2017年04月24日

●「朝鮮半島北半分は習主席に任せる」(EJ第4507号)

 北朝鮮が中国に「核実験を実施する」と通知したようです。こ
の情報は21日から流れています。実施日についての情報はあり
ませんが、建軍節──朝鮮人民軍創建85周年記念日の25日の
早朝であると思われます。つまり、明日の朝です。
 4月20日、韓国「聯合ニュース」はこれに関して次のように
伝えています。
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 ◎米軍の特殊観測機/韓国上空に緊急出動
 「北朝鮮が中国に核実験を行うと通知した」という未確認情報
が出回っている。国防部や外交部など、関連省庁で確認に追われ
ている。               ──「聯合ニュース」
              2017年4月21日/夕刊フジ
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 事実を確かめると、確かに20日に米空軍の特殊観測機「WC
135」が沖縄の嘉手納基地から、朝鮮半島に向けて緊急発進し
ています。「WC135」は、北朝鮮が核実験をしたかどうかを
探る飛行機であり、これが発進したことは、核実験を警戒し、観
測態勢に入ったことを意味します。
 現在、金正恩氏とトランプ氏は壮絶なチキンゲームを展開して
います。2人とも一歩も引かない構えです。しかし、このところ
米国がちょっと引いた感じに見えます。米国のスタンスは「北朝
鮮のことは中国に任せる」というものです。このことをトランプ
氏は選挙中からいっていたのです。
 しかし、4月10日のEJ第4497号で述べたように、習近
平主席は北朝鮮をコントロールできない事情にあります。習主席
は、北朝鮮に隣接し、中国北東部を管轄する旧瀋陽軍区を含む北
部戦区(北朝鮮と直結する江沢民派の牙城)を掌握しきれていな
いからです。実は、米国はこのことをよく知っています。
 先の米中首脳会談のメインテーマが北朝鮮マターだったことは
両首脳とも周知のことだったはずです。そうであるならば、実際
に北朝鮮に強い影響力を持っているチャイナセブン序列第3位の
張徳江全人代常務委員長を同行させるべきです。しかるに、習主
席の米国訪問に同行したのは、次の3人の腹心であり、いわゆる
江沢民派は誰も同行していないのです。
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      房峰輝・連合参謀部参謀長
      劉鶴・中央財経指導小組弁公室主任
      栗戦書・党中央弁公庁主任
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 これによって習政権は、習近平主席が国内で「核心」と位置づ
けられていようと、それを国内外にいかに喧伝しようと、その実
体は「張りぼて」であることを見抜いたと思われます。米国はそ
れでいて習政権に北朝鮮問題の解決に圧力をかけているのです。
 4月16日(日)のことですが、日経の「風見鶏」に大石格編
集委員による「北朝鮮は中国の手で」と題する興味ある記事が掲
載されたのです。その一部に次の記述があります。
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 トランプ政権は発足直後、中国に「朝鮮半島の北半分は中国の
自由にしてよい」と伝えた。これが聞き込んだ噂である。もちろ
ん、「米国の脅威がなくなるならば」との条件付きだ。例えば、
クーデターで金政権を倒す。米国にはハードルが高い金委員長の
殺害も、北朝鮮軍にパイプがある中国ならば手の打ちようがあろ
う。少々混乱しても米国が介入してこないとわかっていれば、踏
み切りやすい。(中略)
 半島統一は韓国にとっては悲願かもしれないが、米国には所詮
はひとごとだ。領地安堵で中国に汚れ役をさせることができれば
こんなに楽な話はない。
    ──4月16日付、日本経済新聞「風見鶏」(大石格)
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 トランプ氏が、このところ、北朝鮮への中国の役割を強調する
のは、ここに狙いがあるかも知れないのです。そのためには、ト
ランプ大統領は、習主席に対して、韓国へのTHAADの設置も
中止してもよいといっていますし、為替操作国の指定うんぬんも
やめてもいいという条件を出しています。きわめて大きな譲歩で
あるといえます。
 確かに最近になって米国は韓国で設置を急いでいたTHAAD
の工事を中断し、「次の大統領が決めること」という柔軟姿勢を
示しています。口だけでなく、行動で示してもみせたのです。こ
れは中国にとって大きなチャンスでもあります。
 習近平主席としては、これはピンチではあるものの、江沢民派
と北朝鮮とのパイプを断ち切ることによって、国内完全統一がで
きるかもしれないと考えはじめたのではないかと思われます。こ
れに関連して中国の事情に詳しいノンフィクション作家・河添恵
子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ここで習氏が最も恐れているのは、中国内部の敵(江沢民派)
から正恩氏に作戦情報などが密告されることだ。そうなれば、中
南海(=中国政府や中国共産党の本部のある北京の中心部)が先
に火の海になりかねない。
 ただ、いつの時代も中国の支配者は「ピンチをチャンスに変え
る」したたかさがある。しかも必ずや「漁夫の利」を狙う。ここ
で浮かぶのは2010年7月から施行した「国防動員法の発令」
である。国防動員法は、中国が有事の際、政府と人民解放軍が民
間のあらゆる人的・物的資源を動員・徴用する法律である。
   ──2017年4月21日「夕刊フジ」 河添恵子氏論文
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 そうであるとすると、もし25日に北朝鮮が核実験をやったと
しても米軍は動くことはないと考えられます。トランプ政権はあ
くまで「中国に北朝鮮を処分させる」考え方ではないかと思われ
るからです。       ──[米中戦争の可能性/077]

≪画像および関連情報≫
 ●中国・国防動員法の恐怖/産経ニュース/けいざい独談
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   「中国政府がひとたび『有事だ』と判断すれば対中進出し
  ている日系企業も含めて、中国のあらゆる組織のヒト・カネ
  ・モノの徴用が合法化され、戦時統制下におかれる懸念があ
  ることにもっと関心を払うべきだ」マレーシアを拠点に日系
  企業向けコンサルティング業務を手がけるエリス・アジア事
  務所の立花聡代表は厳しい表情で“警告”を続けた。
   あまり知られていないが、2010年7月1日に中国が、
  「国家の主権、統一と領土の完全性および安全を守るため」
  として施行した「国防動員法」の規定をさしている。全14
  章72条からなる同法について、立花氏は「(適用の)可能
  性は低いだろうが法律として存在する以上、(日本にとって
  も)不確定要素となる」と指摘した。「有事」の定義はやや
  あいまいながら、仮に東シナ海や南シナ海などで偶発的な衝
  突が起きた場合、中国が有事と考えれば一方的に適用が可能
  だ。例えば第31条。「召集された予備役要員が所属する単
  位(役所や企業など)は兵役機関の予備役要員の召集業務の
  遂行に協力しなければならない」。予備役要員は中国国籍の
  男性18〜60歳、女性18〜55歳が対象。有事の際、戦
  地に送られるというよりは、兵站などの後方支援や中国の敵
  国に関する情報収集任務が与えられる可能性がある。
                   http://bit.ly/1Esf6Wz
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米空軍特殊観測機/WC135.jpg
米空軍特殊観測機/WC135
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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