2017年05月11日

●「中国ではなぜ鬼城が増加するのか」(EJ第4517号)

 正確な数字はありませんが、中国全土に散らばる「鬼城」は枚
挙にいとまがなく、現在も増えつつあります。その規模に関して
は大きいのは100万人級、小さいのは団地級までありますが、
数は100ヶ所以上に及ぶのです。なぜ、中国は、誰も住む人が
いない住宅の建設を続けるのでしょうか。
 直接的には、これらの大工事をすることによって経済活動が発
生しGDPが増えるので、やっているのです。それによって、日
本のGDPを抜くという目的があったのかもしれません。これに
ついては後述します。
 遠因としては、李克強首相が2014年2月に打ち出した20
20年までの国家プロジェクト「城鎮化」計画にあります。「城
鎮化」について、上海生まれの中国人で、現在、中国と日本の間
で出版や映像プロデューサーとして活躍している邱海濤氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 城鎮化とは、李克強首相の経済成長戦略のもっとも重要な目玉
政策の1つであり、改革開放が行きづまるなかでの窮地脱出策と
して練りあげられた、壮大な計画だといわれている。核となるの
は、農民を都市部に移住させることである。日本語でいう「都市
化」のことだ。           ──邱海濤著/徳間書店
                   『中国大動乱の結末/
 混乱が止まらない経済・政治・社会を現地から驚愕レポート』
─────────────────────────────
 中国人の戸籍は、「農村戸籍」と「都市戸籍」に分けられ、農
村戸籍は60%、都市戸籍は40%です。毛沢東時代の1950
年後半にこの戸籍制度は導入されています。農村から都市への移
動は厳しく制限されており、日本人のように自分の意思で勝手に
引っ越しできないのです。農民が出稼ぎに都市に行くことはでき
ますが、農村戸籍のままです。
 豊かな大都市の戸籍を持つ者は、社会保障も有名大学への入学
も優遇されますが、農村戸籍では都市の大学への入学もままなり
ません。また、都市部の人間がマイホームに住み、不動産権利証
書を持っているのに対し、農民たちには自分の土地も家もなく、
そこに多くの格差があります。
 農民たちの土地や家は村から借りたもので、村の集団所有制に
なっています。したがって、住むことはできても、私有財産では
ないので、物件を売買できないのです。農地にしても使用権があ
るだけで、私有財産ではないのです。
 中国のノーベル文学賞作家の莫言氏と並び称される買平凹(か
へいおう)という作家は、中国の農民の暮らしについて2016
年4月、小説『極花』の中で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 この10年近く、農村はひどく荒廃してきた。多くの村には人
の影がなく、家屋が倒れかかり、草が膝まで伸びている。村がど
んどん消えている。農村の廃頽ぶりは人を落胆させるほど凄まじ
く、故郷が失われようとしている。これから中国で何が起こるか
わからない。僕は心を痛めているのだ。 ──買平凹著『極花』
       ──邱海濤著/『中国大動乱の結末』/徳間書店
─────────────────────────────
 具体的に城鎮化(都市化)計画は、国が農家に農地使用の権利
証書を発給し、家屋・農地の下請け、賃貸、交換、譲渡の自由を
与えようというものであり、農民がこの権利証書を抵当にして銀
行から資金を借り入れる制度も整備されています。制度の趣旨と
しては悪いものではないのです。
 しかし、城鎮化計画の最大の狙いは、無計画な都市建設によっ
て生み出された中国各地の「鬼城」や膨大な新築住宅在庫を市民
権を持つようになった農民を移住させることによって、一挙に解
決させようと考えているのです。実は、この城鎮化計画が一向に
うまくいっていないのです。
 2016年7月13日付、新華社通信は、次の数字を報道して
います。
─────────────────────────────
    城鎮化に伴う新都市・新区の計画人口34億人
─────────────────────────────
 ここでいう「34億人」という数字は、何を意味しているので
しょうか。
 中国では、既に述べているように、城鎮化によって、人口増を
図るために新都市や新区を建設しています。その数は3500ヶ
所(2016年5月時点)であり、34億人というのは、そこに
建設される住宅群の収容可能人口なのです。
 34億人というと、現在の中国人口の2・5倍であり、全世界
の人口の半分を意味するのです。出産による人口増はすでにピー
クを過ぎていますし、農村部から都市部への移住者による人口増
に頼るしかないですが、どう考えても実現不可能な数字です。
 それに既に中国に現有している住宅の総量は需要量を上回って
いるのです。それにもかかわらずこの計画を進めようとすると、
中国の鬼城は増える一方です。それでもこの壮大な計画を実行す
ることによって、住宅投資を行うことができ、経済を活性化させ
GDPを増加させることができるのです。
 香港のフェニックステレビは、専門家の意見を引用して、次の
事実を明らかにしています。
─────────────────────────────
 過去5年間、中国では年平均の新築住宅戸数が1000万戸を
超えたが、実際の需要は800万戸にも及ばなかった。
   ──香港「フェニックステレビ」http://nkbp.jp/2qggkT2
─────────────────────────────
 とっくの昔に住宅が供給過剰になっているのに、城鎮化計画を
進めると、住宅の供給過剰を一層促進させ、鬼城がさらに増えて
しまうことになってしまいます。
             ──[米中戦争の可能性/087]

≪画像および関連情報≫
 ●中国鬼城/人口減少するのに34億人のマンション建設
  ───────────────────────────
   中国では人口減少プロセスが始まっていて、既に労働可能
  人口は減少しているが、数年後に総人口も減少し始めます。
  まず出生率が減少し女性は子供を産むより働くのを望み、高
  齢者だけが増えて行き、子供の数は急減します。
   まるで日本のようですが、中国も20年くらい遅れて日本
  化が進行しています。にもかかわらず中国の多くの自治体で
  は、2030年までに人口倍増する計画を建てている。中国
  では中央政府の他に省や自治区の地方政府があり、その下に
  城鎮という行政府が存在する。不動産開発を行っているのは
  この城鎮で、通常は省や自治区は直接は行っていない。
   中央政府の国務院の統計によると、新規開発計画の合計は
  34億人に達している。中国全体で1万ヶ所を超える新都市
  や産業地区が予定されていて、計画が達成される為には、今
  後15年間で中国の人口を4倍にする必要がある。中国には
  既に全土で100ヵ所以上の大規模なゴーストタウンが存在
  し、合計は数億人分とみられる。
   中国は農村から都市への移住を進め、都市化率を高めよう
  としていて、現在は56%となっています。日本の都市化率
  は公式には66%であるが、実際には95%以上であり、欧
  米と『都市』の基準が違っている。欧米では人口2000人
  以上は都市だが、日本では面積あたりの人口密度の条件など
  があって厳しい。         http://bit.ly/2pVilmr
  ───────────────────────────

中国城鎮化計画.jpg
中国城鎮化計画
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/449744184
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック