2017年03月30日

●「斬首作戦の準備は既に整っている」(EJ第4490号)

 「金正恩斬首作戦」は、オバマ政権時代の2016年の秋頃か
ら米軍として判断し、そのための必要なステップをひとつずつ、
着実に進めてきたのです。このことは、27日のEJ第4487
号で述べた通りです。
 この斬首作戦は、昨年8月頃に大統領候補者(クリントン/ト
ランプ両氏)に対して行われる「インテリジェンス・ブリーフィ
ング」で伝えられたか、大統領当選直後にトランプ氏に伝えられ
たものと思われます。もっとも8月の時点では、トランプ氏はあ
まり信用されていなかったので、当選直後に伝えられた可能性が
高いと思われます。
 トランプ氏は大統領に当選するやオバマ大統領によって任命さ
れたすべての閣僚、次官、次官補といった政府の幹部に根こそぎ
クビを通告しています。しかし、既に述べているように、国務省
のダニエル・ラッセル次官補については留任させています。
 このラッセル次官補は、2016年12月に重要な任務を果た
すため、日韓両国を訪問しています。これについて、ジャーナリ
ストの山口敬之氏は次のように述べています。
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 例のラッセル次官補は、11月のトランプ大統領選出後に異例
の続投が決まった後、12月17日から日韓両国を訪問した。こ
こでの中心議題の一つが北朝鮮問題だったことがわかっている。
 そして、このラッセルの動きと相前後して、難航していたGS
OMIAが急転直下、合意・署名され、即日発効した。日韓関係
の悪化に伴った国民感情に配慮した韓国側が態度を急変させた背
景には、現実味を増す半島有事シナリオをアメリカに突き付けら
れた結果とみる関係者は少なくない。
 軍備に関わる動きはこれだけではない。配備国韓国のみならず
自国のミサイルシステムの有効性が毀損されるとして激しく抵抗
してきたTHAAD(高高度ミサイル迎撃システム)が、予定を
大幅に前倒しして韓国中部のゴルフ場に配備されることが決まっ
たのだ。 ──山口敬之氏/月刊WiLL/5月号(2017)
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 韓国のロッテ所有のゴルフ場にTHAAD配備の前倒し──こ
れに衝撃を受けたのは中国です。しかし、中国にはひとつの希望
があったのです。それは韓国の政変です。
 朴大統領の罷免で大統領選挙は5月9日になり、十中八九親北
親中の文在寅氏が5月に大統領になる。そうなれば、夏に予定さ
れているTHAAD配備にストップをかけ、その後、配備を撤回
する──このように中国は考えていたのです。
 しかし、トランプ政権は先手を打ったのです。米国は2016
年の秋から、韓国の政変の先を読んで、THAAD配備の前倒し
すなわち、大統領選挙の投開票日よりも早い4月中の実戦配備を
決めたからです。一度配備されてしまうと、たとえ親北政権がで
きても、撤去は非常に難しくなります。
 これに関する中国の怒りはすさまじかったのです。本来抗議は
米国にすべきなのに、怒りの矛先はTHAAD配備の土地提供を
決めたロッテに向けられたのです。相手が自分よりも強いところ
との衝突は回避し、弱いところを攻めるのが中国なのです。
 ロッテが土地の提供を決めた2月27日以降、ロッテの中国国
内の5つの百貨店と100以上あるロッテ系のスーパーにおいて
官民挙げての不買運動や嫌がらせがはじまったのです。
 翌日の28日には人民日報系の「環境時報」は、「ロッテを中
国市場から閉め出す」ことを堂々と主張し、中国最大の国営通信
社である「新華社通信」は「中国はロッテを歓迎しない」との論
説を発表しています。
 これら国営メディアの主張を受けて、中国のネットユーザーは
その日から猛烈に反応し、数万本のコメントを流しています。そ
のほとんどは「ロッテ死ね」「ロッテは中国から出て行け」「心
ある中国人よ、今日からロッテの商品を買うのをやめよう」「ロ
ッテを地獄に落とせ」などです。
 3月7日になると、特定の市のロッテのスーパーには、一斉に
地元の消防局によって検査が行われ、営業停止の処分が下された
のです。理由は「消防態勢の隠された不備」ですが、それはもち
ろん口実に決まっています。中国評論家の石平氏は、このロッテ
いじめは事実上の「禁韓令」そのものといっています。
 それにしても中国は、なぜそこまでTHAAD配備に反対なの
でしょうか。
 THAADとは、米国の開発した最新の弾道ミサイル防衛シス
テムです。THAADは、弾道ミサイルの終末段階(大気圏に再
突入してから地上に落下するまで)において、上空50キロから
150キロという高い位置でミサイルを破壊します。パトリオッ
トも同じですが、撃ち落とす位置が上空20キロから40キロと
いう非常に低い位置なのです。
 中国が嫌がっているのはTHAADに付いている「Xバンドレ
ーダー」の方です。このレーダーは500キロキロから1000
キロの探知距離があり、北朝鮮全域を探知範囲に設定することが
できます。PAC3だけの状態と比較すると、早い段階で、しか
も広範囲にわたって迎撃が可能になるので、ミサイルを打ち落と
せる確率が飛躍的に高まるのです。
 情報によると、最大で2000キロの探知も可能といわれてい
ます。レーダーを西に向ければ中国沿岸部も探知範囲に含めるこ
とができますし、中国としては、米国のいう北朝鮮対策というの
は名目で、事実上中国のミサイルを迎撃するものだとして警戒し
ているのです。韓国側は中国に届かないよう探知範囲を数100
キロに制限するといっているようですが、中国側は納得していな
いのです。
 斬首作戦の準備は、米軍側は既に整っている状況です。問題は
いつやるかどうかの判断にかかっています。これに北朝鮮は核実
験で応えようとしていますが、非常にリスクが高いといえます。
             ──[米中戦争の可能性/060]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国配備のTHAADレーダーについて/軍事ブロガー
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   韓国配備が決まった在韓アメリカ軍のTHAADですが、
  これに使われているXバンドレーダー「AN/TPY−2」
  は日本の青森県車力と京都府京丹後に配備されているXバン
  ドレーダーと同じものです。これらはデータリンクで繋がり
  お互いをカバーし合う事が出来ます。
   このレーダーは車載移動式で、左右には回転せず上下方向
  の角度調節機能があります。左右方向にはフェイズドアレイ
  方式で左右各60度、合計120度の捜査範囲があります。
  探知距離に付いては、詳細は不明ですが、射撃管制モードで
  500キロ以上、捜索モードで1000キロ以上の性能があ
  るとされています。
   このように日本海は日本配備のXバンドレーダーが大部分
  をカバーしているため、北朝鮮が日本海配備の潜水艦からS
  LBMをどの位置から発射しようと探知が可能です。京都の
  Xバンドレーダーで韓国配備のTHAAD迎撃ミサイルを管
  制し誘導することも可能であり(リモート射撃)、潜水艦の
  SLBMで奇襲攻撃する事は難しいと言えるでしょう。
   (追記:それならまず最初に日本配備のXバンドレーダー
  を破壊すればいい、という方法については、弾道ミサイルの
  命中精度では小さな目標は狙っても当たらないという問題が
  あるため、潜入させた特殊部隊による破壊工作といった手段
  が考えられます)。        http://bit.ly/2nYEtfy
  ───────────────────────────

THAADが運用するXバンドレーダー.jpg
THAADが運用するXバンドレーダー
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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