を策定しています。そのキーワードは次の3つです。
─────────────────────────────
1.国有企業の市場化
2. 市場の多元化
3.国有企業の民営化
─────────────────────────────
「1」は、国有企業を市場化することです。
国有企業を守っている親方日の丸的な制度を廃止し、国有企業
を市場に委ねることです。当然、市場変化についていけない企業
は市場から退場することになります。
「2」は、市場を多元化することです。
国有企業、民営企業、外資系企業などをすべて平等に扱い、競
争原理を働かせることによって市場を多元化するのです。これに
よって市場は競争原理が働き、活性化します。
「3」は、国有企業を民営化することです。
かつて小泉首相がいっていたように、「民間にできることは民
間にまかせる」を徹底し、政府機能を縮小し、国有企業を民営企
業に生まれ変わらせるのです。
これは、李克強首相が率いる急進改革グループがまとめたもの
ですが、国有企業改革プランとしては妥当なものです。しかし、
提案された李首相のプランは習近平総書記に一顧だにされなかっ
たのです。このプランが政策として認められるには、2018年
3月までの習近平政権の政策の基本として、「3中全会」で「公
報」として採択される必要があります。
しかし、習総書記は李首相を公報の起草委員会のメンバーから
外し、公報として採択されたのは、国有企業に関しては次の内容
だったのです。
─────────────────────────────
揺らぐことのない公有制経済の発展を強固なものとし、公有制
の主体的地位を堅持し、国有経済の主導的な作用を発揮し、国有
経済の活力、コントロールの能力、影響力を不断に増強させてい
く。 ──近藤大介著/講談社
『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
─────────────────────────────
何だこれは!・・という内容です。これは、国有企業の民営化
どころか国有化を強化する内容です。習総書記の考える国有企業
の改革とは、長い間江沢民一派の握っていた国有企業利権を引き
はがし、自分の利権に組み替えようとするもので、国有企業改革
を権力抗争に使おうとしているのです。
中国は「不動産投資だけに依存する経済」といわれます。中国
のGDP成長率に占める不動産投資の比率が高いからです。この
不動産の伸びが鈍化すると経済が失速してしまうのです。201
4年と2015年に経済が失速していますが、いつもは、前年比
20%程度の伸びがあるのに、2015年の不動産投資はわずか
1%の伸びにとどまっています。
「なぜ不動産なのか」について、中国通である宮崎正弘氏と石
平氏の2人の対談本に興味深いやり取りがあるので、ご紹介する
ことにします。
─────────────────────────────
宮崎:中国の景気が非常によく見えた蜃気楼の最大の原因は何か
っていったら、不動産なんですよ。だから不動産価格の高
騰ぶり、まだ続いているところもあるけどもね。このカラ
クリというのは、つまり中国的視点から見ると、どういう
カラクリだったの?
石 :それはどういうことかというと、特に温家宝の首相時代、
内需が徹底的に不足してる中で経済をどうやって成長させ
る?それが問題になったのです。1つは輸出です。も1つ
が、やっぱり投資を煽り立てる。投資率が高ければ、あち
こち投資が盛んになればなるほど、いろんな産業がそれで
繁栄するんです。そうなると、その中で特に目を付けたの
がいまの不動産。不動産を一棟造れば、中国にとってどう
いう経済問題が解決されるか。まず不動産造れば、地方政
府の財政が成り立つ。まず地方政府が安泰になる。不動産
造れれば、1つ造れば関係する下流のいろんな産業にみん
な反映する。鉄鋼産業にしてもそうですよ。
宮崎:制作過程におけるクレーン、ブルドーザー、それから消費
における建材、タイル・・・。
──宮崎正弘/石平著/WAC
『いよいよトランプが習近平を退治する!』
─────────────────────────────
つまり、不動産を中心とした産業連鎖です。それではどうやっ
て不動産を支えて行くのかというと、財源の裏付けのない貨幣を
増刷して市場に投入するのです。個人はこれでローンを組んで不
動産を購入し、企業もその資金を手に入れて不動産投資をするの
です。この場合、大量に貨幣を刷るとインフレになりますが、中
国の場合は、それが全部不動産に吸収されてしまうので、インフ
レにはならないのです。しかし、不動産バブルが破裂すると、大
変なことになります。
それでもGDPに占める不動産投資の比重も落ちてきているの
です。2013年のGDP比における不動産投資は約16%、2
014年は15%、2015年も14%というように減少傾向に
あります。逆にいうと、経済としては正常化に向っているといえ
ます。実はこれでも不動産投資の割合は、非常に大きいのです。
1990年に日本の不動産バブルがはじけたとき、GDPに占
める不動産投資の割合は9%でしたし、2007年のサブプライ
ムローン問題が発覚したときの米国のそれは6%だったので、減
少傾向にあるとはいえ、中国の比率がいかに高いかがわかると思
います。しかし、バブルというものはいつかははじけるのです。
──[米中戦争の可能性/086]
≪画像および関連情報≫
●ゴールドマン警告「中国の不動産バブル崩壊」懸念
───────────────────────────
このところ中国の住宅バブル崩壊を危ぶむ声が急増してい
る。2016年9月から10月にかけて多くのメディア、投
資銀行、そして豪州政府までもが中国住宅市場の過熱に警鐘
を鳴らしている。中国政府が政策の舵取りを誤れば金融危機
やコモディティー価格の急落などで世界経済を揺るがしかね
ない。ここでは中国の住宅市場に対する見方を紹介し、有効
な手立てを打ち出すためには中国政府が抱える2つのジレン
マを抱えていることを解説していこう。
まず、中国の住宅市場の動きをおさらいしよう。まず、販
売金額は年初の急伸のあと8月まで前年比40%以上の増加
ペースが続いている。政府が発表する新築住宅の価格動向を
見ても、8月は主要70都市のうち64都市で値上がりし、
7月の51から大きく増加。昨年2月までの約半年間がほぼ
ゼロであったのと比べると様変わりだ。前月比の値上がり幅
は6年ぶりの高さとなり、一年前に比べ南京と上海が30%
以上、北京は24%など高騰が続いている。
この住宅ブームの裏には政府の後押しがある。昨年12月の
共産党政治局会議では経済成長鈍化を食い止める一環として
住宅在庫の解消が重要課題とされ、中央・地方政府はその後
あらゆる政策を動員、住宅の需要喚起に躍起になっていた。
http://bit.ly/2pciU7D
───────────────────────────
李克強首相/リコノミクス