2017年05月15日

●「不動産バブルを演出している中国」(EJ第4519号)

 中国の経済発展は、胡錦濤時代以降においては、マンションと
自動車が牽引しているのです。マンション(不動産)と自動車に
力に入れるということは、それに付随する鉄鋼生産から電化製品
までのさまざまな消費を喚起することになるので、経済成長に結
びつくのです。
 しかし、習近平政権になると、2015年6月に株式バブルが
崩壊したので、意図的に不動産バブルを再燃させて価格をつり上
げるリスクのある手法を取るようになります。それは、中国人民
銀行(中国の中央銀行)が、銀行の1年物貸出基準金利を引き下
げることです。住宅ローン金利は、この基準金利にリンクしてい
ます。2015年の基準金利の変更は次の5回です。
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                1年物貸出基準金利
    2015年 3月 1日 ・・・ 5・35%
    2015年 5月11日 ・・・ 5・01%
    2015年 6月28日 ・・・ 4・85%
    2015年 8月26日 ・・・ 4・60%
    2015年10月24日 ・・・ 4・35%
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 2015年には基準金利を5回も下げています。こんな短期間
で5回も下げるのは異常です。基準金利を下げれば、住宅ローン
金利も下がるので、住宅を購入しやすくなり、不動産バブルに火
がつくことになります。
 ここにひとつ疑問が出ます。中国は私有財産を認めていない国
なのになぜ住宅を購入するのかという疑問です。これについては
宮崎正弘氏と石平氏の対談において石平氏の説明があります。
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宮崎:それで私が前から不思議に思ってたのは、中国は私有財産
   を認めていない。私有財産でない権利を、何ゆえに人民が
   買うのか、と。
石 :いや、それは誰でも分かってるんです。法律で憲法で私有
   財産を認めない。さらに不動産買っでも、土地が自分の物
   にはならない。みんなそれが分かっている。しかし分かっ
   ている中で、やっぱり買う。じやあ、どうして買う?(中
   略)要するに、投資は彼らにとって、新しい産業に投資す
   る、そういう意識、感覚はないんですよ。本来ならば、投
   資というのは新しい産業を興すためにするもの。じや、彼
   ら中国人にとっていちばんの安心の財産が何かというと、
   お札ではなんです。   ──宮崎正弘/石平著/WAC
         『いよいよトランプが習近平を退治する!』
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 さらに石平氏は、中国人は昔から目に見える形の財産しか信じ
ないといいます。ですから、建物や金銀などで、価格の上がるも
のを本能的に持とうとするのです。マンションも2軒以上持つの
は当たり前で、「マンションの2軒目を持たずんば人に非ず」と
いわれているぐらいです。
 習政権は、基準金利の引き下げに加えて、さらにバブルを煽る
政策をやっています。住宅購入でネックになるのは頭金ですが、
これを販売価格の20%まで引き下げたり、頭金自体を銀行が事
実上肩代わりすることも黙認したりしたのです。なかには、住宅
ローンの15%割引きをするケースもあったといいます。10年
前のサブプライム・ローンとまるで同じパターンです。住むため
ではなく、投機のために住宅を手に入れようとしているのです。
 さらに問題なのは、サブプライム・ローンのときと同様に銀行
がはローンが払えるかどうかのチェックをきちんとやっていない
ことです。つまり、ローンをきちんと払えない人にも1軒ではな
く、2軒も3軒もマンションを売っていることです。
 その結果、景気は低迷しているのに、不動産バブルが進むとい
う独特の経済状態が生まれることになったのです。この実体経済
と株式市場や不動産市場の乖離についてこれを習政権は、「新常
態(ニューノーマル)」と呼んでいるのです。明らかなゴマカシ
以外のなにものでもないのです。
 このようにして不動産バブルは過熱し、2016年9月に国家
統計局が発表した8月の70都市住宅価格調査によると、新築マ
ンションの価格が90%以上にあたる64都市で前月よりも上昇
したのです。尋常な値上がりではないのです。これについて、近
藤大介氏は、次のように述べています。
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 中国では、全国の市町村を、重要性や人口などを鑑みて、一線
都市から四線都市に区分している。一線都市は、北京、上海、広
州、深せん、天津の5都市。二線都市が、南京、武漢、重慶など
41都市。三線都市が紹興、珠海、吉林など110都市。残りす
べてが四線都市である。
 これまでは、マンション価格の上昇が激しいのは、主に一線都
市だった。だが2016年夏は、一部の二線都市、三線都市の上
昇率が、一線都市の上昇率を上回るという新現象も起こった。こ
れは、不動産バブルが地方都市にまで浸透してきたことを示して
いた。しかも上がり方が尋常でなかった。
                  ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
─────────────────────────────
 中国には「金九銀十」という不動産用語があります。これは、
「黄金の9月と銀色の10月」という意味です。9月中秋節(旧
盆)の3連休から、10月の国慶節(建国記念日)の7連休にか
けて、マンションの売り上げがピークに達するので、そのように
呼ばれるのです。いわばカキ入れどきです。
 そういうわけで、2016年の「金九銀十」も各都市の不動産
業者は大量の新築マンションの販売を仕掛けようとしていたので
す。しかし、銀十の10月にとんでもないことが起きるのです。
             ──[米中戦争の可能性/089]

≪画像および関連情報≫
 ●中国不動産バブル「2017年に崩壊しそう」な理由
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   2016年の秋ごろから、中国の不動産バブルが再熱して
  いるとの指摘が増えている。バブルは膨れ上がっても、はじ
  けてしまっても経済成長には大きなマイナス。中国政府も手
  をこまねいているわけではないが、うまく制御できていない
  ようだ。2017年中にもはじけるのではないかとの指摘も
  ある。
   中国は、2010年に日本のGDPを抜き、アメリカに次
  ぐ世界第2位の経済大国となった。その前年ごろから住宅価
  格が高騰し、バブルのような様相を見せていた。バブルとは
  簡単に言えば、資産価格が通常の賃料や金利などから大幅に
  乖離して形成されてしまう現象のこと。1980年代の日本
  の「不動産バブル」が世界初とされる。その後、90年代の
  「アメリカITバブル」、2008年の「コモディティバブ
  ル」を経て、中国の「住宅バブル」は世界4番目と位置付け
  られた。
   世界的な金融危機に対応するため、中国当局は銀行に融資
  拡大を奨励して景気を刺激したり、貸出総量規制を撤廃する
  などして大幅な金融緩和を実施。不動産市場に資金が大量に
  流れ込んだ。また、経済成長に伴う労働力不足を解消するた
  め、農村部から都市部へ人口を移動させたことで、住宅需要
  が一気に高まった。        http://bit.ly/2qbSA1c
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中国人民銀行.jpg
中国人民銀行
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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