2007年06月15日

●リチャード・クーとポール・クルーグマンの対談(EJ第2102号)

 少し前の話ですが、1999年11月号の『文芸春秋』に、リ
チャード・クー氏とポール・クルーグマン教授の対談が掲載され
たことがあります。テーマは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        「日本経済/円高は悪魔か」
           ――1999年11月号の『文芸春秋』
―――――――――――――――――――――――――――――
 当時、既に私はEJを書き始めていましたが、残念ながらこの
対談は読んでおらず、『経済コラムマガジン』第146号/00
/1/17日付ではじめてそれを知ったのです。
 当時の日本経済が深刻な状況にあるという点では、これら2人
の有力エコノミストの認識は一致していたのです。日本経済は、
いわゆる「流動性の罠」にかかっており、金利政策の有効性は失
われている点についても両者の意見は一致していたのです。
 ところで、「流動性の罠」とは何でしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
 景気後退に際して、金融緩和を行うと利子率が低下することで
 民間投資や消費が増加する。しかし、投資の利子率弾力性が低
 下すると金融緩和の効果が低下する。そのときに利子率を下げ
 続け、一定水準以下になると、流動性の罠が発生する。
                    ――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の場合、短期金利はほぼゼロになったのですが、利子率は
ゼロ以下にはならないため、この時点ではすでに通常の金融緩和
は限界に達していたといえます。
 この場合、日銀がいくら金融緩和をやってマネーサプライを増
やそうとしても、民間投資や消費に火がつかないため、通常の金
融政策は効力を喪失してしまうのです。
 経済がこういう状況になったとき、政府として何を行うべきか
について、クー氏とクルーグマン教授の発言は次のように大きく
相違していたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪リチャード・クー氏≫
  現状では金融政策だけでは限度がある。したがってバランス
  シートの改善が済むまで、大胆な財政出動により景気の下支
  えを行うべきである。
 ≪ポール・クルーグマン教授≫
  当分財政支出による需要の喚起も必要であるが、これにも限
  度がある。また日本は現在深刻なデフレの状態である。そこ
  で今一番必要なのは大胆な金融の緩和である
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、2000年のはじめの話であり、われわれはその後の
状況をよく知っています。この対談が行われた当時は森政権でし
たが、2001年からは小泉政権が実際に経済政策を取り仕切っ
たのです。そして小泉政権は、明らかにクルーグマン教授の提言
に近い政策を採用したのです。
 しかし、結果はどうだったでしょうか。
 小泉・竹中両氏にいわせれば、「痛みに耐えてがんばったから
こそ景気が回復したではないか」と胸を張るでしょうが、果たし
てそれは正しかったのでしょうか。
 経済が流動性の罠に陥ったとき、政府として何をするべきかに
ついては、かつてケインズが唱えて、ニューディール政策の理論
的根拠になった政策が存在するのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ケインズが当時の他の経済学者らと違った点は、政府の役割を
 強調した部分だ。1920年代の大恐慌当時、貨幣がたくさん
 供給されたが、景気は息を吹き返さなかった。ケインズはその
 理由について、流動性のわなのためだと説明した。金利があま
 りにも低くなれば、中央銀行がどんなに通貨を供給してもお金
 がうまく回らず、消費や投資が伸びない現象を、流動性のわな
 と呼んだのである。したがって、不景気のときにはお金を供給
 するよりも、政府が財政支出を増やす方がもっと効果的だとケ
 インズは主張し、こうした主張はニューディール政策の理論的
 根拠となった。
 http://learning.xrea.jp/%CE%AE%C6%B0%C0%AD%A4%CE%E6%AB.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 クー氏は既にこのとき、バランスシート不況に言及しており、
ゼロ金利でも上場企業は債務の返済を優先し、投資は伸びないと
主張し、大胆な財政政策の必要性を説いているのです。この考え
方はケインズの政策からみても正しいといえます。
 リチャード・クー氏とポール・クルーグマン教授の対談に関し
て、「経済コラムマガジン」の著者は次のように批評しているの
でご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 どちらの考えが正しいかと言えば、筆者の考えでは、それはリ
 チャード・クー氏の方である。まさに正論である。しかし、両
 者の考えを同時に実現する方法もあると筆者は考える。大きな
 財政支出を行い、それに伴う国債を日銀が直接引受けるのであ
 る。これにより財政政策による需要の増加と、仲介機能が不全
 になっている銀行を飛び越え、市中に資金を供給することが同
 時に実現するはずである。しかしリチャード・クー氏は国債の
 日銀引受けの可能性については、どうも触れたがらないようで
 ある。筆者は、国債の大量発行と言うことになれば、どうして
 も日銀引受けと言う話が浮上してくると思われる。筆者は、リ
 チャード・クー氏がニューヨーク連銀、つまり中央銀行の出身
 と言うことが影響し、どうしても中央銀行による国債の引受け
 と言う事態に抵抗があるのではないかと考えている
          ――「経済コラムマガジン」/第146号
―――――――――――――――――――――――――――――
              ――[日本経済回復の謎/11]


≪画像および関連情報≫
 ・海外レポート/エッセイ/村上龍
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  ポール・クルーグマン氏といえば当代きっての人気経済学者
  である。プリンストン大教授兼『ニューヨークタイムズ』コ
  ラムニストとして、時には厳しく時には茶目っ気たっぷりに
  時勢を切りまくっている。彼のように絶大な人気があれば何
  を言っても怖いものなしだ。目下のイシューは、ブッシュ政
  権が打ち出した社会保障年金制度改革案。ブッシュ大統領も
  2期目の一般教書演説でこの社会保障年金制度改革案を念入
  りにアピールし精力的に全米を遊説するなど相当力を入れて
  いる。
  http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/report5_173.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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