2017年03月24日

●「米は金正恩斬首作戦を実行するか」(EJ第4486号)

 3月17日付のEJ第4482号で指摘したように、トランプ
政権が4月末まで続く米韓合同軍事演習の間に北朝鮮を限定攻撃
する可能性があります。これについてさらに新しい情報が入って
きているので、緊急特集してお届けします。
 朝鮮半島有事をめぐっては、在韓米軍はどう動くべきかについ
て、複数のシミュレーションが存在します。これに関する4つの
コードとその簡単な説明です。
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  5027:北朝鮮が韓国に侵攻した状況に対応する対応
  5029:クーデターや革命などが起こったさいの対応
  5030:必要物資を枯渇させて政変を起こさせる対応
  5015:北朝鮮の核・ミサイル基地への先制限定攻撃
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 このうち5015は、2015年6月に策定されています。そ
の内容について、ジャーナリストの山口敬之氏は、『週刊文春』
3月30日号で、次のように説明しています。
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 これは(5015)は、最新兵器の特性を活用した核・ミサイ
ル基地への先制攻撃や指導部の排除も含まれる作戦だ。軍事施設
を徹底的に破壊するため、攻撃対象は700ヵ所に上り、いずれ
も基本的に壊滅させることが求められている。ミサイルや特殊爆
薬で爆撃しては、攻撃の成果を偵察機で検証し、必要ならば再攻
撃を仕掛ける。攻撃完了には数週間から数ヶ月からかかると見ら
れる。          ──『週刊文春』3月30日号より
─────────────────────────────
 現在、トランプ米政権が北朝鮮に対処しようとしているのは、
限定攻撃といわれていますが、5015ではないのです。作戦の
目的は、5015の目的である北朝鮮の核・ミサイル基地への限
定攻撃ではなく、金正恩委員長の「司令部システム」への限定攻
撃です。したがって、攻撃対象は5015でいう700ヵ所では
なく、20〜40ヵ所に過ぎないのです。司令部システムへの限
定攻撃で狙うのは、あくまで金正恩委員長自身であり、いわゆる
「金正恩斬首」なのです。金委員長による「核による断末魔の反
撃」を抑えることを目的にするものです。
 米国が「斬首作戦」を展開するのは、オサマ・ビン・ラディン
を処刑したさいのオペレーションと同じです。現在、米韓合同軍
事演習で、そのときの特殊部隊要員はすべて米空母カールビンソ
ンに乗船して韓国周辺にやってきていることは、EJ第4482
号で既に述べた通りです。
 トランプ米大統領が「金正恩斬首作戦」にこだわっている証拠
といえるものがあります。それは、民主党のラッセル国務次官補
を3月8日まで続投させたことです。ラッセル氏は、30年以上
の経験を持つ職業外交官で、日韓両国で勤務した経験を持つアジ
アのスペシャリストです。
 オバマ大統領はオバマ政権時代の幹部を根こそぎ解任していま
すが、ラッセル国務次官補だけは留任させたのです。それはラッ
セル国務次官補が「金正恩斬首作戦」の考案者だからなのです。
ラッセル氏は、2016年10月に安全保障記者を前に次のよう
な衝撃的な発言をしています。
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 金正恩は核攻撃能力を強化するだろうが、そうすれば金正恩
 は即死する。          ──ラッセル国務次官補
─────────────────────────────
 「即死」という言葉は、非常に強い響きを持っています。昨年
10月の時点でラッセル国務次官補がこの発言をしていることは
オバマ政権のときから「金正恩斬首作戦」が周到に練られていた
ことを物語っています。そのラッセル氏も3月8日にはひっそり
と退任しています。これは、彼がいなくても作戦を実行できる体
制が国務省にできたことを意味します。
 ここで重要なのは、「金正恩斬首作戦」は北朝鮮という国を崩
壊させるのではなく、トップの首をすげ替えることを意味してい
ることです。つまり、別のトップを用意する必要があります。こ
のトップに最もふさわしい人物は金正男氏以外いないのです。
 北朝鮮も米国が金生恩委員長の暗殺を企てていることは当然わ
かっています。そのため北朝鮮は、米国の動きを注視し、その動
きに合わせていちいち反応しています。
 日米首脳会談が行われたのは今年の2月のことですが、それを
狙うように、北朝鮮は、移動車両から弾道ミサイルを発射して牽
制しています。そして、安倍首相が帰国の途についた頃に、金正
男氏がマレーシアでVXガスで暗殺されたのです。金正恩委員長
は、自分に代わり、北朝鮮のトップの座につく可能性の高い金正
男氏を暗殺したのです。
 3月1日に米韓合同軍事演習が始まると、それを牽制するかの
ように、北朝鮮は3月6日に弾道ミサイル4発を同時に打ち上げ
ています。そして3発のミサイルが日本のEEZ(排他的経済水
域)に落下したのです。軍事専門家の分析によると、長崎県の米
海軍佐世保基地と、山口県の米海兵隊岩国基地が標的だったので
はないかとされています。
 そして3月15日から19日まで、ティラーソン国務長官は日
本、韓国、中国の3ヶ国を訪問します。これは、作戦が実行され
る可能性があることを伝える歴訪であったと思われます。このテ
ィラーソン国務長官をサポートするためか、3月17日にトラン
プ大統領は、北朝鮮について次のツイートを発信しています。
─────────────────────────────
 北朝鮮の行動は非常に悪い。アメリカを長年愚弄し続けた。
 中国は事態を放置してきた。     ──トランプ大統領
─────────────────────────────
 そうすると、北朝鮮は19日に弾道ミサイル推進エンジンの燃
焼実験を公開して米国を牽制したのです。非常にきわどい火遊び
であるといえます。    ──[米中戦争の可能性/056]

≪画像および関連情報≫
 ●“新”正恩氏斬首作戦 トランプ氏「最終決断」秒読み
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   北朝鮮情勢が緊迫している。金正恩(キム・ジョンウン)
  朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏
  殺害事件などを受け、ドナルド・トランプ米大統領が最終決
  断を迫られているのだ。「兄殺し」もいとわない狂気のリー
  ダーに、核・化学兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイル(IC
  BM)を握らせれば世界の平和と安定が脅かされかねない。
  ジャーナリスト、加賀孝英氏の独走リポート。
   「あいつ(正恩氏)は異常だ!テロリストだ!トランプ大
  統領は、そう吐き捨てたようだ」。旧知の米情報当局関係者
  はそう語った。
   驚かないでいただきたい。朝鮮半島有事が秒読みで迫って
  いる。米国は、国連安保理決議を無視した新型中距離弾道ミ
  サイルの発射(12日)や、猛毒の神経剤VXを使用したマ
  レーシアでの残忍な正男氏殺害事件(13日)を受け、新た
  な「作戦計画=正恩氏斬首作戦」を準備した。米国はこれま
  で、北朝鮮に対して「作戦計画5015」を用意してきた。
  どこが違うのか。米軍関係者が明かす。「5015は、北朝
  鮮の核・軍事施設など約700カ所をピンポイント爆撃し、
  同時に、米海軍特殊部隊(ネービーシールズ)などが正恩氏
  を強襲・排除する。新作戦計画は、特殊部隊の単独作戦だ。
  国際テロ組織『アルカーイダ』の最高指導者、ウサマ・ビン
  ラーディン殺害時と同じだ」。   http://bit.ly/2m8PEB7
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北朝鮮によるミサイルエンジン燃焼実験成功.jpg
北朝鮮によるミサイルエンジン燃焼実験成功
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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