2017年04月12日

●「米は北朝鮮を本当に攻撃できるか」(EJ第4499号)

 朝鮮半島の緊張が高まっています。4月10日の時点で、米空
母カールビンソンが予定を変更して朝鮮半島に引き返しつつあり
ます。命令の出たのは4月8日のことです。シリアの空軍基地を
米軍がミサイルで攻撃した2日後のことです。
 空母カールビンソンは、3月15日にも韓国南部釜山に入港し
ています。米韓合同軍事演習に参加するためです。その後、シン
ガポールに向い、オーストラリアに寄港する予定であったのです
が、急遽朝鮮半島に戻るよう命令が下されたのです。何のための
命令でしょうか。
 理由は2つあると思います。1つ目の理由は、北朝鮮に対する
「威嚇」です。だからこそ、予定変更を公表したのです。一般的
に空母の航行予定は極秘であり、攻撃されるリスクもあるので、
わざわざ明かすことはないのです。
 それに、東アジアには多くの米軍基地があり、本当に北朝鮮を
攻撃するつもりであれば、わざわざ空母を派遣する必要はないか
らです。しかも米海軍の横須賀基地には、空母ドナルド・レーガ
ンがいるのです。空母の2隻体制は非常に珍しいといえます。そ
れならば、なぜ、空母カールビンソンを、朝鮮半島に戻そうとし
ているのでしょうか。
 それは、朝鮮半島有事のさい、韓国にいる米軍関係者の家族を
避難させるためではないかと考えられるのです。これが2つ目の
理由です。空母であれば、大勢の人を乗せて避難させることがで
きるからです。
 実は朝鮮半島には、それほど危機が高まっているのです。コリ
ア・レポート編集長の辺真一氏は、これについて次のようにいっ
ています。
─────────────────────────────
    トランプ対金正恩の究極のチキンレースである
                   ──辺真一氏
─────────────────────────────
 米トランプ政権は、もし北朝鮮が、核実験かミサイルの発射な
どの行動を起こしたとき、米軍は直ちに北朝鮮に何らかの攻撃を
起こす構えです。これについては、先の米中首脳会談でトランプ
大統領は習近平国家主席にその旨を伝え、習主席から何らかの暗
黙の了承を得ていると思われます。
 北朝鮮がそういう行動を起こすと思われる日は、4月に関して
は次の2日があり、危機は切迫しています。
─────────────────────────────
    4月15日/太陽節・金日成105回誕生日
    4月25日/建軍節・朝鮮人民軍創設記念日
─────────────────────────────
 問題は、北朝鮮がこれらの記念日に核実験かミサイル発射を果
してやるかどうかです。もしやらなければ金正恩委員長は米国の
「威嚇」に屈したことになります。
 かつて金正恩委員長は、核実験の凍結と米韓合同軍事演習の中
止とのバーター取引を提案したことがあります。2015年の新
年の辞においてです。しかし、この提案がオバマ大統領によって
否定されてからは、核実験の凍結を外交カードに使うことはあき
らめています。そのことは、2016年1月と9月の4回目、5
回目の核実験を強行したことからも明らかです。
 したがって、金正恩委員長としては、カールビンソンがやって
こようと、シリアがミサイルで攻撃されようと、それによって、
第6回目の核実験をあきらめることは、限りなくゼロに近いとい
えます。金正恩委員長は「核を持っている限り、絶対に攻撃され
ることはない」と信じ切っているからです。だから、米国がいか
に「攻撃するぞ!」という姿勢を示しても動じないのです。
 そういうわけで、金委員長が上記の記念日に核実験を行う可能
性は高いと思われます。問題は、北朝鮮が実際に核実験を行った
とき、今度はトランプ政権が決断を迫られることになります。も
し攻撃を行わないと、オバマ政権と同じであるとみなされるし、
核兵器を持つ威力が米国にも通じると、かえって北朝鮮を増長さ
せることになってしまいます。
 かつてクリントン政権(1992年〜2000年)のとき、一
度北朝鮮への攻撃を真剣に検討したことがあります。そのときは
当時の金泳三韓国大統領の反対で思いとどまったのですが、これ
について、辺真一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 クリントン大統領は全面戦争という最悪のシナリオに備え19
94年5月19日、シュリガシュビリ統合参謀本部議長らから戦
争シミュレーションのブリーフィングを受けた。シミュレーショ
ンの結果は「戦争が勃発すれば、開戦90日間で▲5万2千人の
米軍が被害を受ける▲韓国軍は49万人の死者を出す▲戦争費用
は610億ドルを超える。最終的に戦費は1千億ドルを越す」と
いう衝撃的なものだった。
 当時、極東に配備されていた在日米軍3万3千4百人と在韓米
軍2万8千5百人を合わせると、約6万2千人。なんとその約8
割が緒戦3か月で被害を受けることになる。駐韓米軍のラック司
令官にいたっては「南北間の隣接性と大都市戦争の特殊性からし
て米国人8万〜10万人を含め(民間人から)100万人の死者
が出る」と報告していた。       http://bit.ly/2nxsXbk
─────────────────────────────
 まして北朝鮮は1994年のときと違い、今や核とミサイルを
保有しているのです。今のところ米本土への攻撃は無理としても
日本における米軍基地は射程に入るのです。それでも米国は攻撃
に踏み切ることはできるでしょうか。
 しかし、トランプ大統領は予測不能なのです。何をするか予測
はつかないのです。これだけのブラフにもかかわらず、北朝鮮に
核実験をやられて、何もできないとしたら、米国は完全な敗北と
いうことになってしまいます。それはトランプ大統領の我慢のレ
ベルを超えています。   ──[米中戦争の可能性/069]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮の核実験が見送られる可能性はないのか?/辺真一氏
  ───────────────────────────
   北朝鮮の6回目の核実験が「カウントダウンに入った」と
  韓国のメディアの多くは伝えている。咸鏡北道吉州郡豊渓里
  にある核実験場を空撮した偵察衛星画像を分析した米ジョン
  ズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」の予測
  や「金正恩(委員長)が決心すればいつ実験されてもおかし
  くない」との韓国国防部の見解に起因しているようだ。本当
  に北朝鮮は6回目の核実験に踏み切るのか?見送る可能性は
  全くないのか?
   過去遡ってみると北朝鮮が核実験を予告、示唆しておきな
  がら実際にやらなかった例は何回かある。一度目は2010
  年10月から11月にかけてで、オバマ大統領の訪韓(11
  月10日)に合わせてであった。また、2012年にも4月
  から5月にかけて同様の動きを示したことがあった。ゲーツ
  国防長官(当時)が中止を求める一方で、国連安全保障理事
  会の常任理事国5カ国(米国、英国、フランス、ロシア、中
  国)が共同声明を出し北朝鮮に核実験の自制を求めていた。
  その結果、北朝鮮の核実験の動きは、いずれも単なるアドバ
  ルーン、デモンストレーションで終わっていた。実際に3回
  目の核実験が行われたのは、翌年の2013年2月12日で
  あった。             http://bit.ly/2pltTfi
  ───────────────────────────

コリア・レポート編集長/辺真一氏.jpg
コリア・レポート編集長/辺真一氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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