     2.市場原理を導入して経済を活性化させ
     3.外国資本技術の導入で成長を加速する
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 共産党独裁体制下での市場経済の導入という世界初めてのモデ
ルが成功しつつあり、中国はこの「中国モデル」の輸出に意欲を
示したのです。このモデルは、ベネズエラの当時のチャベス大統
領によって絶賛され、発展途上国において、一時大いにもてはや
されることになったのです。
 2010年に中国は日本を抜いて、世界第2の経済大国になり
ます。しかし、中国は、この時点から対外宣伝ポイントのトーン
落とし、以下のように一変するのです。
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 2010年、中国のGDPが初めて日本を追い抜き、中国は世
界第2の経済体となった。しかし、中国政府の将来的な見通しは
かなり慎重なものへと転じ、中国は多くの方面でいまだ発展途上
国レベルにあると述べるようになった。11年3月、IMF(国
際通貨基金)のあるリポートが、購買力平価ベースで計算すると
中国のGDPは5年後にアメリカを追い越し、2016年は「中
国の世紀の元年」となり、「アメリカの時代」はもはや終わりを
告げつつあると述べた。これに対し、中国側はただちに国家統計
局の馬建堂局長がIMFのリポートヘの反論を公表し、中国の経
済発展のレベルはまだまだ低い水準にあると訴えた。
               何清蓮×程暁農著の前掲書より
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             ──[米中戦争の可能性/110]

≪画像および関連情報≫
 ●何とか合意できた「北京コンセンサス」
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   日本と中国の政府間外交が機能停止に陥っている状況の中
  で、私たちの民間外交がどのような役割を果たせるのか、と
  いうことがずっと問われてきました。そこで、私たちは、民
  間の中に冷静な議論をつくり上げ、日中の民間レベルで「両
  国の間に戦争を起こすようなことは絶対にしない」、という
  ことで合意することを目指しました。
   しかし実をいうと、その合意である「北京コンセンサス」
  も、直前になって完成を一時断念しました。「不戦宣言」と
  いう誰もが納得できるような大きな意義のある宣言も、政府
  間外交というフィルターを通して見ると、いろいろな問題が
  出てきます。例えば、尖閣諸島(釣魚島)をどう扱えばいい
  のか、歴史認識をどうすればいいか、など様々な問題がある
  わけす。そこで、コンセンサスには日中間で合意できないこ
  とは記載しない、合意できることだけを記載しようというこ
  とになりましたが、その線引きの判断が最後の最後までずれ
  込みました。
   それでも、私たちはどうしても不戦宣言を出したかった。
  そこで、発表の場となる最終日の全体会議が始まる深夜のぎ
  りぎりの局面になってようやく作成作業を再開し、朝の4時
  までかかって文面をつくったわけです。その作業には明石康
  ・元国連事務次長や宮本雄二元駐中国特命全権大使、それか
  ら武藤敏郎・大和総研理事長、元日銀副総裁といった皆さん
  が、ご高齢にもかかわらず、夜を徹して協力してくださいま
  した。明け方まで全員で文面を何度も見直して、最終的な文
  章を完成させ、12時ぐらいに「北京コンセンサス」として
  世界に向けて公表することができました。
                   http://bit.ly/2t0PfjR
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在米中国人経済学者の中国分析本.jpg
在米中国人経済学者の中国分析本
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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